シェアするということ 東北の大地震から
最近では日本語でも「シェアする(=share)」という言葉が徐々に浸透してきて、聞く機会が多いです。
市場での占有率を表すシェアは有名ですが、この占有や自分の取り分、分担という名詞より
ぜんぜん意義のある言葉がシェアするという動詞。
分け合う、共有するという意味で、日常でもレスランで注文した料理をシェアしたり、
本当にいろいろな場面で使われますよね。
英語圏ででも同じです。
今回の大地震でこの言葉の大切さに出会うことが何度もありました。
やっとメールで連絡のとれた福島の知人は、津波注意報直後から避難生活が始まりましたが、
あまり時間の余裕もなく、持ち出すものを考える心のゆとりもなかったそうです。
避難所へは10人という数で1台の車をシェアしたそうです。
2日目になっても水や食料の供給は間に合わず、1人1個のおにぎりと水といったところも多かったようです。
そんな中、避難所で近くにいたもの同士で、やっと持ち出してきたパンやお菓子を分けてあげる光景を何度も目にしたそうです。みんなに分けてあげる余裕もなかったでしょうが、それでも一人占めすることがないんですね。明日は何が食べられるかわからない状況で、自分の食べ物をシェアするというのは、きっとかなり勇気がいることですが、そんな勇気など思いつかないうちにシェアしている方々の話を聞いて、ほんとに感動しました。
彼らがシェアするのは食べ物や毛布だけではありません。
情報のシェアが何より大事で、会う人ごとに知人の安否を尋ねたり、地震や原発についての新しいニュースを口から口へ伝えていったそうです。何も知らないでいる恐ろしさは、すでに知った事実よりもっと怖いからです。
そして不便な生活空間や時間をシェア。濡れたままの服で風呂にも入れなければ、冬とはいえ、かなり気になることでしょう。テレビには出にくいトイレや生理用品のことなど、すべてのプライバシーも彼らはシェアすることになります。緊急時とはいえ、これも不安になる大きな要素です。
そしてその不安や恐怖という精神的な苦しみのシェア。これを少しでも軽くするためにワシらにできるのが負担のシェアです。これもすべて分け合うことです。
このように英語のシェアはさまざまな場合や物事に使える、とてもいい言葉です。
不思議なのはあまり「お金を分け合う」ことには使わないこと。
それにはスペア(=spare)をよく使います。
Could you spare some money.
(少し恵んでくれないか)
Spare me some of your sorrow.
(君の悲しみを少し分けてくれ)
このようにスペアはどちらかといえば一方通行。
共有という相互通行の意味合いが強いシェアという言葉、ぜひこの機会に覚えて、
みんなでシェアしてみませんか?
使い方の例
Hey, we can share the ride with all of us here !
おい、ここにいるみんなで(車を)シェアして乗っていこう。
Would you like to share this bread with me?
このパンわたしとシェアしませんか?
Why don't we share the blanket for the time being.
しばらくの間はこの毛布をシェアしていよう。
Could you share me the news you just heard from them now?
あのう、今あの人たちから聞いたニュースを聞かせてくれませんか?
We are sharing this space and the moment of ordeal altogether.
われわれはみなこの空間と苦難の時間を共有している。
Let me share your pain and worry.
あなたの痛みと不安を分かちあいましょう。
後記
自然災害でいろいろなものや家族知人を失う悲しさは、自然には怒れないので、ときとして人への怒りにすり変わります。救助や復興を指揮する方々や政府へそれをぶつけようと思うかもしれませんが、誰もがいっぱいっぱいのところで働いてると思いますので、どうせ耐えなければならないのなら、前向きにみんなでがんばってほしい。そう願わずにいられません。