降臨-3- | 妄想★village跡地

妄想★village跡地

スキビ二次元創作物の残骸がある場所です。閉鎖いたしました。
リンクフリーではありません。無断リンクはお断りしております。


「リク魔人」の妄想宝物庫 』のseiさんよりお預かりした、お題です。

長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません…。

魔人さんの書かれた一話の続きを、書いて行きたいと思います~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「恋を、したいんだけどな…」


呟いた言葉は、真っ白い吐息の中に消えた。

蓮の家に招かれて、男性に贈るもののアドバイスを受ける日。

エントランスの近くに植えられた生垣に腰かけながら、手にしたホットコーヒーの缶を握りしめる。


前なら絶対思わなかったであろう。

でも、今は何が何でも『恋』がしたい。

いや、しなければならない。

何よりも大好きで、慕う人に嫌われないために。


その何より慕う人によって、ざっくりと切られた心は今でも痛む。

彼がくれたその痛みすら、嬉しいと思ってしまうのだからどうしようもない。


「…どうしたらいいのかしら…」


恋を否定して、がちがちに身を固めていたキョーコ。

尚を思っていた時も、蓮を慕っていた時も。

意識せず恋に落ちていた。

だから、改めて『恋をしよう』と思ってもどうしたらいいのかが分からない。


ただ『恋をしよう』と決めてから、共演する俳優陣やお世話になるスタッフの方々から、よく声をかけられるようになった気がする。

色々な誘いをかけられるようになり、広がった交友関係。

嬉しいし、楽しい。


「でも、ドキドキしないの…」


この決心をしてから、社長にも何度か会っているが『卒業』の言葉は出てこない。

きっと見抜かれているのだろう。


「嘘の恋なんて…、相手にも失礼なのかな…」


大分温くなった缶を頬に当てると、じんわりと温まってくる。


「でも、よく言うものね。失恋を忘れるには新しい恋をするのが一番って」


きっと彼に伝わってしまったのだ。

『後輩』と言っておいて、誰よりも近い場所にいる優越感に浸っていたことに。

『尊敬』と言う言葉を使って、甘えきって頼り切っていたことに。

ちんけで歯牙にもかけない女から、そんな好意を寄せられて困惑していたのだろう。


「馬鹿ね、キョーコ。何度もふられて…。それでも気づかないなんて…」


思い返せば、蓮の言葉の端々に兆しは有ったのだ。

鈍くてどうしようもない自分が、気づかなかっただけ。


「本当は…、来たくなかったんだけど…」


通いなれた蓮の家。

蓮の上に恋心があるうちは、来たくない場所だった。

少し静まりかけたそれが、また燃え上がるに違いないのだから…。


「どきどき、したいな…」


貴島もいい人。

村雨もいい人。


「すっごくいい人」


光もいい人。

社もいい人。


「でも、違うのよね…」


蓮の様に、目があっただけでときめかない。

気配を感じただけで、心臓が破れそうになったりしない。

褒められたら浮かれて、舞い上がったりしない。

触れられて、体温が上がったりしない。


「忘れなきゃ…。めいわく、かけられないもの…」


一人で蓮を待っていると、彼が付けた傷口が疼きだす。

その痛みを耐える気配こそが、今のキョーコが醸し出す色香の源。

ナツや雪花を演じていたせいもあって、滲み出るそれに誘惑される男が羽虫の様に寄ってくるのだ。


「うん、がんばろう…。恋する相手位、自分で見つけるもの…。」


その位、自分で出来る。

恋する男に、『恋人』を宛がわれるなんて悲しすぎる…。

手にしていた缶を手の中で転がして、一度開いたパンドラの箱に鍵をかける。

そこに封じたのは『蓮への恋心』

しっかりと鍵をかけて、封をして。


「あ、きた…」


見慣れた車影がキョーコの視界に飛び込んできた。

恋しく思う相手。

傍に居たいからこそ、キョーコはそれを押し殺す決断をしたのだった。


悲しいぐらいすれ違う二人。

その二人の行く末は、まだ見えない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


web拍手 by FC2

↑お気に召しましたら、ぽちっとww