英語で読むタオのプーさん 第5章
最近、驚くことにこのタオプーがワシのブログのアクセス数ナンバー1です。
知らない方でもぜひどんどんご意見、ご質問お待ちしています!

第5章 プーの道 = 「無為」
by Benjamin Hoff, A.A. Milne (訳と説明:テリ)
前章は人それぞれが持つ「内なる自然」を見失わず、最大限に生かすことでした。
今回はそれを生かしながら実践する方法です。
時にしぶきを上げ、時に急流となる細い水の流れは、やがて大きな川となり、緩やかに流れていく。
たどり着くのは大海とすでに知っているので、若い頃の流れのように急ぐことはない。
自分自身の「内なる自然=inner nature」と周りにある自然の法則とともにやっていけば、
一所懸命に骨折ることなく、最小限の努力でうまくやっていける。
この行動方式を中国では「無為(ウーウェイ)」と呼び、ここでは「Pooh Way=プーの道」と呼ぼう。
英語では " Do without doing." (為さずして為る)
Things happen by themselves spontaneously.(物事はひとりでに起こるべくして起こる)
これは「無理に行ったり、引き起こしたり、作ったりしない」こと
為という字が引っかく手と猿のシンボルから生まれたことを考えると、むやみに手出ししたり
首を突っ込まない、という意味になるのは興味深いところ。
自然は法則に則って動いているから間違いはない。間違うのは大きな脳を抱えて生きる人間たち。
お節介や努力のし過ぎで自然法則のネットワークから外れていく。
ここで骨折り知らずのプーの例
ある日、川の上にかかった橋から棒を投げて、もう一方で誰の棒が1番先に
流れに乗って橋の下から出てくるか、という(しょーもない)遊びをしていたら…
流れてきたのはイーヨ。
" I didn't know you were playing," said Roo.
" I'm not," said Eeyore.
" Eeyore, what are you doing there? " said Rabbit.
" I'll give you three guesses, Rabbit. Digging holes in the ground? Wrong.
Leaping from branch to branch of a young oak-tree? Wrong. Waiting for
somebody to help me out of the river? Right. Give Rabbit time,
and he'll always get the answer."
Then Pooh got an idea. They could drop some stones into the river,
the stone would make waves and the waves would wash Eeyore
over to the river bank. Rabbit thought it was a good idea. Eeyore didn't.
" Supposing we hit him by mistake?" said Piglet anxiously.
" Supposing you missed him by mistake," said Eeyore.
" Think of all the possibilities, Piglet, before you settle down
to enjoy yourself."
But Pooh had got the biggest stone he could carry,
and was leaning over the bridge, holding it in his paws.
" I'm not throwing it, I'm dropping it, Eeyore," he explained.
" And then I can't miss - I mean I can't hit you. Could you stop
turning round for a moment, because it muddles me rather?"
" No," said Eeyore. " I like turning round."
Rabbit becan to feel that it was time he took command.
" Now, Pooh," he said, "when I say 'Now!' you can drop it.
Eeyore, when I say 'Now!' Pooh will drop his stone."
" Thank you very much, Rabbit, but I expect I shall know."
" Are you ready, Pooh? Piglet, give Pooh a little more room.
Get back a bit there, Roo. Are you ready?"
" No," said Eeyore.
" Now!" said Rabbit.
Pooh dropped his stone.
There was a loud splash and Eeyore disappeared...
それからしばらくたち、みんなが心配してるところへ灰色のものがだんだん大きくなって出てきた。
大声を上げて駆け寄り、みんなで引っ張りあげてから…
" Oh Eeyore, you are wet!" said Piglet, feeling him.
Eeyore shook himself, and asked somebody to explain to Piglet
what happened when you had been inside a river for quite a long time.
" Well done, Pooh," said Rabbit kindly. " That was a good idea of ours."
訳
「あなたも遊んでたなんて知らなかった~」とカンガの子ルーが言いました。
「遊んでないよ」とイーヨ。
「イーヨ~、そこで何してんだい?」ラビットが訊きます。
「3つのヒントをやるよ、ラビット。地面に穴掘ってる?いいや。ブナの若木から若木へと跳びはねてる?
コレも違う。川から誰かが助け出してくれるのを待ってる?正解。ラビットには時間をやろう。
きっと答えに辿り着くから。」
そこでプーは思いついた。川の中へ石を落とし込めば、石は波を立たせてイーヨを川岸まで洗い流して
くれるだろうと。ラビットはそれはいい考えだと思った、がイーヨは思わなかった。
「間違って彼に当たるかもしれないね?」心配そうにピグレットが言う。
「間違って彼に当たり損ねるかもしれないよ」イーヨが言う。「すべての可能性を考えなきゃな、ピグレット。
そうやって自分で楽しむことにする前に」」
しかしプーはすでに持てる限りの大きな石を見つけ、前足で抱えながら橋から身を乗り出していた。
「ボクは投げるんじゃない。落とすだけだ、イーヨ」プーは説明した。
「そうすれば外しっこない。じゃなくて、君に当たりっこないってこと。ちょっとだけぐるぐる回るの
やめてくれないかな。狙いにくいから」
「いーや」とイーヨ。「回るのが好きなんだ」
ラビットはそろそろ自分が指示を出す頃だと感じた。
「さあ、プー」彼は言った。「ボクが<今だ>って言ったら落としていいぞ。イーヨ、ボクが、<今だ!>
って言ったらプーが石を落とすからね」
「親切にありがとよ、ラビット。だがワシにもそれくらいわかるから」
「いいかい、プー?ピグレット、プーにもう少し場所をあけてやれ。そこ少し下がってろ、ルー。
準備いいかい?」
「まだだ」イーヨが言った。
「今だ!」ラビットが叫んだ。
プーは石を落とした。大きな水しぶきが上がり、イーヨは見えなくなった。
「ああ、イーヨ。ずぶ濡れだ」触りながらピグレットが言った。
イーヨは体を振るって、誰かピグレットに教えてやってくれと言った。
自分もかなり長い時間川の中にいたならどうなるかと。
「よくやった、プー」ラビットが恩着せがましく言った。「ボクたちのアイデアがよかったんだ」
あいかわらず、りこうなラビットは手柄を自分のもののように。
しかし、うまくいくのはりこうさのせいではない。
目の前にあるものを見極め、その性質に従ったことができる心だ。
無為であれば、四角いものには四角を、丸いものには丸いものをはめ込む。ストレスももがきもない。
ひとりよがりな欲(Egotistical Desire)は四角いものを丸いものに無理にはめ込もうとする。
合わないところに合わない形をはめ込む凝った工夫をしようとする。
また、知識人はなぜ丸いものが四角いものではなく丸いものに合うか解明しようとする。
無為は何もしない、考えない。ただ実践するだけ。楽に見えるのにすべて実現する。
" Having trouble, Piglet?"
" The lid on this jar is stuck," gasped Piglet.
" Yes it ... is, Isn't it. Here Pooh, you open it."
(POP)
" Thanks, Pooh," said Piglet.
" Nothin, really," said Pooh.
" How did you get that lid off?" asked Tigger.
" It's easy," said Pooh. " You just twist on it like this,
until you can't twist any harder. Then you take a deep breath and,
as you let it out, twist. That's all."
" Let me try that!" yelled Tigger, bouncing into the kitchen.
" Where's that new jar of pickles? Ah, here it is."
" Tigger," began Piglet nervously, " I don't think you'd better - "
" Nothing to it," said Tigger. " Just twist, and - "
CRASH!!
" All right, Tigger," I said. " Get those pickles off the floor."
" Slipped out of my paw," explained Tigger.
" He tried too hard," said Pooh.
訳
「どうしたんだい、ピグレット?」
「ビンのフタが固まってるんだ」ピグレットがため息。
「ああ、その…ようだね。ほらプー、開けてごらん」
(ポン!)
「ありがと、プー」ピグレットが言う。
「どうってことないよ、ほんと」プーが言う。
「どうやってフタを開けたんだい?」ティガーが訊いた。
「カンタンさ。」プーが言う。「こんな風に、もうこれ以上きつくまわせないってとこまで押しひねるんだ。
それから深ーく息を吸って、吐きながらひねる。それだけさ」
「ボクにもやらせて」ティガーが叫んで、キッチンに跳びこんできた。
「新しいピクルスのビンはどこ?ああ、ここだ」
「ティガー」ピグレットがびくびくしながら言った。「そんなことしない方が…」
「なんでもないさ」ティガーが言う。「ただひねって…と」
バキン!
「いいよ、ティガー」私は言った。「ピクルスを床からどけよう」
「手から滑っちゃった」ティガーが説明する。
「きつくやり過ぎたんだ」とプーが言った。
力が入りすぎるとろくでもないことになったりする例。
逆に説明は難しいけれど、無理に起こそうとせず、状況に合わせて為すがままにしておけば、
うまく行くことが多い。
あとで振り返ってみて、
「今わかった。あの時の事はこうなるために起こるべくして起こったことだったんだ」と理解できる。
無理に何か手を打とうとしていたら、こうはならなかっただろう、と。
最高のレベルでは、無為は「水のように流れ、鏡のように映し、こだまのように返る」(壮子)
" flows like water, reflects like a mirror, and responds like an echo."
(Chuang-tse)
これを応用した対立を解消する無為、それがタオの武術、太極拳(Tai Chi Ch'uan)。
その基本の考え方は、相手のエナジーを相手に送り返すか方向をそらして、
相手の力、バランス、あるいは守備体制を弱めることにある。
あくまでも力には力で対抗しない。譲るが勝ちの世界。
その例が、水に浮くひとつのコルク片。
力をこめて叩けば叩くほど、深く沈みはするが強く浮き上がってくる。
自分からはエナジーをつかうことなく、コルクはすぐに相手を疲れさせてしまう。
無為は争いに加わるのではなく、その基にある力を中和させ、効力を弱める。
火に火をもって抗うのではなく、火には水を使うように。
さて、イーヨの誕生日にピグレットは風船を上げよう思いつきましたが、
向かう途中、急いで走ってたらウサギ穴につまずき、風船を割ってしまいました。
一方、蜂蜜を上げようとするプーですが、途中でお腹がすいて食べてしまい、残ったのは壷だけ。
" Balloon?" said Eeyore. "You did say balloon?
One of those big coloured things you blow up?"
" Yes, but I'm afraid - I'm very sorry, Eeyore - but when I was running
along to bring it to you, I fell down."
" Dear, dear, how unlucky! you ran too fast, I expect.
You didn't hurt yourself, Little Piglet?"
" No but I - I - oh, Eeyore, I burst the balloon!"
There was a big silence.
" My balloon?" said Eeyore at last.
Piglet nodded.
" My birthday balloon?"
" Yes, Eeyore," said Piglet sniffing a little.
" Here it is. With - with many happy returns of the day."
And he gave Eeyore the small piece of damp rag.
" Is this it?" said Eeyore, a little surprised.
Piglet nodded.
" My present?"
Piglet nodded again.
" The balloon?"
Then Pooh arrived.
" I've brought you a present," said Pooh excitedly.
" It's a Useful Pot," said Pooh. " Here it is. And it's got 'A Very Happy
Birthday with love from Pooh' written on it. That's what all that writing is.
And it's for putting things in, There!"
イーヨはこの役立ちポットが物を入れるだけでなく出すことにも使えるのを発見し、
ピグレットからもらった風船も、今の小さい状態ならしまったり出したりできるのに気づきました。
" I'm very glad," said Pooh happily,
"that I thought of giving you a Useful Pot to put things in."
" I'm very glad," said Piglet happily.
" that I thought of giving you Something to put in a Useful Pot."
But Eeyore wasn't listening. He was taking the balloon out,
and putting it back, as happy as could be...
訳
「風船?」イーヨは訊いた。
「風船って言ったね?あの大きくて色がついてて、自分で膨らませるやつ?」
「うん、だけど、あの、ごめんねイーヨ、だけど持ってこようと走ってたら、転んじゃったんだ」
「おやおやなんて不運な。早く走りすぎたんだ、きっと。怪我はなかったかい、小さなピグレット」
「うん、だけどボク、ボク、おおイーヨ、ボク風船割っちゃったんだ」
しばらく無言…
「風船を?」
ピグレットはうなずく。
「ワシのバースデー風船を?」
「そう、イーヨ」ピグレットはちょっと鼻声で答えた。
「はいこれ。た、たくさんのステキなことがありますように」
そしてイーヨに小さな切れ端を渡した。
「これがそう?」少し驚いたようにイーヨは訊いた。
ピグレットがうなずく。
「ワシへのプレゼント?」
再びうなずくピグレット。
「風船?」
そこへプーが到着。
「ボク、君にプレゼントを持ってきたんだ」興奮したようにプーが言う。
「これは役立ちポット」プーが言った。「はい、これ。それには<誕生日すごくおめでとう。プーより
愛をこめて>って書いてあるんだよ。書いてあるのはそれだけ。物を入れることもできるんだ。ほら」
「ほんとによかった」うれしそうにプーが言う。「物を入れられる役立ちポットをあげることを思いついて」
「ほんとによかった」うれしそうにピグレットが言う。「役立ちポットに入れるものをあげることを思いついて」
でもイーヨは聞いてませんでした。
これ以上ないくらい幸せそうに風船(のかけら)を出したり入れたりしていたからです。
見事、「災い転じて福と為した」プーたちですが、考えあぐねてではなく、自然と湧いた考え。
これは物事を先入観なく、そのものを見つめ捉える結果です。
皆さんも、力を入れすぎて、その割りに得るものが少ない日常ありませんか?
楽な気持ちを持って、自分の行動パターンを見直して見るのもいいかもしれません。
反省や後悔のためではなく、今をもっと楽に、効率よくするために、ね。

用語のポイント
spontaneously 自然に、自発的に
Leap 跳びはねる
wash over ~へ洗い流す、押し流す
Supposing 想定して、~かもしれない
settle down to ~に落ち着く、~することに決める
leaning over ~から身を乗り出す、~に身を預ける
muddle まごつかせる、混乱させる
took command 指示する立場になる、主導権を握る
feel 触って確かめる、感じる
Well done よくやった
stuck くっつく、固まる、はまる
coloured = colored 色のついた
burst バンと爆発する
sniffing 鼻をくしゅくしゅ、くんくんする
damp しぼんだ、湿った
rag 断片、ぼろくず