第83回アカデミー賞完全中継(長文)
今回は昨日(現地時間で27日の15時から)行われたアカデミー賞授賞式が行われました。
いわゆるレッドカーペットの代名詞的イベントで、日本でも何億ドルも稼いでいる、今をときめくハリウッドスターの祭典なのに、ネットワーク系で放映しなくなり残念です。そこで昨日ネットで全部見ることができたので、その模様をお伝えします。
セットはアーチを組み合わせたもので比較的シンプルなものでしたが、、そこに映像が映し出されたり、照明でいろいろ変わるのでステキでした。あくまでも代わるがわる登場する、艶やかな女優や俳優が主役。
司会を務めたのは「127時間」での主役が高評価されたジェイムズ・フランコ(スパイダーマンの親友役の彼)と、「アリスインワンダーランド」で白の女王を演じたアン・ハサウェイ(プラダを着た悪魔での演技が印象的)。
歴代のエンターテイナーが務めたこの司会役を、若い2人(ハリウッドは意外と高平均年齢)に任せてどうなるかと思いきや、冒頭の作品賞候補になった映画のパロディフィルムの中で、合成画像で登場してきて会場を盛り上げた。この合成が実にうまく出来てるので、どの映画もまだ観たことがないワシとしては、最初ほんとに出演してたのかと思いました。実際の登場人物とのやりとりだけでなく、それぞれの映像の微妙な明るさやぼけ方など、細部に渡って自然に作られており、授賞式での恒例のオープニングフィルムの中でも出色の出来。デジタル合成技術の進歩に驚きます。
このフィルムが終わると実際に2人が拍手の中登場。タキシードとドレス姿の2人は、輝いています。
軽妙なやり取りのあと、会場にいたアンのお母さんが紹介され、みんなの前で「もっと姿勢を正して」などと小言を言われたりして、場内大爆笑。つぎにジェイムスのおばあさんにスポットが当たり、「おばあちゃん、どうですかこの雰囲気は」と訊かれると。「わたしついにマーキーマークにあったわ~」と叫ぶ。このマーキーマークは知る人ぞ知る、昔カルバンクラインのCMで、ブリーフ1枚で踊っていた時のマーク・ウォルバーグのニックネーム。最前列に座っていたマークにカメラが行くと、服を脱ぎだそうとするジェスチャー。
そしてステージ上には第1回受賞作品、「風とともに去りぬ」の映像。居並ぶ他の作品賞受賞作品が紹介されたあと、最初の賞を紹介するトム・ハンクスが登場。「アリス・イン・ワンダーランド」「ハリー・ポッターと死の秘宝
PART1」「インセプション」「英国王のスピーチ」「トゥルー・グリット」の5作品の紹介と美術監督賞の発表。
続いて「ソーシャル・ネットワーク」「ブラック・スワン」「インセプション」「英国王のスピーチ」「トゥルー・グリット」の紹介と撮影賞の発表。
昔は「The winner is....(さてオスカーを手に入れるのは)」と言っていたのに、勝者とか敗者ではない、ということで、「The Oscar goes to....(オスカーの行く先は)」と言ってから名前を発表するようになりました。
美術賞は「アリス・イン・ワンダーランド」、撮影賞は「インセプション」
それぞれの受賞者が壇上で短い挨拶。俳優たちのテロップ見ながらの滑らかなしゃべりに慣れてるワシらとしては、普段裏方にいる彼らのたどたどしいスピーチにちょっと決まり悪さを感じる瞬間です。ひとりの受賞者は、拍手する観客に向かって「僕の持ち時間がなくなっちゃう」と拍手をやめてとスピーチ。秒刻みで進められるショーの時間制限によほどあせってたんでしょう。
次に観客(といってもみんな俳優などアカデミー会員)が総立ちで迎えたのが老優、カ-ク・ダグラス。あのマイケル・ダグラスのお父さんですね~。杖ついてよぼよぼなんですが助演女優賞の発表に出てきました。
その姿に会場はクスクス。どこまでが演技かわからないんですが、しゃべりもフガフガ。しかも発表の瞬間もじらしたり、ユーモアは健在。オスカーは「ファイター」での迫力演技のメリッサ・レオに。でも役柄とは別人のような美しさで出てきました。まあ、おばさんですが。大感激でスピーチレスでしどろもどろ。前にノミネートされたときも落ちたので、ほんとに驚きだったようです。
お次はジャスティン・ティンバーレイクとミラ・クニス。ジャスティンは最近「ヨギベア」のアニメで吹き替えをした
ことから、この短編アニメと長編アニメ賞の発表役に抜擢のようです。独特の間の取り方でしたが、2人とも楽しく紹介しました。短編アニメは「the Lost Thing」、長編アニメ賞は「トイストーリー3」が難なくゲット。
次は3年前に「ノーカントリー」で見事オスカーゲットのハビエル・バルデムと、「トゥルーグリット」に出演したジ
ョシュ・ブローリンの男2人組。ハビエルは今回外国語映画賞候補「ビューティフル」でも主演男優賞にノミされています。ここでは作品のコアとも言える、脚色賞と脚本賞を発表。脚色とはもともとある原作をいかに映画用にうまく書き下ろせたかで、脚本とはあくまでもオリジナルにこだわっています。ここで前者に「ソーシャルネットワーク」後者に「英国王のスピーチ」が選ばれ、いよいよ作品賞へのプレリュードかと会場がざわつきました。
発表が終わると司会のアンが男装姿でミュージカル。そこへジェイムスが女装して登場します。いつもより男らしく歩いてその癖がないことをアピール。しかも、この格好でいたら、買春癖で話題のチャーリー・シーンからメールが届いたとつぶやき、会場一瞬笑っていいのか無視するか迷った雰囲気に。
この空気を変えるべく(?)登場したのが、ベテラン女優ヘレン・ミレンとイギリスの人気コメディアン、ラッセル・
ブランド。2人は「アーサー」のリメイク版で共演がかないただいまい撮影中。外国語映画賞にちなんで、英国勲位を持つヘレンがフランス語で、ラッセルが外国アクセントの強い英語でそれをメチャクチャ通訳という設定。外国語映画賞は久々にデンマークで、2つの家族の愛と悲しみを描く「in a Better World」に決定。
2人のあとに登場したのはリース・ウィザースプーン。「リーガリーブロンド」から早10年。すっかり大人。というかおばさんぽくなって登場、のわけがいまいちわかりませんでした。最近の話題をワシが知らないせいか、もしかして予定してた女優のドタキャンで回ってきたか?という邪推もしながら、元助演女優賞の彼女が手渡したのは、「ファイター」でマークウォルバーグの年下ながら、兄を演じたクリスチャン・ベールの助演男優賞。あの「太陽の帝国」で子役で主役デビューして以来の偉業ではないかと思います。
ここまででまだ半分行ってないかも。
賞はまだ14、残ってます。
さてリース嬢に続いて現れたのは大きなオーストラリアペア、ニコル・キッドマンとヒュー・ジャックマンです。二コルは今年も主演女優賞にノミネート、ヒューはここ10年ブロードウェイとハリウッドのお気に入りスター。映画における音楽の役割の大きさを映像交えて語り、作曲賞の発表です。ここで「ソーシャルネットワーク」が小さいながらも2部門目の受賞。
続いてスカーレット・ヨハンソンとマシュー・マコノヘイが登場。なんとも息の合わない2人でしたが、ゆるい雰囲気で音響録音賞(sound mixing)と音響編集賞(sound editing)の紹介と発表。ここでは2つとも「インセプション」で、
流れにのりかけたソーシャルを圧倒。先に3部門を獲得します。
このあと、番組の放映権を10年延長契約したばかりのABC放送のCEOと、アカデミー科学技術のお偉方が壇上に立ち、中詰めのご挨拶。
また、別の日にすでに授賞式が済んでいる科学技術部門での式の模様と功績を、女優のマリサ・トメイが紹介。
そして中央から現れたのは英国女王、ではなくケイト・ブランシェット。メイクアップ賞と衣装デザイン賞の発表です。前者はケイトが気持ち悪い~と言って苦笑を買った「ウルフマン」、後者はさすがの「アリスインワンダーランド」でした。ちなみにケイトのドレスは毛糸ではなく、半袖が覗いたラベンダー色のジバンシーのクチュールドレスとバンクリフのジェエリーということでしたが、ワシにはエプロンのようにしか見えなかったです。秋葉原のメイドカフェの影響がここまで?なんちて。
さて女王にお引取りいただいた後は、これまた「ファイター」に出演したエィミー・アダムスと「プリンス・オブ・ペルシャ時間の砂」のジェイク・ジレンホール。
彼が司会のジェイムス・フランコから、「俺のパートナーと映画の中で寝た奴」と紹介されたのは、アン・ハサウェイと共演中の「ラブ・アンド・アザー・ドラッグス」のこと。
ここでは短編ドキュメンタリー賞に「Strangers No More」と短編実写映画賞「God of Love」が授与されました。はたしてワシらの目に入ることがあるんだろうかと思いつつ、同じように興奮してスピーチする彼らを見ていました。
ここでちょっと映画で遊んでみましたコーナーとして(?)、映画のシーンを使ったアフレコソングの映像。これが1番、個人的に楽しめたかな~。
ハリーポッターの親友ロンとハーマイオニのシーンで歌をアテレコしてるんですが爆笑。映画の中の口の動きがぴったりで楽しめます。他にソーシャルネットワークのジャスティン・ティンバーレイクたちのシーンや、トイストーリー3、トワイライトサーガなど、映像と歌詞とメロディーのマッチングに大爆笑していました。
爆笑が納まると、大スター中の大スター、オプラ・ウインフリィの登場です。いろいろドキュメンタリー映画の大切さを語ってからさっさと「Inside Job」にオスカー像を渡して退場していきました。この「Inside Job」は先の金融界崩壊の内幕にせまった面白そうな長編ドキュです。
つづいて歴代のオスカー授賞式の司会、ビリー・クリスタル。
「いや~あいかわらず時間制限が厳しくて押してるんですね~。と言うことで、ここでもう作品賞発表となります」など、結構長くしゃべり続けて、何の発表かと思ったら、映像上のボブ・ホープにバトンタッチ。
もう死んでるボブから今度はロバート・ダウニー・Jrとジュード・ロウの野郎コンビの登場。
ジュードが進行させる中ロバートがチャチャを入れ、しまいにはヤク中だった頃の過去までジュードに揶揄される始末。まあ2人の漫才はちょっと日本人にも通じるノリがあって面白かったかも。
彼らの発表したのは視覚効果賞「インセプション」と映像編集賞の「ソーシャルネットワーク」。ここでもこの2つがしのぎを削っています。
舞台には再びゴージャスなオスカー女優、ジェニファー・ハドソンが登場。「ドリームガールズ」での受賞暦からしてやはり主題歌賞の紹介です。
去年はパッとした曲がなく、映画からのヒットは少なかったからか、今年は2組だけがパフォームしました。
1組目はARロックマンと紹介されたAR・ラフマーンとフロレンス・ウェルチによる「127時間」中の曲「If I rise 」、そして2曲目はなんとあの主演女優賞女優グウィネス・パルトロウがカントリーシンガーとなった映画「カントリーストロング」から「Coming Home」を本人が歌いました。
この映画ぜんぜん知らなくて、彼女の歌に驚きました。今までも女優さんが映画の中で歌うものはいくつかあり、「コールマイナーズドウター」ではシシー・スペイセックが主演女優賞を獲得していますが…。カントリーは演歌と同じように素人でもそれなりに歌いやすいんでしょうか。
主題歌賞はこの2曲のどちらでもなく、「トイストーリ3」の「We Belong Together」でした。
続いては去年なくなった映画俳優や関係者の追悼映像。セリーヌ・ディオンが歌う中「タイタニック」のグロリア・スチュワート、デニス・ホッパー、「裸の銃」シリーズのレスリーニールセン、コメディ映画の巨匠ブレイク・エドワーズなどの肖像が流れ、しばしジーン…。
そしてハリー・ベリーが、去年亡くなったリナ・ホーンを改めて紹介。アフリカ系アメリカ人シンガーとして長くハリウッドに愛された彼女の映像と歌声が会場に響きました。
情景は一変して、過去に2度の主演女優賞を獲得したヒラリー・スワンクが紹介され、いよいよ大詰め、監督賞の発表です。監督賞を獲った作品はほとんどが作品賞も獲る割合が高く、会場が引き締まります。
プレゼンターとして去年女性監督としては初めて「ハートロッカー」でオスカーを手に入れたキャスリン・ビグロウが紹介され、候補の5作を紹介。
「英国王のスピーチ」「インセプション」「ソーシャル・ネットワーク」「トゥルー・グリット」 のいずれもが作品賞候補ですが、ここで「英国王のスピーチ」が監督賞を獲得。まだ2つ目ですが残りの賞を総なめする可能性大です。
このスピーチで監督のトム・フーパーは意外なエピソードを紹介。
彼のお母さんが、気が進まないながらもロンドンの友人に誘われて観にいった、アマチュア劇団の演目がこの英国王のスピーチ。帰ってきてから彼を起こして、「あなたの次の監督作品を見つけたわよ」と言ったそう。彼は今回も、壇上からママに感謝を捧げました。
続いて生涯功労賞ともいえる賞の受賞者3人が、「キッズ・オールライト」でレズビアン夫婦を熱演して、今回も主演女優賞候補のアネット・ベニングによって紹介され、ステージに。フランシス・コッポラ監督を中心とした3人に、会場からは惜しみないスタンディングオベーションでした。
さてさてここで去年の主演男優賞、ジェフ・ブリッジスが登場すれば、主演女優賞の発表です。毎年恒例で主演男優賞を獲得した者が女優賞のプレゼンターになります。
今回は個人的に礼賛するように5人の女優を紹介していきます。たとえカンペを見ながらでもそうは見せないのが俳優業。とても心のこもった紹介でした。大方の予想通り「ブラックスワン」のナタリー・ポートマンが受賞。今ノリにのってる彼女にオスカー像が渡されました。捨て身の役どころでも獲れなかったアネット・ベニングも笑顔で拍手を送っていました。
続いて去年ついにオスカーゲットのサンドラ・ブロック登場。リラックスした雰囲気で、5人の候補俳優たちをからかったり、持ち上げたり、ほんとに気の置けない人で内輪にも人気があります。
今回もノミネートされたジェフ・ブリッジスが2年連続で受賞かと、話題になりましたが、主演男優賞は、やはり「英国王のスピーチ」のコリン・ファース。去年「シングルマン」で逃した雪辱を今年果たしました。ジェフと逆パターンとなったのが皮肉なのか順番で仲良しなのか謎です。
コリンは、英国人らしいシャイな形式のスピーチとユーモアで観客を魅了。「これでキャリアがピークに来てしまった」とひとくさり。ぜひこの映画も観てみたいです。
そしていよいよ最後。(このブログも)
スティーブン・スピルバーグが登場し、10作品の映像が流れます。バックに流れるのはなんと「英国王のスピーチ」でのスピーチ音声。これはもう獲るしかないでしょ~
ということで、見事「英国王のスピーチ」が第83回目の作品賞に。計4部門でしたが、あけて見れば主要4部門ともいえる物。前評判の高かった「ソーシャルネットワーク」は3部門、「インセプション」は技術系で4部門獲得し、すこしバラついた感じはいなめません。
格式あるアカデミーは、いつもこうした英国風の重厚な映画にアカデミー会員が投票する傾向が続いています。特に今年は、去年興行的に成功しなかった「ハートロッカー」の真逆のタイプの作品となったようです。
個人的には「ソーシャルネットワーク」の早口演技が素晴らしいジェシー・アイゼンバーグをぜひ観にいきたい~。
では長々とここまでスクロールしてくださった方々、どうもありがとうございました!
PCの人はここをクリックするとアカデミー賞のときの画像が見られるよ by Google