雨の帳と湯気の向こう 下 | 妄想★village跡地

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魔人様のリクエスト。

「湯気の中で(仮)」←便宜上つけただけ


蓮からの告白済みで、キョーコの返事待ちという微妙な時期。季節は冬。
マンションの前で言い争いになり、土砂降りの中、キョーコ走り去る。
そしてそれを蓮が追い、近くの公園で捕まえるがそこでも言い争い。
二人共ずぶ濡れで、震えが止まらない程冷えてしまう。
なんとかキョーコを連れてマンションの部屋に帰った蓮。
服を着たままキョーコを連れ、お風呂場に直行。

つるっとどぼんで、行ってきます★


魔人様に捧げます



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


先ほど逃げ出したばかりの蓮の部屋。


(やっぱり!!)


そこに残る、ふんわりと甘い香水の香り。先ほどの女性がいた、名残。

マーキングの様に、こびり付くその香りが嫌でキョーコは唇をかみしめる。


「とりあえず、傷口洗おうか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


玄関口で固まったまま動かないキョーコを、中に誘うけれど。彼女は首を弱弱しく振るばかりで、一向に動こうとしない。


「早く温まらないと、風邪ひくよ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


壊れた人形の様に、視線を下げたままふるふると首を振るばかりのキョーコ。


「・・・・・・俺の事嫌いなら、それでもいい」


「っ!!」


「けど、いまはそうも言ってられないだろう? 早く手当もしないと大変なことになるかもしれないし、これ以上体を冷やしちゃいけない。女の子なんだから、ね?」


蓮の言葉にずきりと、胸が痛む。

嫌いじゃない、叫びたいけれど。


(だめ。それを言っちゃ・・・)


壊れた心の自分が、蓮の隣に立つなんて、あってはいけないのだ。

蓮に不審に思われないためにも、早く靴を脱ぎ、部屋へ上がらなきゃいけないのに・・・。


(足が、動かない・・・)


残り香が、結界であるかのように一歩を踏み出せないのだ。


「まったく!!」


強い苛立ちを感じる口調で落とされ、俯いているキョーコの体が打たれたように竦む。


「ちょっとごめんね」


小さな謝罪と共に、膝裏に腕を差し入れられ抱き上げられる。


「きゃ・・・」


横抱きに抱き上げられたまま、バスルームに連れてゆかれる。


「あのまま待ってたら、お互いに風邪ひいちゃうからね」


服を着たまま、湯船に入れられ頭からシャワーを浴びせられる。


「あつ・・・!!」


「ごめんね?」


氷の様に冷たい顔で、キョーコの上にシャワーを落としながら蓮は言葉を続ける。


「でも、風邪はひきたくないだろう?」


ノズルを固定したあと、キョーコに手を伸ばし怪我をした手のひらを水にシャワーの下に晒す。

強めの水圧が傷口を刺激して、痛い位だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなに嫌われてるとは、思わなかったよ」


傷口に入り込んだ砂利を丁寧に取り除いてくれながら、ぽつりとつぶやかれた言葉。


「フラれるのもしょうがない。でも、断るならちゃんと言葉で欲しかったな・・・。あんな、フラれ方すると・・・・きついよ」


「ぁ・・・・」


自身も雨に濡れて、唇が真っ青になっているのに着替えることもなく、湯に当たることもなく。キョーコの世話ばかりを焼く蓮。


「敦賀さんも、風邪をひいてしまいます。私は大丈夫ですから・・・・。せめて着替えてください・・・」


手を引き抜き、懇願する。


「このまま風邪をひいたら、君の事だ。責任感じてまた着てくるだろう?」


だから、俺はいいんだ。


そういわれると、キョーコは何も言えない。

多分、看病に来てしまうだろう。その資格すら持ち合わせていないのに、のこのこと姿を晒すに違いない。

ぱくぱくと、言葉を探してみるけれど・・・


「・・・・・・ごめんなさない・・・」


出てきたのは、そんな陳腐な言葉。


「謝らないで。謝られると、よけい惨めだ・・・」


「ちがうの・・・。ちゃんと、口で伝えるつもりだったのに・・・・。動転してしまって・・・」


「どうして?」


引き抜いた手は、再び握りこまれる。


「お、おんなの、ひとが・・・」


思い出したら、悲しい気持ちがあふれてくる。

そのときの事を振り返って、涙の幕が再び下りてくる。


「アイカの事?」


「私しか、入れたことないって・・・。私だけっていってたのに・・・!!」


「それが、断った理由?」


これは、動転した理由だ。


「ちが、い、ます・・・。私、敦賀さんといると・・・すごく嫌な人になっちゃう・・・」


「嫌な人?」


「真っ黒になっちゃうの・・・。敦賀さんが、ほかの女の人と一緒にいたりすると・・・もやもやしてすっごく、い、嫌な私になるんです・・・。こんな、わた、し・・・一緒にいられない・・・。愛をなくしたわたし、は、こわれちゃ・・・」


涙交じりの声は、醜く歪んで。綺麗な蓮に聞かせたくなかった。


「さ、さっき臭いって、い、たのも」


「うん」


「こ、すいが、いや・・・ひぃぃん」


「うん・・・うん・・・・」


もう、何を言っているのかわからない。ただただ、口から零れるの音。

嗚咽交じりで、聞き取りにくいはずなのに蓮は根気よく聞き取ってくれる。


「へや、あがれ、なかた、のも・・・、こうすいが・・・・」


「うん。ごめんね。無神経で・・・」


ぎゅう。

痛い位抱きしめられる。ざぁざぁと降り注ぐシャワーが、冷えた蓮の体に当たってキョーコの体にぶつかる。それはまるで、蓮の涙のようだ。


「いやぁぁ・・・・」


居心地の良い腕の中は、一度納まってしまうと二度と出たくなくなってしまう。

その味を知りたくなくて、覚えたくなくて、抗うけれど。

がっちりと絡みついた腕は、ちっとも外れない。


「嫌われてるなら、諦めようと思ったけど・・・。そんなに可愛い告白されたら、諦められないよ?」


あれのどこが『可愛い告白』なのか。


「嫉妬なんて、誰でもするよ。それが普通。嫌な人間じゃない。それだけ、俺を好きだって思ってくれてる証拠だろう? 嬉しいよ」


シャワーの雨と共に、甘く毒の様なキスが降ってくる。


「し、と?」


「うん。キョーコが俺を愛してくれてる証拠」


「うそ・・・」


「嘘じゃない。俺も、キョーコの周りの奴らに嫉妬するよ? 琴南さんにもね」


蓮の意外な告白に、目が丸くなる。


「だから、隠さないで。誤魔化さないで? 全部は無理だけど、受け止めるから・・・」


「ひぃぃ・・・・・ん・・・」


「も一回ね。結婚を前提に、付き合ってください。よろしくお願いします」


「ひ、ひっ・・・・。よろ、し、く・・・んぅ・・・!!」


ずびずびの鼻声で、これ以上ないほどみっともない声で二回目の告白に答えた時。

冷たい唇に言葉を食べられる。


「ふ、んん!!」


がっぷり噛みつかれて、こじ開けられて。言葉も息も。全て奪われる。


「嬉しいよ。大事にするから。優しくしてね?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、不束者ですがよろしくお願いします」


「やった!!」


見たことがない位、無邪気に笑う蓮にキョーコの顔もようやっと綻ぶ。


「あの、ほんとに風邪ひいちゃいますから・・・。お風呂入ってください・・・」


「一緒に入ってくれる?」


「・・・・!! はれんちです!!」


「・・・・言われると思った。俺もだいぶ温まったから大丈夫。それより、手当てしよう?」


「温まったって・・・。上半身しか浴びてないじゃないですか!!」


「ん? 大丈夫だから。行こう?」


ようやっと止まった雨。

その向こう側に見えた景色は、この上もなく素晴らしいものだった。

甘く、幸福に満ちた日々が二人を待っている。


「ちなみに、アイカはアルマンディの秘書なんだ。特別に頼みごとしてたから・・・。人目に付かないように、うちまで来てもらってたんだ」


「そう、だったんですね・・・」


「うん。さすがに店頭で指輪なんか選んでたら、大変な目に合うからね。特注したんだ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆびわ?」


「そう。婚約指輪。特注してたんだ。付けてくれるよね?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気が早すぎです・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


終わりました!!

というか、終わらせました★

リクエスト内容と、若干ずれてる気もしますが・・・・。

魔人様、いかがでしょうか!?