sei様より キョーコちゃんが、「勝手にキッチリ失恋気分。恋心よ、さようなら」「恋愛感情は否定しなくなったので次の恋へ走れるなら走りたい」「そんな時に好青年の相手役(見た目は宗像;クレパラ参照)に出会い、その人柄の良さや、やさしさに癒やされちゃったら?」
必死になる蓮くんと、キッチリ諦めてある意味スッキリしちゃたキョーコちゃん。(こういう切り替えは女性のが早い)
ヘタレ似非紳士は、キョーコの蓮への恋心を取り戻せるのか。
と頂きました。
sei様に捧げます
オリジナルキャラがいますので、苦手な方はご注意ください
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雪山ロケから帰還して、早一週間。
次クールのドラマの撮影に入ったり、新たなCMを2本撮影したりと慌ただしく。
蓮とも会う時間をとれていないし、ハルとの約束も叶えられていない。
「えっと、次は・・・」
マネージャーのいないキョーコは、椹から仕事の連絡があると自分でスケジュール調整をして、自力で現地に向かうのだ。
「遅刻しちゃう・・・」
自転車だと間に合わないので、タクシーを止め次の現場へ向かう。
「富士TVまでお願いします」
行き先を告げ、携帯を開く。
ちょうどメールが届き、見れはハルからで。
「ふふっ・・・」
短いメッセージと、写真が一枚添付されている。
『ご飯が美味しいです』
どこかのカフェで食事中の姿を、自分撮りしたもの。
なんてことない物ばかりだが、見ていたら元気になる。
結構まめにくれるので、ハルのフォルダはあっという間に埋まってゆく。
送られてきた写真に、ほっこりしていると。
「電話・・・」
表示された番号は、よく知っているけれどあまり出たくない、番号。
けれど、大恩のある人物からなので無視もできない。
覚悟を決めて
「もしもし?」
『おー、最上君!! ちっともあいさつに来ないじゃないか!!』
「社長・・」
『卒業式だがな、来週に決めたから!! 来週の金曜日、ウチの迎賓館に来るように!!』
「えっ!! その日のスケジュールっ!!」
余りにも唐突なその宣言。
抗議の声を上げても、
『そんなの、調整済だっ!! 最上君が呼びたい人がいれば、呼んで構わんからな。あ、衣装も手配済みだから。余計な服は持ち込まないように!! じゃぁな!!』
一方的な宣言を残し、唐突に切れる電話。
「そんな、急に・・・」
切れた電話を呆然と見つめ、キョーコはため息。
「呼びたい人・・・、呼ばなきゃいけない人・・・・」
逡巡のあと、メールを送るべく携帯を操る。差出人は二人。
蓮には、『会ってお話したいことがあります』
ハルには、『参加してくれますか?』
即座に返ってきた返事は、二人とも『了解』の文字。
「なんていうか・・・・・・、無駄にスケールが大きいのよ・・・」
紅白幕に囲まれた会場。立食形式のこそには、モー子やマリア、千織といった日ごろお世話になっている人から、緒方、新開監督といった仕事でお世話になった人。また、全然知らない人まで。
沢山の人にあふれていた。
賑々しいその様子を、紅白幕の後ろからこっそりと覗いたキョーコは余りの盛大さにちょっと及び腰だ。
綺麗な桜色の着物に、紺の袴。髪には大きなリボンをつけられて。
いかにもな『卒業生』スタイルで一人呼ばれるのを待っている。
「もっと小ぢんまりとしてくれればいいのに・・・」
ぶつぶつと、文句を言っていると
「社長の辞書に『小規模』って言葉はないよ。卒業おめでとう」
「敦賀さん・・・。いえ、今日は来ていただいてありがとうございます」
二人が顔を合わせるのは、久しぶりで。なんとなく、気まずい沈黙が流れる。
「実は、敦賀さんに報告したいことがありまして・・・」
勇気を出して、口火を切るキョーコ。すぅっと室温が下がり、嫌な汗が背中を伝うが
(今日は覚悟を決めたんだもの!!)
勇気を振り絞って、言葉を重ねる。
「実は、卒業できたのも敦賀さんのお蔭なんです!!」
呆れた眼差しが自分を見ているのを、確認したくなくて。顔は伏せたまま。
「え?」
「実は、私。敦賀さんの事好きだったんです。身の程知らずで、呆れられるかもしれませんが・・・。それを自覚したから、受け入れたから、社長も卒業を認めてくれたんです」
「・・・・・・・それは、本当?」
初めて聞いた、低く掠れた『男』の声。
聞きなれないそれにびっくりして、顔を上げれば視界は彼のスーツで埋まる。
ふんわりと、抱きしめられ。
「ねぇ、もう一回言って?」
甘く、溶ける位甘く乞われる。
「ずっと、好きだったんです。この気持ちを思い出させてくれてありがとうございます」
乞われるまま、再び口にすればさらにきつく抱きしめられる。
「うれ「婚約者の方と、お幸せになってくださいね。私、敦賀さんを好きになれて本当に良かった・・・」
そう。恨んだ時期もあったけれど、今は感謝をささげたい。
出会えたことに。
導いてくれたことに。
思い出させてくれたことに。
言いたいことを、総べて伝えたら暖かい腕の中から引き離されてしまった。
肩を掴んだ手が、痛い位食い込む。
(あ、最後かもしれないのに・・・)
最後の敦賀セラピーが終わってしまったことを残念に思い、彼の顔を覗き込めば。
「つるがさん?」
絶望に満ちた、悲しい顔をしていた。
「なんで・・・」
「??」
掠れた、絞り出すような声。
「なんで、そんなひどい事・・・」
「ひどい事?」
「俺に、婚約者はいない。好きなのは、愛してるのは君だけなのに・・・!!」
その言葉を聞いたとき、反射的に肩に食い込んだ手を払い、蓮と距離をとった。
なぜだか分からないけど、ただただ泣きたい。
「からかわないで!! 私だって知ってます!! 皆だって言ってます!! 結婚秒読みだって!! あのスキャンダルの相手でしょう!? だから、あきらめたのに!! どうして、今頃そんなこと言うんですかっ!!」
その泣きたい気持ちを。噛み砕き飲み込んだ言葉を、蓮にぶつける。
「私だって、好きだったんです!! ずっと!! でも、でもっ!! 『お子様』だって『泣かれると困る』って!! だから私、後輩でいたのに!! 敦賀さんの方がずっと酷い!!」
「君が、臆病だったからだろう!! ずっと待ってたのに!! ずっと、そばに置いて余計な虫がつかないよう、どれだけ牽制したと思ってるんだっ!!」
怒鳴る蓮も、泣きそうな顔をしている。
「そんなの、知りませんっ!! わたしは、わたしは!! あいしてほしかった・・・!!」
「・・・・・・っ!!」
叫んだとたん、両手をとられ壁に押し付けられる。
伸し掛かってくる影が、
(こわい・・・)
「あの時の君に、こんなことが耐えられた?」
艶めく、表情に飲まれ呆けていたら
「んー!!」
噛みつくような、キス。噛み締めた歯列を割り、侵入してくる熱い舌先。
「んん・・・・・っ!!」
力強く、粘膜を抉られて。上あごをくすぐられて。
(こんなの・・・っ)
くんっ・・・はねた腰。
それを逃さず、蓮の足がキョーコの腿を割る。
指先を全部絡め、さらに強く壁に押し付けられる。
「はふっ・・」
漸く離された唇。互いの息が、吸われてふっくらと腫れたくちびるにかかる。
「あの頃の君にしたら、俺のことなど視界にも入れてくれなかっただろう?」
ひたり、漆黒の瞳が涙で潤むキョーコの瞳を射抜く。
(そうかもしれない・・・・)
言われた言葉は、否定したいけれどきっと真実だ。
あの頃の自分は、勝手に傷つき蓮の前から姿を消したかもしれない。
「・・・・・・」
反論も出来ず、キョーコが黙っていると
「・・・・・・・・・・・一回目は事故だから・・・・」
「あ、ん・・・・」
再び噛みつかれる、くちびる。
喉の奥まで触られて、舌先を噛まれて。
口の中をつないでいる証の様に、甘い水音が響く。
「ん、ん、んぅ・・・」
甘くて、腰の奥が蕩ける。
(くち、とけちゃう・・・)
与えられる甘さに、酔いそうに始めたとき
「二人とも、その辺にしておけ」
割って入ったローリィの声に、二人の声が再び離れる。
「蓮、下手踏むんじゃねぇって言っただろう。ちったぁ、自戒しろ」
「・・・すいません」
所属タレントのラブシーンを目撃しても、全く動じない社長。
それどころか、
「最上君も。これから卒業式なんだから。衣装を崩しちゃだめだろう?」
忠告する着眼点も少しずれてる。
「すいません・・・」
キョーコがしびれた唇を、手のひらで覆うと目の前に立つ蓮が息を飲む。
「蓮!! 駄犬じゃねぇんだから、待て!! 最上君、客だぞ」
「お客様・・・?」
ローリィの後ろから現れたのは、ハル。
「こんにちは、キョーコちゃん」
「ハルさん・・・」
ハルは見たこともない位、冷たい瞳でキョーコを見ていた。
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またまたありがちですいません・・・。