感動のほんとの秘訣

あのね、ワシ今回仕事でレストランの改築やることになってね、
スタッフの動線や、客からの視線や居心地を学ぶために、
3日くらいランチとディナーの様子を眺める仕事してきました。
まあ2時間ずつくらいだし、それも料金に含めるからいいんだけど、
見ているうちにもう手を出したくなってしょうがなくなりました。
改築の理由は、汚れや、使い勝手が悪いことが主なんだけど、
ホントの理由は売り上げと利益が右下がりなこと。
地理条件や競合相手、客層のマーケティングも踏まえて、まだまだいけると判断。
だからこの改築の責任は重大だと思うし、知り合いの店だから
きれいな店、動きやすい店、そして儲かる店にしてあげたいワケ。
前にホテルのレストラン関係のブローシュアの仕事してるときに
かなり飲食業界のことは学んだつもりで、理論は入ってるし、
自分自身、インテリアや味、値頃感や店員の態度にはうるさい。
だから流行ってる店とそうでない店の差はすぐ目に飛び込んでくる。
いわばサービスの提供側と客としての目線どっちもあると自負してる。
今回、この店を改めて見てみると、長年の間にできた店主側の惰性と
疲労感、あきらめ感が伝わってきて、これはどうしても、改築だけじゃなく、
すべての改革、精神的な改革の方が重要に思えてきたわけです。
キレイな店でそこそこ上手いもん出すだけじゃ、今の時代長く続くとは思えません。
活気のある店は、儲けようという気概に満ちて、客を乗せるが上手いです。
客を乗せるというのは、すなわち必要以上のものでも注文させること。
同じ客に何度も越させること。常に新しいお客を増やすことだと思います。
トントン以上に儲けるためには清潔感を保ち、味に満足させるだけでは無理です。
それは老舗のやること。名前があり、コネがあり、パブリシティが大事。
営業10年くらいの店に何が必要かというと、グルーポンの割引ではありません。
それはもっと後の話。流行る条件が揃ってるのに宣伝が行き届かないところです。
では何が他に必要なんでしょう。
それは感動です。
みなさんはミュージカルやダンスなどを観に行ったことがありますか?
ダンスは特にこの感動を言葉にするのは難しいかもしれません。
観ている人たちを感動させるのには必須条件がひとつあります。
もちろんテクニックの確かさや美しさ、振り付けの面白さは大事です。
しかしこのすべてをひっくるめた中に必要なのは、実は意外性です。
予期したものを予期したとおりに観て喜ぶのは、失礼かもしれませんが原始的なことです。
子どもや年寄りを見ればわかると思いますが、飽きやすい反面、気に入ったものは
コレでもかというくらい繰り返し観ます。
いわば歌舞伎の見栄きりや水戸黄門の印籠を出すシーンに毎度カタルシスを
得るのと同じこと。悪を倒すヒーロー、寝るときに抱くテディベアなんですね。
これは先ほども言いましたが、老舗の役目。
では舞台で得られる感動はナゼ生まれるか。
それはひとつの動きから次の動きをしたときの意外性、その美しさに驚くからです。
フラットな映像と違って、観客は自分も知らずにリズムに乗り、次の動きを予期しています。
そこに予想とはまったく違う動きで、美しく決まると、ゾゾっと感動するのです。
これは何も舞台に限ったことではありません。
スポーツの世界でも感動はあり、その内幕はこの意外性な事が多いです。
ワシはテニスをやるのも観るのも好きで長年やってますが、
4大大会でいつもいろいろな感動を味わいます。
切羽詰って返された絶妙なドロップショット、ロブ、そしてクロスのパッシング…
観客も試合中の相手も予期してなかったところへ決まるボールに、
下半身から揺さぶられるような興奮と感動を覚えるのです。
小さな幼稚園児や高校球児が一所懸命やってる姿でも感動しますが、
それはたまにだし、身内びいきや本来の母性本能も影響します。
赤の他人を何度も感動させるのは、やはり意外性の演出です。
この店のメニューを見てみると、そこそこみんな旨いけど、ありきたり。
季節の食材や、試験的な食材、意外かつ絶妙な味付けが極端に少ない。
中くらいの値段帯の店に来る客が無意識的に期待してるのは、実は非日常性。
それは空間や雰囲気作りもそうですが、店のメニューに隠れた学習要素。
ああ、この素材、こんな風に食べてもおいしいんだ。
えっ、これなんていうモノ?初めて食べた。
この食器代わりに使った氷、ステキ…、など様々な意外性や娯楽性、教育的要素。
今まで知らなかったことを経験する機会に、現代人は余計なお金を使いに来るのです。
いわばレストランのプチアミューズメントパーク化です。
汽車がお寿司を持ってくるところもあり、それはそれで意外性です。
店員全部が歌いながらアイスクリームを練ってくれるのもそう。
でもそこまで突飛なことをする必要はありません。
食事が出された時のちょっとした意外性で感動し、また味わいたいと思うからです。
もちろんこれは基礎になる味や値段やサービスがあってのことです。
儲ける店にするにはこのプラスアルファが必要だと提言するつもりです。
この意外性は毎日の献立にも役立ちます。
パセリの代わりに飾るハーブひとつ。それだけでも話題に事欠きません。
そしてこの効果は、芸術にも、文学にも、人生にもすべてにいえる事です。
例を挙げたらキリッ)がありませんが、もちろん人間的魅力にもあてはまります。
人間、自分が予期してたとおりの人なんて世の中にいはしません。
おとなしいと思ってた人がおとなしいままだから満足という人もいないのです。
おとなしいだけじゃなく、ふとしたときの優しさや強さにグッと惹かれます。
そのちょっとした意外性を大人のマインドはいつも無意識に期待しています。
いろんな引き出しを持ってる人は、いっぺんに出さず、効果的に少しずつ出す。
そうしたことで、いつまでも魅力を失わない人間に近づけると思います。
持ってない人は、これから少しずつ、自分の引き出しを増やして、
衣替えや配置換えに備えることをお勧めします。
ワシみたいにあっちゃこっちゃ脚突っ込みすぎてもポイント薄れるからそゆ人は気をつけてね:p
