sei様より キョーコちゃんが、「勝手にキッチリ失恋気分。恋心よ、さようなら」「恋愛感情は否定しなくなったので次の恋へ走れるなら走りたい」「そんな時に好青年の相手役(見た目は宗像;クレパラ参照)に出会い、その人柄の良さや、やさしさに癒やされちゃったら?」
必死になる蓮くんと、キッチリ諦めてある意味スッキリしちゃたキョーコちゃん。(こういう切り替えは女性のが早い)
ヘタレ似非紳士は、キョーコの蓮への恋心を取り戻せるのか。
と頂きました。
sei様に捧げます
オリジナルキャラがいますので、苦手な方はご注意ください
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表面上は無事に終わった卒業式。
ちゃんと卒業証書も貰って、参加してくれた方と記念撮影もして。
とても恵まれていると、実感できた日だった。
でも、一日はこれで終わりではなかった。
「付き合ってくれる?」
ハルは、何も言わなかった。
蓮とのキスシーンを見ても、この大がかりな卒業式を見ても。
ただ、『卒業式が終わったら時間を頂戴』
ただ、それだけを言って。
式の間、じっと大人しくしていたのだ。
「でも、着替えないと・・・。それに荷物も・・・」
式が終わった途端、蓮の前から掠めるように攫われてタクシーの中に籠められたけれど。
「大丈夫だよ、きっと。あそこ、LMEの社長さんの家でしょ?」
「そうですけど・・・」
「なら、保管してくれるよ。あ、お台場までお願いします」
袴姿のまま、どこかへ連れてゆかれる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
あんなシーンを見られたからか、なんとなく気まずい。
(呆れられちゃったかな・・・)
『まだ待ってられる』
と言われたけれど。
(それとも、嫌われちゃったかな・・・)
珍しく会話のはずまない車内。弾まなくても、タクシーは目的地へ二人を運ぶ。
「いこ?」
有名な室内遊園地。手を繋ぎ、そこへ引っ張り込まれる。
ほどほどに賑わっているそこを、手を繋いだままずいずい進む。
蓮にされたように、指をすべて絡めた『カップル繋ぎ』
「目立ってますよね」
ハルも目立つし、袴姿のキョーコはもっと目立つ。
「いいんじゃない? 芸能人だもん。目立って注目された方が得だよ?」
ざわざわと、遠巻きに二人を見守る人々。けれど、ハルは気にすることもなく、一番人気のアトラクションの列へ並ぶ。
「え”!? これ、乗るんですか?」
ハルが並んだのは、絶叫マシーン。両サイドに大きく振れるそれ。
「うん。今はこういう気分かな?」
少しずつ進む列。絡まれた指を解く勇気もなくて、キョーコはその列の中に居た。
「ほら、いこ!!」
引かれるままのりこみ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!! いやー!!」
心の底から、大絶叫。
ふらふらになって、降りれば
「次はこっち。その次は、あれね」
(もう、いったい何なのっ!!)
理由もわからず次ぎ次と絶叫マシーンに乗せられて、叫びすぎて喉も痛いし酸欠で頭もふらふらする。
「大丈夫? 最後に乗りたいのあるんだ。もう一個だけ、付き合って」
遊園地をくまなく制覇して、満足したのかようやっと絶叫マシーン巡りを止めた。
息も絶え絶えで、ベンチにもたれるキョーコに、お茶を手渡しハルが言う。
「さいご・・?」
「うん。観覧車。乗りたいんだ」
再び、手を引かれ室外へ連れだされ。向かった先は有名な観覧車。
「これに、乗りたかったんだ・・・」
きらきらと輝くそれの前には、沢山の恋人たち。
その列に紛れて並べば、本当の恋人になったようだ。
「キョーコと、乗りたいと思ったんだ」
する、再び手を取られハルのジャケットに一緒にしまわれる。
「憧れてたんだよ・・・。キョーコとデート出来たら、ここに来ようって決めてたんだ」
「ハルさん?」
「今は、ハルって呼んで?」
乞われて
「ハル?」
「ん、そう。あ、順番きたよ。のろ?」
繋がった腕をそのままに、空いた扉に乗り込む。
がこん・・・。
動き出した箱は、静かに空へと舞いあがる。
狭い箱の中で、膝を触れ合わせて座る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの人だったんだね」
「え?」
「キョーコが連絡待ってたの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今日のみて、俺分かっちゃったよ。キョーコ、あの人このこと忘れられないんだね」
「・・・・・・・・・・・・・そうなの、かな・・・」
「忘れたくないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わからないの。特別すぎて、忘れられないのかも・・・」
「そっか。見て思ったんだ。二人で並んでると、なんかこう・・・。パズルみたいなんだ」
するすると上がる箱は、間もなく頂上だ。
「パズル?」
「うん。ぴたって嵌ってるのがわかるんだ。お似合い・・・っていうのとも少し違うんだけど。あぁ、この二人はこうあるべきなんだなぁって・・・。あの卒業式でもさ、必ず近くにいるんだ。気づいてた?」
「・・・・うそ・・・」
「ほんと。離れて見てたから、よくわかったんだけど。敦賀さんもキョーコちゃんも、気づいたら腕を伸ばせば触れる位置にいるんだ。背中を向いてても、互いに移動してても、絶対にその距離は変わらないんだ」
そんなの、ちっとも気づかなかった。
特に意識をしていなかったけれど・・・。
「それ見てたらさ、かなわないなって・・・」
悔しそうに、ハルが唇を噛む。
「そんなこと・・・」
「あるよ!! 離れてても、空気は繋がってるんだ!!」
初めて聞いた、ハルの怒鳴り声。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
キョーコはかける言葉を持たない。
「あぁ、こうあるべき二人なんだなぁって」
触れ合っていた膝が、少し離れた。
「俺と付き合っても、キョーコちゃんきっと幸せになれないよ。彼みたいには、なれない。待ってあげられなくて、ごめんね」
ふわ・・・・
立ち上がったハルが、キョーコに小さく口付た。
「記念に、これだけ頂戴?」
優しい、ハル。
こんな時まで、優しくしてくれなくていいのに。
「一度目は、事故なんですよ。ハル」
ちゅう・・・。
触れるだけの、優しいくちづけをキョーコからハルに返す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キョーコちゃんは残酷だね」
泣きそうな、ハルの顔がすぐ傍にある。
れけど、キョーコにはかける言葉がない。
キョーコは、彼に言葉を与える権利を持たないのだから。
「キョーコちゃんと、こういうデートしたかったんだ。最後に来れてよかった」
がこ・・・。
下に着き、扉が係員により明けられて。
降りれば
「敦賀さん・・・」
意外な人物がキョーコを待っていた。
「敦賀さん、お返しします。わがまま聞いてもらってありがとうございました」
そっと、ハルがキョーコの背中を押す。
「いや、無事に返してもらえば・・・」
何が何だかわからないうちに、キョーコは蓮の腕に囚われる。
そのまま、ハルを残して歩き出す蓮に連れられて半ば強制的に歩き出す。
「ハルっ!! ありがとう!!」
次第に小さくなる彼の姿に、キョーコが言えるのはそれだけだった。
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つぎが最終回です