メガネ愛歌 | 妄想★village跡地

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アメンバー様50人突破記念リクエスト

第一弾はケロちゃんさまよりリクエスト

『クリスマス』もの。

メガネ哀愁の続きです


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祝日のフロアは寒々しく、やたらと音が響く。

しんと静まり返った、職場に籠められているのは蓮とその上司の二人


(こんなはずじゃなかったのに…)


パソコンに向かい、込み上げる遣る瀬無さをぶつけるように荒々しくキーボードを繰る。


(なんでこんな日に…)


ちらっと視線を巡らせて、上司を伺えば。

顔色一つ変えることなく、書類に向き合う彼女の姿。

メガネに阻まれて、その表情は上手くうかがえない。


(よく考えれば、うまい話落ちてるわけないんだよな…)


心の底でため息をつき、再びパソコンに向き合う。


今日はクリスマスイブな土曜日。

世界中が浮かれるこの祝祭に、なんで仕事場で上司と二人っきりで仕事をしているのか…。

答えは簡単


『誘われたから』


ただそれだけ。


(期待するだろう…ふつうは…)


前々日に、上司から言われた言葉


『土曜日、空いてたら敦賀君の体借りたいんだけど?』


思わせぶりな口調と、指定された日付はキョーコに片恋を寄せる蓮に期待を抱かせるには十分だった。

体だけの関係はむなしく、いらだちが募る。

けれど、その関係を崩すのも怖い。



じりじりとじれていた蓮は、今日の誘いに淡い期待を抱きうきうきととっておきのスーツを引っ張り出し、いそいそと待ち合わせ場所に来てみれば、ビジネススーツに身を包んだキョーコの姿。

隙のない服装と、きりりとしたメガネに付け入る隙は微塵もない


『仕事、手伝ってほしいの』


つれない言葉に、肩を落とす間もなく引っ張り込まれたのは、見間違いようのない自分の職場で。


『この書類とこっちのクライアント情報、まとめておいて』


どっさりと渡されたのは、書類の山、山山。

渡した本人は、さらなる仕事の山を切り崩すため自分のデスクについている。


(クリスマスイブだぞ? もっとこう……)


『鋼鉄の女』キョーコに甘い期待を抱いた自分が悪いのか?


(いいや、悪くないはず。せっかく一張羅出してきたのに…)


念のため、予約したホテルのディナーも無駄になりそうだ。


(………いつものように、デスクの上ってのも悪くないんだけどね。たまには、違う場所でも楽しみたかったのに…)


もよもよと邪な思いを膨らませなんとか、『恋人』っぽいクリスマスを過ごそうと脳内で画策する。


「敦賀君? 終わったの?」


妄想にかまけて、手が止まっていたのを聞きとがめたのかキョーコから声が飛ぶ。


「あと少しで終わります」


「そう。……まだ、頼める? この後………予定あるのかしら?」


昼過ぎに待ち合わせをして、引きずり込まれてから4時間ほど経過していた。


(予定を立てたいと思ってた人は、いますけどね)


「いえ、特には」


「……………本当、に?」


珍しくためらう口調の上司。こんなに歯切れの悪い彼女は初めて見る


「ええ。今俺、付き合ってる人いませんから。知ってるでしょう?」


多分に含みを持たせて、言えば脅えたように顔をそらすキョーコ


「………………そんなの、しらない、わ」


「そうかな? キョーコの相手するの、大変なんだから」

いっつも吸い尽くされて、大変なんだよ?


うろたえる上司が、かわいくて、少し憎たらしくて、追い詰める。


「キョーコこそ、俺一人じゃ足りないよね?」


にやり、色悪に笑えば


「そんな、のっ!!」


耳まで真っ赤にした彼女が、視線をそらす


(これじゃいつものやり取りと変わらないじゃないか……)


追い詰めて、体の関係だけを追求する。


いつもの二人の関係


それから脱却したかったのに…


せめて、他人から見られたときに『恋人』のように見えるくらいには、ステージアップしたかったのに


(うまくいかないな…)


こっそりため息を落とすのは、今日でいったい何回目か。

儘ならないのが人生の常とはいえ、ここまで行くと悲しすぎる。


「………………………………敦賀君こそ、私なんかじゃ物足りないんじゃない?」


「え?」


つぶやかれた言葉は小さすぎて、聞き取れないほど。思わず問い返せば、


「若い子の方がいいでしょ? 敦賀君、引く手あまたじゃない」


きつく睨みつけてくる瞳の端が歪んでいるのは、メガネの所為かそれとも…


「引く手数多って…」


「私、知ってるわ。今日、いろんな女の子に誘われてたの。私が呼ばなければ、さぞ楽しい思いができたんでしょうね」


「は?」


確かに誘われていたが、すべて断ったしそもそも行くつもりもサラサラなかった

苦々しく吐き捨てられる言葉の数々は、身に覚えがなく…

あっけにとられている連を見て、キョーコは失敗したと言わんばかりに言葉を飲み込み、話を切り上げ蓮に背を向けた。


「呼び出してごめんなさい。今日はもういいから」


(………ひょっとして…)


「キョーコ…」


(これって…嫉妬?)


「変なこと言ってごめんなさい。お疲れ様、また来週よろしくね」


(チャンス、だよな?)


今まで見たことのない、キョーコの欠片。

今、これを逃せば、次は捕まえられない気がした。


「キョーコ、こっちみて」


向けられた背中に、優しく声をかける。

振り向くことのない背中にひそやかに近づいて、スーツに包まれた痩躯を己の腕の中にとらえる。


「確かに、たくさん誘いを受けたけど全部断ったよ」


囁けば、腕の中の体が小さく震えた。


「キョーコ以外の人と、クリスマスを過ごすつもりはなかったし」


「うそ」


ようやく帰ってきた返答は、薄くかすれていた


「本当。あの日、キョーコが声をかけなかったら俺が誘うつもりだったし」


「……うそ」


「本当。その証拠、これから見に行こうか?」


寄せた肩は、細く頼りない。


「俺は、ずっと待ってたんだ。キョーコがこっちを見てくれるのを」


「…………見てたわ。ずっと」


「そのメガネが邪魔で、よくわからないんだ」


スーツを脱いでもらい、『上司・キョーコ』から『恋人・キョーコ』に変わってもらおう。


「キョーコのために、ホテルをとってあるんだ。たまには違う場所で、君を見てみたい」


甘く掠れさせた声は、キョーコの鎧を剥ぐには十分で


「………こんなおばさんでいいの?」


「キョーコが、いいんだよ」


「ありがとう……」


きらめくツリーの美しい夜に。

蓮の願いどおり、二人の関係は小さくも大きな一歩を踏み出した



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ケロちゃん様のリクエストに応えられてるか、微妙なところでございます。

石を投げられないか、びくびくでございます。

桃色部分はまた別途、限定でUPしたいと思います。

ケロちゃん様、リクエストありがとうございました♪


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