英語で読むタオのプーさん 第6章 | 英語は度胸とニューヨーク流!

英語で読むタオのプーさん 第6章

$英語と度胸はニューヨーク仕込みでぃ!

Bisy Backsonn
by Benjamin Hoff, A.A. Milne (訳と説明:テリ)

ある日ラビットがクリストファーロビンを訪ねると、
ドアに張り紙がしてありました。
GON OUT
BACKSON
BISY
BACKSON


外出中(Gone Out)
すぐ戻る(Back Soon)
忙しい(Busy)
すぐ戻る(Back Soon)

ラビットはこのビジー・バクスンさんというのが誰かわかりませんでした。
でもとにかく彼を探して森中を駆け回って探すことにしました。



今回はこのラビットに代表されるヒマなしのビジーバクスンたちについてです。

最近よく眼にする人たち。
まずスポーティなバクスンたち。
テニス、ジョギング、スキー、水泳、ダイビング…
身体的な活動こそ人生の1番の目的。
運動も仕事のようにこなします。
食事も仕事のように片付けていき、
ヘタすると、遊びまで仕事のように扱います。
同じ場所を行ったりきたりして、ポケットの小銭をチャリチャリさせ、
腕時計を何度も見て…と、眺めてるだけで疲れてしまうような人たち。
とにかく肉体的にはいつも移動してないと気がすみません。
そのくせ散歩には行かないのです。時間がないから。
もし、健康的でリラックスして、内容のある人生を送りたければ
バクソンたちのやってることの逆をすればいいかもしれません。

いったい何を求めて動き続けるんでしょか?
留まると息が出来ないマグロやサメではないので、何かあります。
そう、ご褒美=行動に対する見返り(Great Reward)ではないでしょうか?

宗教も科学もビジネス書もすべて、将来の大きな見返りを説いています。
天界や、次世代の微粒子や、重役室などいろいろですが、それはいつも
現在より後、その道の先、世界の裏側、月の向こう,星の彼方にあるようです。
それを求めて多くの人が自然に逆らった方法で、ことを難しくし、失敗し、
元いた場所に戻ってきてしまいます。

" Burn their toast a lot." said Pooh.
"I beg your pardon?"
"They burn their toast a lot." said Pooh. " Here comes Rabbit."
" Oh, there you are." said Rabbit.
" Here we are," said Pooh. " And there you are."
" Yes, Here I am," said Rabbit impatiently.
" To come to the point - Roo showed me his set of blocks.
They're all carved and painted, with letters on them."
" Oh? "
"Just the sort of thing you'd expect to see, actually,"
said Rabbit, stroking his whiskers thoughtfully.
" So by process of elimination, that means Eeyore has it."
" But Rabbit, you see --"
" Yes," said Rabbit. " I see Eeyore and find out what he knows about it -
that's clearly the next step."
" There he goes," said Pooh.

「トーストを焦がすんだ」プーが言った。
「何だって?」
「みんな、よくトーストを焦がすんだよ」プーが言います。「あっラビットだ」
「ああ、そこにいたのか」ラビットが言います。
「ここにいたよ」とプーが言います。「そしてキミはそこにいるね」
「そうボクはここさ」ラビットはもどかしそうに言います。
「要点を言わせてもらえば、ルーが文字の入ったブロックセットを見せてくれたんだ。
どれもちゃんと削られて色が塗られ文字が書いてあるんだ」
「へぇ~」
「まあ、普通によくみるやつだよ」ラビットは考え深そうにヒゲをなでながら言った。
「消去法で行けば、イーヨが持ってるって事になるな」
「でもラビット、それって…」
「うん」とラビット。「イーヨに会って、それについて何を知ってるか確かめよう。
明らかにそれが次のステップだ」
「ああ、行っちゃった」プーが言った。


$英語と度胸はニューヨーク仕込みでぃ!

その昔、最初のビジーバクスンである清教徒(Puritans)がやってきて、
それこそ見返りをえるどころか働きすぎで死ぬこともあった。
事実、先住民が自然のリズムに合わせて働くことを教えるまでは、餓死同然だった。
植えたら、休む。開墾する、休ませる。清教徒はこの2つ目が理解できなかった。
それから何世紀か、自分たちのやり方を押し通し続け、休めなかった土から味気ない
作物が作り出されることになった。
こうした「パーティぶち壊しの働きすぎ信仰」は、目の前の緑の大地に続く美しい森林や
清らかな水に感謝できず、その楽園とそこに住む人々を異端人で自分たちを脅かす者として
攻撃し征服することにした。自分たちが得るはずの報償を邪魔するかも知れないから。

その子孫たちは、さらに拡大し発展させるべく、自分以外のあらゆる物事を変え、
人を変えようとしている。
彼らの周りにも知恵のある人間はいて、チェックしてもいるが、ハイパーな子供を持った親同様、
すべてに眼が行き届くわけではない。

もうひとつ、こうしたバクスン族が信仰の対象にしているのが、若い力と外見と行動だが、
実効のあるものは今だ見つけられずに、化粧と整形による正面玄関のゴマカシが増えるだけとなった。
若さを衰えさせ、破壊するものは数多く発明されたが。

中国にはいまだにティハウスがあり、そこでは地元の人が集い、ゆっくり時をすごしている。
そこにあるのは「あなたは重要な方。リラックスして楽しんで」というメッセージがある。
それに比べて欧米のハンバーガースタンド。
「あなたはもう結構、早くして」というメッセージだけでなく健康にも悪い。
時間節約の精神はここだけでなく、スーパーや電子レンジ、原発や有害な化学薬品にも及ぶ。
ビジーバクスンは時間節約のためにかえって時間を無駄にし、すべてを台無しにすることもしばしば。

ヘンリーデイビッド・ソローは『ウォールデン 森の生活』でこう言っている。

Why should we live with such hurry and waste of life?
We are determined to be starved before we are hungry.
Men say that a stitch in time saves nine,
and so they take a thousand stitches today to save nine tomorrow.

なぜこれだけの焦燥と浪費をもって人生を生きるのか。空腹になる前から飢餓感を覚悟する。
人は今日のひと針が明日の9針を節約するというが、明日の9針のために今日千針を縫っているのだ。


タオイストには振る舞いや外見、気力的に若い人が多い。
これは決して偶然ではなく、その生き方のせいだろう。

40歳が平均寿命だった頃の中国で80や90まで生きるタオイスト。
1933年に世界に報じられたリ・チュン・ユン(李青雲)という人の死は
彼の生年が1677年ということで衝撃を与えた。
200歳を越えた時でも3時間に及ぶ長生きの秘訣という講義を28回も中国大学で行ったという。
若いときからタオイストを学び、実践した彼は人々に
「亀のように座り、鳩のように歩き、犬のように眠れ」とアドバイスしたそうな。

クリストファーロビンがプーに訊きました。

" What do you like doing best in the world, Pooh?"
" Well," said Pooh, " What I like best ----" and then he had to stop and think.
Because although Eating honey was a very good thing to do,
there was a moment just before you began to eat it which was better than when you were,
but he didn't know what it was called.

「何をするのが世界で1番好きだい?プー」
「そうだな」とプーは言って、「何が1番好きかっていうと…」
そこでプーは黙って考えました。
ハニーを食べるのはもちろん大好きなんですが、そうする前のひと時は食べている時より
もっと好きだったのです。でも彼にはそれをどう言えばいいかわからなかったからです。


ハニーは食べてしまえばどうってことない。
ゴールは着いてしまえばどうってことない。
人生の中のご褒美や見返りなんて、全部一緒にしてもたかが知れている。
でもそこにたどり着くまでの間も楽しめたら…
クリスマスプレゼントの醍醐味は開けてからではなく開けるまでだ。
持ち上げたり揺すってみたり想像したり包装を解く瞬間まで…
そしてまた残りの365日を楽しみにする。

これは何もゴールが大事じゃないってわけじゃない。
ゴールは大事。でもそこにたどり着くために賢くなったりうれしくなる過程が1番大事。
その過程の楽しさが、見返りだの時間節約だのといった信仰を打ち崩してくれる。

プーがハニーを食べる前の瞬間をなんと呼ぶだろう。
期待感、ワクワク感(=Anticipation)と呼ぶ人もいるだろう。
タオではそれは「気づき」(=Awareness)かもしれない。
幸せに感じるだけでなく、幸せであることを認識できること。
ゴールへの過程を楽しむことで、その気づきは点ではなく線になる。
瞬間ではなく永遠になる。

And then he thought that being with Christopher Robin was a very good thing to do,
and having Piglet near was a very friendly thing to have;
and so, when he had thought it all out, he said,
" What I like best in the whole world is Me and Piglet going to see You,
and You saying 'What about a little something?' and Me saying,,
'Well, I shouldn't mind a little something, should you, Piglet,'
and it being a hummy sort of day outside, and birds singing."

さてそれからプーは、クリストファーロビンと一緒にいることがとても嬉しいことだと思い、
ピグレットがそばにいてくれることはとっても楽しいことだ思いました。
こうしたことが全部頭に浮かんで来たので言いました。
「この世界でボクが1番好きなのは、ボクとピグレットがキミに会いに行って、
それからキミが『ちょっと腹ごしらえはいかが?』て訊くんだ。
そしたらボクが『ちょっとしたモンなら構わないね。キミはどうだいピグレット?』って言う。
外はハミングしたくなるような天気で、鳥たちも歌ってるんだ」


急がないで、楽しんで、と言われても、なかなかできないのが現代の生活。
時間節約の利器も周りに溢れていて、それを使わないというのも難しい。
でもゴールへのプロセスも楽しむ、ということは肝に銘じてもいいのでは?

時間を節約することで実際は何をしたいか、そのゴールを明確にすることで、
文明の利器に振り回されることなく、自分のペースで動くことができます。
時間に追われるのではなく、その時間も楽しむ。

とかく本末転倒なことをして、自己反省しがちな世の中ですが、
過程の楽しさ、大事さに気づくことで、
本来の目的が、もう大事な目的ではなくなることもありえます。
ここで言いたかったのはそんなゴールに待つ刹那的な幸せよりも、
永続的な幸せを目指すということだったのではないでしょうか。

ワシの読者で英語を勉強してるみなさん、
英語はコミュニケーションの道具であり、勉強の目的はそのコミュかもしれません。
でもそのゴールばかり目指す前に、今やってる勉強を思い切り楽しんでくださいね。
ひとつ覚えたら、とりあえず使ってみる、応用してみる、表現してみる。
そんな寄り道がきっといつかほんとの会話に役立ってきますよ♪

$英語と度胸はニューヨーク仕込みでぃ!

用語のポイント

impatiently イライラしながら、もどかしそうに
thoughtfully 考え深げに、考えながら
be determined to ~するのを覚悟して、~しようと意気込んで
in time 先に、前もって、将来の
friendly 親しみのこもった、友達甲斐のある
think out 考え出す、考えをまとめる、アイデアをひねり出す

英語は度胸と愛嬌!