
ゴールデンウィークで仕事柄さまざまなイベントに顔を出すことが多い。
以前自身が担当していた「中之島祭り」に販売応援している仲間の激励に行った。



ついでに、散歩がてら「バラ園」まで足を伸ばした。
高価な絨毯のように敷き詰めらた薔薇
が、今盛りと辺り一面に咲き誇っている。






薔薇以外の花を探すのが困難なほど、いっさいが薔薇で埋め尽くされている。
五月初旬のこの季節は薔薇の開花の時季である。
いままさに咲き誇らんとする色とりどりの薔薇があたり一面に咲き誇らんと、濃厚な匂いと色彩に満たされている。
それは華やかさとぜいたくさにため息をつきたくなる光景である。



時にはバーボンでも傾けたくなる夜がある。
騒ぎながら飲む酒と自分と会話しながら飲む酒があって、バーボンはあとのほうだ。
フォアローゼスが好きだ。
まず、ストレートで飲んでみると、バーボンならではのエステル香とアルコールの香りがある。
奥から、樽から染み出たウッディな香り、さらには梨や青リンゴのようなさわやかさが後からついてくる。

と同時に胸にしまいこんでいた、いろんな思い出が思い起こされる。
大学三年の5月のゴールデンウィークのある日だった。
当時付き合っていた彼女からさんざん文句を言われ、見事に別れた。
まるで、「セーラ服と機関銃」だ。
何十発もぼくの心に非難の薔薇のトゲのような弾は打ち込まれた。
JR大阪駅と阪急百貨店をつなぐ、横断歩道で別れ話の後、彼女は、正確にいうとさっきまでの彼女は、全くぼくを振り返ることはなかった。
青信号に変わるまで後、何秒のサインが虚しく点滅していた。
普段はサッカー部の友達たちと安い居酒屋しか行かないが、その日は東通りのバーに行った。
薄暗い、むせるようなバーでフォアローゼスのロックをオーダーした。
ウィスキーをソーダで割るのは、邪道と突っ張っていた頃だ。
バーテンダーが、ひとりで開業時間間近に入って一見君に向かって、サービス精神からか商品のエピソードを語ってくれる。
「このバーボンには、4つの薔薇がデザインされてますでしょ?なんの意味だかわかります?」
「いいえ、わかりません。」とぼく。
『「フォアローゼス」を作ったのは、 アトランタ生まれのポール・ジョーンズという男性だと言われています。
彼は南北戦争に駆り出され、帰ってきた時には、 故郷はすっかり荒廃していました。
しかし、なんとかここで生きていきたいと願う彼は、 故郷に唯一残された宝物の「自然」の恵みを利用して、 バーボンを作り始めたのです。
やがて彼の作るバーボンは評判になり、 蒸留所を開くまでになりました。
彼はある日、舞踏会に招待されます。
そこで出会った一人の南部美人。
ひと目で彼女を気に入ってしまった彼は、 自分で作ったバーボンを飲み干し、勢いをつけて、 その場で彼女にプロポーズをしたのです。
それに対して彼女はこう答えます。
「プロポーズをお受けするなら、次の舞踏会にはバラのコサージュをつけてきます」
そして約束の舞踏会、彼の前に現れたのは彼女の胸には、 4輪の美しいバラのコサージュが輝いていました。
そしてその名前は、二人の結婚の記念となった 4輪のバラのコサージュにちなんで名付けられたのです。』
バーテンダーのうんちくが虚しく、心に刻み込まれた。

しばらくして、ブルーハーツの「情熱の薔薇」が大ヒットした。
♪情熱の真っ赤な薔薇を胸に咲かせよう 花瓶に水をあげましょう 心のずっと奥のほう♪
醒めてしまって、干からびた花のように生きないで、心の奥の熱いものを失わずに生きていきたいというメッセージだった。

ぼくの心には、まだトゲが刺さったままだったが、前向きに進み始めていた。
3ヶ月ほどして、またそのバーにいくとラジオから、布施明の「君は薔薇より美しい」が静かに流れていた。
艶、声量、躍動感があり、それで最後の、♪変わった~~~♪ と長く伸ばす歌いかただ。
♪歩くほどに踊るほどに
ふざけながら じらしながら
薔薇より美しい
ああ 君は変っ~~~~~~~~た♪
目の前にいる女性の変貌ぶりに驚き、あらためて彼女をいとおしく思う、というメッセージ。

一年ぶりの同窓会で、彼女が結婚したと友達からことづてに聞いた。
今でも花の香りを感じさせるフォアローゼスをロックで飲むと、おいしく酔うほどに胸がちくりとするのは気のせいだろうか?