A girl like a butterfly 5 | 妄想★village跡地

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「・・・・できた!!」


俺は手に持っていた白い布を持ち上げた。手は、絆創膏だらけで、縫製は簡単なところしかやっていない。今やっていたのは最後のスカートの刺繍だけれど、それだって一人でやったわけではない。それでも、自分の手で最後の一刺しを終えた衣装を見ると嬉しくてしょうがなかった。


『よく頑張ったな!さあ、もう開場の時間だ。キョーコも到着しているぞ。ここからが本番だ。男を見せろよ。』

『はい!本当にありがとうございました。』


マンディ氏がとんでもない事を言い出した時にはどうなることかと思ったが、こうやって一つ一つ形になっていくのを見ると頑張ってよかったと思う。彼には感謝してもしきれないように感じて、深く頭を下げた。


『私は、自分のやりたいことをしただけだよ。さあ、君も早く着替えなさい。忘れ物のないようにするんだぞ?』

『はい。』


いよいよ始まった、彼女のための一夜限りのファッションショー。俺とマンディ氏が用意した衣装と、それとは別に、マンディ氏が彼女の、今までに出演したドラマなどの役柄に合わせて5着の衣装を用意した。実は、今日の事は最上さんには内緒だ。彼女がなるべく緊張しないように、彼女が演じたことのある役柄に合わせた衣装にしたのだ。
ステージに隠れて、彼女がキャットウォークを見事なウォーキングで生き生きと渡るのをじっと見詰めた。
終わりの時間が近づくにつれて、心臓が早鐘を打ち始める。ポケットに入れた手をぐっと握りしめた。
俺の中の彼女そのものの衣装を身に着けた最上さんが、とうとうキャットウォークに現れた。ふわふわひらひらと蝶のようにスカートをひらめかせて、何とかモデルウォークをする彼女。今の彼女は、最上キョーコという一人の女性だ。恥ずかしそうに、ほんのり頬を染めて、でも楽しそうに彼女はキャットウォークの先端まで歩いていく。
彼女が、先端までたどり着きくるりとターンをした瞬間、会場中の照明が落とされた。


「あと一分です。行ってください。」


スタッフの合図で、俺は、愛しいあの子のもとへ向かうため足を踏み出した。ステージに上がると、俺と彼女をスポットライトが照らした。
突然の暗転に、不安そうな表情を浮かべていたっ最上さんが驚いたように瞳を見開いた。そんな、彼女に微笑んで、一歩一歩、彼女のもとへと歩んでいく。二つに分かれていたスポットライトが重なった瞬間、ゴーンゴーンと鐘の音が響いた。


「誕生日おめでとう。」


初めて彼女の誕生日を迎えた時と同じように、手に持っているクイーンローザを一輪彼女に手渡した。


「あ・・・・りがとう・・・ございます。ど・・・・・して?」

「君の誕生日を一番に祝う役目を、ほかの誰かに譲るつもりはないよ?」


彼女の一番はいつだって俺でいたいのだ。


「でも・・・今日は早く帰ったって。今日のオフのためにずっと忙しかったって聞きました。なんで・・ここにいるんですか?」

「うん。君の誕生日のプレゼントを悩んでいたらマンディ氏が協力してくれたんだ。だからちょっと忙しかったね。」

「・・・私の?・・・今日のショーがプレゼントですか?」


困惑する彼女に首を振った。


「くす。違うよ。男がプレゼントする意味を、前に教えてあげただろう?覚えてる?」

「・・・はい。」


思い出して、頬を染める彼女に俺の用意した贈り物を教えてあげよう。


「今、君が身に着けているものはすべて俺が用意したものだよ?マンディ氏や、アルマンディのスタッフと一緒に全部一から君のためだけに作ったんだ。俺の縫ったところはちょっと歪んじゃったかもしれないけど。気に入ってくれたかな?」


「・・・・・えっ!?」


驚いて自分の体を見まわす彼女に、最後の贈り物を。


「でも、一つ足りないんだ。手を出してくれるかな?」

「へっ・・・?」


ジャケットのポケットの中にずっと入れていた手を取り出すと、彼女の左手を取りずっと握りしめていたモノを緊張で震える指を叱咤して、彼女の指先に通した。


「俺と結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」

「・・・やっぱりドッキリ!?」


左手の薬指に通された光り輝く指輪を呆然と眺めた後、きょろきょろと辺りを見まわした。


「違うよ、ドッキリでも夢でも何でもないよ。俺の正直な気持ちだよ。そろそろ、逃げずに俺の気持ちを受け取ってくれないかな?」


ずっと考えていたのだ。俺が彼女に好意を示すような言葉を発しようとすると、するりと逃げてしまう彼女。もしかして気づいてる?そう思ったけれど、本能で逃げているのではないかという考えに行きついた。。二度と傷つかないように、自己防衛をしているのだと。


「私は・・・・逃げてなんか・・・・」

「だったら、受け入れて?俺は君を愛しているよ。」

「う・・・そ・・・・」


うろうろと視線をさまよわせる彼女に、真剣に想いを伝える。瞳を潤ませて彼女は、へなへなと崩れ落ちた。彼女の目線に合わせるようにしゃがみこんで、その瞳を覗き込む。


「幸せにするよと約束はできないけれど、俺は、君がそばにいてくれるだけで、温かくて幸せな気持ちになれるんだ。」

「・・・・・・私もです。」


彼女の心に響くようにと祈りながら伝えた想いに、小さな声で、彼女はぽつりと返してくれた。


「・・・本当に?」

「はい。あなたがそばにいてくれると、温かくて幸せで・・・・どうしたらいいんでしょうね?」


困ったように、微笑む彼女を力いっぱい抱きしめた。


「それは、ずっと一緒にいるしかないんじゃないかな?ねえ、君の気持ちを教えて?」

「私も・・・・あなたを愛しています。」


彼女と過ごす5度目の誕生日、ひらひらと舞う蝶をようやく捕まえることができたのだ。





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