• 静岡県は、3月11日、2013年11月末に県内のデイサービス事業所を対象に行った宿泊サービス事業(お泊りデイ)の調査結果を公表した。
    調査は、お泊りデイの増加に伴い、安全やプライバシー確保が急務となっていることを受け、お泊りデイの人員や設備、運営についての指針を策定することを前提に実施したもの。お泊りデイに関する指針を策定するのは、東京都、大阪府、千葉県、愛知県に続き、全国で5番目となる。

    お泊りデイを巡っては、先ほど朝日新聞が問題提議の記事を掲載するなど、宿泊環境や安全性が問題視されている。一方、介護者の事情などでお泊りデイを利用せざるを得ないケースも多い。調査結果は、静岡県のみならず、全国のお泊りデイの実態を理解する上でも参考になるだろう。

    主な調査の結果は以下の通り。

  • ■お泊りデイを実施しているのは、デイサービス事業所の約1割

    宿泊サービスを提供する指定通所介護事業所などは128事業所あり、全1,225事業所の10.5%を占めた。2013年1月末に行った前回調査では7.6%(全1,033事業所中)で、その1.64倍となり、お泊りデイが急増加していることを証明する結果となった。

    宿泊サービスの開始時期では、2009年度から実施する事業所が増加し、2009年は11事業所、2012年度は38事業所ともっとも多く、2013年度は13事業所だった。

    宿泊室の形態は、指定通所介護事業所の「食堂兼機能訓練室」と「静養室」によるものが70.5%で、「専用の宿泊室」は29.5%だった。 特に「食堂兼機能訓練室」での宿泊は、多人数での宿泊となる場合が多く、利用者のプライバシーの確保や男女別の配慮が必要となる。

    そこで、複数名利用時のプライバシーの確保を調べたところ(複数回答)、「カーテン」や「パーテーション」によるものが半数程度で、「特に何もしていない」が5事業所だった。利用者への男女別の配慮についての質問では(複数回答)、「男女の部屋を分ける」が65.6%、「男女を一緒の日に受けない」が18.0%、「特に何もしていない」事業所はなかった。

    「連続宿泊の上限がない」と回答した事業所が76事業所で、全事業所の59.4%。「30日以下」と回答した事業所は44事業所で、全事業所の34.4%だった。

    ■利用実人数の半数超が要介護3以上

    以下は、2013年11月の1か月間の状況を調べたもの。
    1か月間の宿泊サービスの利用者延べ人数は、「0人」と回答した事業所が25事業所、「1人から30人」と回答した事業所が41事業所、約半数の事業所が1日平均1人以下の利用者だった。その一方、「61人以上」と回答した事業所は45事業所あり、全事業所の35.2%だった。

    最大利用人数は15人。宿泊サービス実施日数を「30日(毎日)」と回答した事業所は47事業所あり、全事業所の36.7%で、宿泊サービス実施日数の平均は15.8日だった。

    利用実人数の男女別では、男性が210人、女性が579人。 要介護3以上の全利用実人数が443人で、全利用実人数の56.1%だった。

    利用者で一番長く連続宿泊している者の期間(2013年11末現在)は、「1か月以上連続宿泊者がいるものがいる」と回答した事業所が37事業所で、全事業所の28.9%。 「30日以上連続宿泊している人数」が「0人」と回答した事業所が84事業所で、全事業所の65.6%。 「1年以上連続宿泊している者がある」と回答した事業所は7事業所だった。

    ■利用の約3割がケアマネからの提案

    宿泊サービス利用の経緯についての質問では、「家族からの要望」が一番多く46.9% 、次に「ケアマネジャーからの提案」31.3% 、利用者からの要望は14.8%、事業所からの提案は7.0%だった。ケアマネジャーとの連携が「あり」と回答したのは、全体の85.2%だった。

    宿泊サービスを利用する理由では(複数回答)、「家族の病気」や「冠婚葬祭」など家族に関するものが47.5%で全体の約半数、「ショートステイの空きがない」などショートステイに関するものは30.3%だった。

    宿泊料金は、1泊800円から1万3,500円(素泊まりと朝食込みの料金が混在)と幅があった。

    宿泊サービス時の職員配置数は、もっとも多かったのが「1名配置」で全体の75.0%だった。また、すべての事業所が「常時1名以上配置」と回答した。

    事故発生などへの対応では(複数回答)、「事業所内部の注意喚起」が90.6%、「緊急ブザー設置」が21.9%だった。消防設備等の設置では(複数回答)、ほとんどの事業所が「消火器」を設置しており、「自動火災報知機」を設置している事業所は71.1%、「スプリンクラー」を設置していると回答した事業所は9.4%だった。

    緊急時の対応(複数回答)では、「マニュアル作成」と回答した事業所が89.1%、「特に何もしていない」と回答した事業所が2.3%。事故発生時の対応では、「行政への報告体制あり」と回答した事業所が70.3%だった。また、「通院以上の事故(2013年2~11月)」は16件だった。