ショービズ見聞録

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ミュージカルなどのショービズ、音楽、国内外への旅、アクティビティなど、新しい感動との出会いをつづっていきます!

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先日観劇した岡田利規作・演出『God Bless Baseball』の終演後、「韓国における検閲問題について」のトークイベントがありました。

岡田利規さんと多田淳之介さんの主催、ということで、あくまで個人として(フェスティバル/トーキョー15とは関係なく)開催されたイベントでした。
彼ら+韓国で実際に検閲にあわれた2名で、トークが行われました。

お二人が遭遇した検閲について、いくつかの実例が話されました。

ひとつは、アーツカウンシルの助成金を申請について辞退するよう圧力がかかったケース。
これには、前段としてアーツカウンシルの審査員に彼の申請が通らないよう圧力をかけ、審査員がそれに屈せず正当な評価をして申請が通ったということがあり、最終的に本人に圧力がかかったようです。

もうひとつは、アーツフェスティバルの一環で、ポップアップシアターというサプライズ公演を行おうとしたところ、フェスティバルのディレクターが開催を阻止した(自主規制した)事例。
(名目上はカフェのお客様に迷惑がかかるということで中止したわけですが、実際、公演の内容が政治的だったようです)

さらに、セウォル号沈没事件の被害者である修学旅行生たちの故郷・アンサンを歩くイベントを企画し、アーツカウンシルに補助金申請をしたところ、それに通らず、後に審査に加わっていた批評家の方が次のことを明らかにしました。それは、アーツカウンシルのスタッフから審査員にブラックリスト(選んではいけない申請者のリスト)が渡されていたことでした。

表現の自由が保障されている民主主義社会において、検閲はあってはならないことです。
が、実際に起こりえることです。日本でも今後、起こるかもしれませんし、知らないうちにどこかで検閲がされているのかもしれません。

助成金の仕組みを通じた圧力や、指定管理者制度であることによる(次に更新されないことを防ぐための)自主規制みたいなことも考えられます。

中国のようにそもそも検閲があることが前提の国もありますが、このトークの中でもありましたが、作家はいわばゲーム感覚で規制をどうすりぬけるか、ということを考えているようです。

「検閲」というテーマで言うと、三谷幸喜さんの『笑の大学』を思い出します。

□『笑の大学』(舞台版)DVD告知映像 


フェスティバル/トーキョー15にて、池袋・あうるすぽっとで上演されている、『God Bless Baseball』を観劇してきました。

作・演出:岡田利規
翻訳:イ・ホンイ
出演:イ・ユンジェ、カン・ジョンイム、捩子ぴじん、ウィ・ソンヒ、野津あおい
舞台美術:高嶺格

物語は、、、
両国の現在を改めて見つめようと選ばれた題材は「野球」。野球をめぐる男女の個人的な体験からメジャーリーグで活躍する日韓の選手たちのエピソードまで。さまざまな視点を通じて、両国の歴史や文化を描き出す物語は、やがて「アメリカ」という大きな存在に直面することとなる。野球の本場・アメリカが日韓の歴史、人々の生活に及ぼした影響とは――。アジアとアメリカの近現代史を俯瞰し、体感させる本作に、私たちはどんな「未来」を見出すだろう。

観た人がどう感じるか、どう思うか。
自分がもっているアメリカ、韓国に対する考えを俯瞰するという意味でも面白い作品だったと思います。
特に、日本人とも韓国人とも判別がつかない女の子が、傘(アメリカの象徴?)に入らないことで、私たちが傘に入らない状態もしくは傘から出て行った状態を想像させます。

舞台終盤。4人の人物がいて、日本人・韓国人と思われる男女は傘をさしていて、無国籍の女の子は傘の外に立っています。一方で、ボールを立て続けに空に投げるイチロー(これは劇中でイチローの真似をしている男性です)がいます。無国籍の女の子は、彼から、危ないから傘の中に戻るよう言われるのですが決して戻らず、やがてイチローがホースで水を吹き上げ、女の子がずぶぬれになるシーンがあります。
言葉にしてしまうと何とも単調なシーン。
でも、劇場空間でそれを見ていると、(きっと無意識に心に迫るものがあるのでしょう)とてもドラマチックで、不思議と涙がこぼれてしまいました。まさに、これこそ「劇的」ということです。

こういった自分の脳や心を指摘してくれる演劇は、本当に面白いですね。

□岡田利規『God Bless Baseball』フェスティバル/トーキョー15 トレーラー

久しぶりに名古屋に行ったので、可児市文化創造センターに立ち寄り、「再びこの地を踏まず -異説・野口英世物語-」を観劇してきました。

作:マキノノゾミ、演出:西川信廣
出演:今井朋彦、瀬戸口郁、若松泰弘、鈴木弘秋、佐川和正、西岡野人、後田真欧、富沢亜古、藤﨑あかね、松岡依都美、永川友里、千田美智子

物語は、野口英世が北里研究所の助手見習い時代に始まり、前半は破天荒だけど人に愛される人物像を、後半はアメリカで出会い結婚したメリーとのエピソードを綴っています。

まずは、人間のあたたかみが伝わって来る作品だなぁというのが率直な感想です。
特に、野口をかわいがる血脇の存在(留学資金を飲んで使い果たしてしまった野口に頼まれ、それでもお金を工面してあげる)、子供が生まれ自分たちの家計もたいへんなのに夫に従い野口をサポートする血脇の妻。野口からの求愛を断りきれないがヨネ子(最終的にははっきりと彼にものを言い、応援をする)。そして、妻になるメリー。
野口とメリーは、お互いに主張が強くぶつかりがちですが、野口が結婚記念日のプレゼントを用意する場面やメリーが危険な場所へ行く(=最近研究のためにアフリカに行く)野口を心配しながらも尊重もしていて、そこに彼への信頼があふれていて、とてもあったかいのです。
ラストで野口がメリーに語る母とのエピソードも泣けます。

まわりの応援があるから、それを感じられる心があるから、人は頑張れる。
そういった人と人のつながりがあるから、新しい価値が生まれていく。そして未来につながっていく。
そんなことを感じた作品でした。

□『きて!みて!アーラ』 文学座公演「再びこの地を踏まず」 編