降臨-10- | 妄想★village跡地

妄想★village跡地

スキビ二次元創作物の残骸がある場所です。閉鎖いたしました。
リンクフリーではありません。無断リンクはお断りしております。

「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~


『蓮キョ』以外の要素が含まれます。
苦手な方は、ご注意ください

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


羽虫の様にキョーコに群がる、キャスターたち。

相手の男にも同じように群がっているが、向こうにはマネージャーと言う守りがいた。

けれどキョーコには、誰もいない。


「キョーコさん、あの記事は本当なんですか!?」


「一体どうなってるんですか!?」


売出し中の女優の、初スキャンダル。

どのマスコミも特ダネとして扱っていた。

他にネタがなかったのも、有るのだけれど。


肩を縮こまらせて、もみくちゃになるキョーコの姿がモニタに移っていた。


『事務所サイドから出されたコメントには、『仲のいい友人として、お付き合いさせてもらっている関係です』と発表がありましたが…。どんなふうに、仲のいいお友達なんでしょうね? それに京子さんはまだ高校生ですから。こんな深夜に、連れ回すなんて…。『ただの』お友達じゃないことは明白ですよね。ねぇ、そう思いませんか?』


スーツを着た司会者がコメンテーターに水を向けると、したり顔で口を開いた。

そのたるんだ顔から言葉が発せられるのを待たず、蓮はテレビの電源を落とした。


「………」


何の感情もみせない表情で、傍らに置いてあった携帯を手に取り操る。

呼び出した番号は、『最上』

何度かけても繋がらない、その番号に呼びかけることを止めない。

時間があれば電話をかけて、留守電にメッセージをのこす。

沢山吹き込んでも、還って来たことはないけれど…。

それでも。


「もしもし…」


今どこにいるのか。

ちゃんと寝起きで来ているのか。

辛いことはないか。


かけたい言葉は沢山ある。

けれど、口からは何一つ溢れることはなかった。


「…今度、会いたい…」


何とか絞り出したその言葉も、きちんと吹き込めたかどうかわからない。

本当は駆けつけたい。

誰よりも、問質したい。

なにより、何であんな男を選んだのか聞きたいし、あの男に『ネクタイ』を贈ったのか、聞きだしたい。


「くそ・・・・」


携帯を閉じて、自身の膝に頭を埋めた。

身動きが取れない自分に、いらいらする。

頼ってくれないキョーコに、いらいらする。


理性ではわかっているのだ。

報道陣が飛び交っているキョーコの周りに自分が行っても、何も良い事はないと。

スキャンダルの種を植え付けるだけだと。

キョーコの方も、それが分かっているから蓮には頼ってこないのだろう。

…そうだと、思いたい。


「…避けられてるなんて…、思いたくない…」


膝から頭を上げて、くすんだ天井を見つめる。

ぐるぐると思考の渦に嵌り込んだ蓮は、どんどんマイナスな方へ傾いて行く。


「やっぱり、嫌われたのか…?」


最後にあった夜の、キョーコの涙。

気配すらつかめない現状。


それらが入り混じって、蓮の心に焦燥感を産む。

焦れば焦るほど、足は動きだしそうになる。

形振り構わず走り出して、捕まえて。

張り巡らされたバリケードを、壊して回りたい。


「せめて…、隣に帰ってきてほしい…」


気が付けばいつも近い位置にあった、キョーコの気配。

それがないことが、たまらなく堪える。


重苦しいため息を天井にぶつけた時、ノックの音が響いた。

撮影の順番待ちだったため呼びに来たのかと、何とか気持ちを入れ替えて扉を開けた。

けれどそこに立っていたのは、時間に追われて焦っているスタッフではなくて…。


「琴南さん…」


キョーコの親友である、女性だった。

少し硬い表情で、いいですか? と問うてきた彼女。

断る理由なんて、何処にもない。

楽屋に招き入れ、席を進めると躊躇うことなく腰を落とした。

その所作の端々に、苛立ちが見て取れる。


「単刀直入にお聞きします。敦賀さんは、キョーコの事が好きですか?」


あまりにも唐突なその質問に、蓮は面食らってしまった。

からかっているのかとも思ったが、彼女の目は真剣だった。

射抜くようなそれに、気圧されて思わず居住まいを正して。


「好きだよ。好きじゃなきゃ、追いかけたりしない」


馬鹿正直に、何も包み隠さず答える。

すると、鋭い針の様だった彼女の視線は緩んで…。


「であれば、これをお渡ししておきます」


バッグの中から一枚の紙を取り出した。

そこに記されていたのは、会社が社宅として借り上げてる住宅のもの。


「社長が陣頭指揮を執ってくださってるので、まだ嗅ぎつけられていません。変な方向へ歩いてるあの子を、引き戻せるのは敦賀さん、あなたなんです」


「変な方向…?」


「貴女の傍に居るために、恋人を作らなきゃいけないんだって。あの子思いつめてました。そう思い込んだのも、貴方が原因ですよね? その変な思い込みから、開放してあげてください」


蘇るのは、キョーコの涙と。

悲しげな言動。


そこまで思い込ませてしまったのが、自分だと思うと…。


「…本当に…すまない…」


「謝るのは私にじゃありません。慣れないことをして、傷ついてるあの子に。誠意を見せてください」


「あぁ。もう、大丈夫だから」


「そうであることを、期待してます、では。私も撮影があるので、これで失礼しますね」


そういうと奏江は来た時と同じく、迷いのない足取りで歩き去って行った。

その背中に見とれていたら、入れ違いに社が帰って来た。


「お客さん来てたのか?」


「えぇ…。背中を、押されました」


その言葉と、表情で伝わるものがあったのか…。

社は何も言わずに、撮影が始まると伝えてきた。


(…もう、迷わないから。君の手を引けるよう、頑張るから。待ってて…)


揺らがない瞳の先に見える未来は、一つしかない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


web拍手 by FC2

↑お気に召しましたら、ぽちっとww