【22,222HITフリーSS】しりとりをしましょう。 | よりみち小部屋。(倉庫)

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『よりみち小部屋。』の作品(一部)倉庫。

先ほど、22,222HITを達成したようです。
来訪頂いている方々、ありがとうございます!

きっと申告もないだろうなー。時期的にリクエスト受け付けも難しいかもー。と思っていたので、今回は予め短編をフリーSSとして用意しておりました。
やっと日の目を見た(笑)

「もらっていってやるぜー!」って方はどうぞ。転載もどうぞ。
記事に直接リンクいただくカタチでもOKなのですが、できればコピペで記事をお持ち帰り頂けるとありがたいです。
うん……うっかり記事消してしまったり……するかもしれないので……
(感想記事を消した時に、一つSSを削除していたことに今頃気づいた)

成立前。蓮キョ……?

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しりとりをしましょう。

ドラマの撮影中に急に降り出した雨。
それほど激しくはならないと思われていたのだが、一同の予想を裏切り、落ちてくる雨粒の大きさも量も一度に増し、豪雨となってしまった。
当然撮影は中断。
出演者たちはもちろん、スタッフたちも雨がかからないところに避難し、ぼんやりと空を眺めていた。

「すごい雨ですね……」
「うん、でも一時的なものらしいから、このまましばらく天気の回復を待つ、って監督がさっき言ってたね」
キョーコと蓮は並んで立ち、空を見上げていた。
空は厚い雲が覆っており、とても雨が上がるとは思えない。
「本当に止むんでしょうか」
「ゲリラ豪雨、ってやつみたいだから。一時間もすれば止むだろうって社さんも言ってたよ」
「そうですか……」

一時間ほどの遅れならば、役者とスタッフの頑張りで挽回できる範囲だ。
しかし分刻みのスケジュールをこなす蓮を何をするでもなく足止めさせる雨を、キョーコは少々憎く思う。
キョーコはとっとと止みなさい、と念を送りながら空を睨みつけた。
すると、そんなキョーコの様子を見た蓮がくすりと笑う。

「そんな怖い顔をしたところで、雨は止まないよ。あぁでも、おそれをなして雨雲は吹っ飛ぶかもしれないけどね」
「っ……!それはちょっとひどくないですか、敦賀さん」
「あ、ごめんごめん」
ぶうと頬を膨らませるキョーコに、蓮は笑いながら謝る。
そんなに笑いながら謝られても説得力はありません、とキョーコが返しても、蓮はおかしそうに笑うだけだ。
「ま、そんなにカリカリしないで。せっかくもらった休憩を楽しもう、ね?」
「休憩、って……することなんてないじゃないですか。この雨ですし」
ゆっくりご飯でも、と思っても、生憎撮影前に昼食はすませているし、お茶をするにもおなかの容量は空いていない。キョーコですらそうなのだから、蓮はいわずもがな、だ。

「それなら、何か暇つぶしになることってないかな?」
「暇つぶし、ですか……?」
蓮に問われて、キョーコはふと社から聞いた話を思い出す。

「そういえば敦賀さん、社さんから伺ったのですが小さいころはお父さんとよくしりとりをして遊んだそうですね」
「え?ああ、そうだけど?」
「じゃあ、暇つぶしに私としりとり勝負しませんか?」
キョーコの突然の提案に蓮は少し驚きの表情を見せたが、すぐににこりと微笑む。
「いいね。受けて立つよ」
「じゃあ、ルールを決めましょう。同じものを二回言うのははなしです。当然、最後に”ん”がついたら負けですからね」
「了解」
こうして、暇つぶしのキョーコ対蓮のしりとりが開始された。


「それじゃあ最初は……LMEで。敦賀さんは”い”でお願いします」
「”い”だね。いす」
「す……すいか」
「か……カラス」
「す……すいとう」
「う……うぐいす」
「あれ?また”す”ですか?す、す……すし」
「しらす」
「すだち」
「チリソース」
「すきやき」
「キス」
「ステーキ」
「キリギリス」
「す……スタート」
「トス」
「す……巣箱」
「コース」
「す……スペアリブ」
「ブース」
「す……ストライク」
「クラス」
「す……す……スーツ」
「ツーピース」
「す……す……すみれ」
「レース」
「す……す…スタジオ」
「オートフォーカス」
「す……」

ポンポンとテンポよく進んではいたのだが、だんだんキョーコが詰まり始める。
「敦賀さん……さっきから私、”す”しか回ってきていない気がするんですが……」
「そうかな?」
「そうですよ」
「ま、勝負は勝負だからね。コース、の続き、どうぞ?」
「むー……す、す……すずめ」
「メス」
「す……スリ」
「リス」
「す……スピード」
「ドレス」
「す……す……スリム」
「ムース」
「す……す……スリッパ」
「パス」
「す………す…スープ」
「プライスレス」
「す……す……スキーヤー」
「八咫烏」
「うわぁ敦賀さん、ヤタガラスなんてよくぱっと出ますね。って!また”す”じゃないですか!」
「あれ?そう?」
「それに、スキーヤーって、伸ばす音が入るんですからスタートは”や”じゃなくて”あ”でお願いします」
「そうなの?」
「ひらがなで書くと、すきいやあ、になりますから」
「そういうものなんだね……じゃあ、アイス」

一生懸命ひねり出して答えるキョーコに対して、さらりさらりと答える蓮。それにキョーコはまた頬を膨らませた。
「敦賀さん、さっきから全部”す”で終わるように返してきているじゃないですか!」
「そうかだったかな?」
しらばっくれる蓮に、キョーコは食って掛かる。
「そうなんです!私、さっきから”す”のつくものばかり考えさせられてるんですから!」
「気づかなかったな……ごめんね?」
キョーコの怒りを蓮はさらりと躱す。キョーコはますます頬を膨らませた。
「敦賀さんがそう来るなら、私にも考えがあります!」
「何かな?」
「スイス!」
キョーコはびしりと人差し指を蓮に向ける。

「さ、”す”で返りました。敦賀さん、どうぞ」
得意げに言うキョーコに、蓮はにやりと人の悪い笑みを返す。
「スペース」
「えっ?!」
「だから、スペース。さ、最上さん、”す”でどうぞ」
あまりにもあっさりと「す」で返されて、キョーコは声が出ない。それを見て、蓮はますます笑みを深くする。

「……”す”で返すなんてひどいです敦賀さん!……ストレス!!まさに今ストレスを感じてます!さぁ敦賀さん、”す”でお願いします」
「ストレスを感じさせちゃってるのは申し訳ないけど、これは勝負だしね。手加減するつもりはないよ。……スーツケース」
キョーコは勢い込んで言うが、蓮はあっさりと会話の流れのまま返す。

「またあっさり……えーっと、す、す、す、す……」
キョーコはうーんと雨のやみそうにない空を見上げながら真剣に考える。
蓮はその様子を、おかしくてたまらないという様子で見守る。
「……もう、降参する?」
蓮が尋ねると、キョーコは蓮を振り返り、即否定する。
「降参なんてしません!」
「そう?」
蓮がくすくす笑い出したので、キョーコはぷいっと横を向き、頬を膨らませながら言葉探しに戻る。

「えーっと、す……す……あっ!スパイス、でどうですか?」
「なるほどね」
蓮が笑いを止めて感嘆の声を上げたので、キョーコは胸を張った。
「どうですか敦賀さん、もう”す”返しできないでしょう?」
「んー?じゃあ、スフィンクス、で」
「え?」
「だからスフィンクス。エジプトのピラミッドの前にいる」
固まったキョーコに蓮が説明を始めると、キョーコはぶうっと頬を膨らませた。
「そのくらい知ってます!もうっ!また”す”じゃないですか!」
ぷりぷりと怒りながら、キョーコはまた思考の森に入り込む。
蓮は笑いをこらえながら、その様子を見守った。

「あっ!!!スマホケース!どうですか敦賀さん!!」
これまでよりももっともっと長いことかかってひねり出した言葉を自信満々に言うキョーコ。
しかし蓮は落ち着いたものだった。
「ああ、また”す”だね。スローロリス」
「え?」
「知らない?スローロリス。動物でいるんだけど。確かサルの仲間だったかな?」
「……知ってます」
「あぁ、ひょっとしてまた”す”に返っちゃったのがお気に召さなかった?ごめんね?」

ちっとも悪いと思っている様子のない蓮に、キョーコの怒りは爆発する。
「敦賀さんのいじめっ子ーーーーーー!!もう絶対負けませんからーーーーーー!」

こうしてキョーコと蓮のしりとりは、あまりに白熱していたために周りは誰も止めることができず。
雨が止んで撮影を開始するためにスタッフが2人を呼びに来るまで小一時間続いたのだった。

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「す」で始まり、「す」で終わる言葉探し、なかなか大変。
あとはステーキソース、ステータス。そのくらいしか浮かばなかった……


のったりマイペースブログでありますが。
今後もお付き合いいただければ幸いです。