「ノードストロームというお店では、商品として扱っていないものの返金にも応じる」という伝説というか神話があるそうだ。で、そのことが他の本で紹介されており、タイミング良く古本屋で見つけたときに買い、紹介されていた通りの事がプロローグや第一章に書いてあったので、それだけで「読んだ気」になり、そのまま本棚でホコリを被っていた本。

数日前、ちょっと気になって取り出し、時間のある時に読んでみたら、一気に読めてしまった。ところどころ覚えていることがあったので昔もある程度読んでいたのかも知れない。が、今回のように脳に刺さってくるような感覚はなかった。

決して「売っていないものの返金に応じる」という事がこの本の主題ではない。マネジメントについての本質が見事に書かれている。
よくあるプロジェクトマネジメントだと、納期だ、コストだ、というが、これは人のマネジメント。いや、マネジメントというと、イメージが違うかも知れない。この本のサブタイトルにある「リーダーシップ」という方がしっくりくるかもしれない。

印象に残った点がいくつもあるが、そのうち三点をを挙げる。

最初は、つい先日「カンブリア宮殿」というテレビ番組でドモホルンリンクルで有名な再春館製薬の会長が言っていたことと同じような事が書いてあったこと。要するに働く人が業務に集中できるよう後方支援をしっかり行う、ということ。本の中ではマネジメントによる支援がないために忙殺され、顧客の信頼も表居る様が例示されていた。更に「従業員には間違いはない。問題はマネジメントにある。」の一言は、ITプロジェクトの失敗原因にも通じる部分があり、プロジェクト形態でないマネジメントとも通じるところがあるのか、というのが驚きであった。

次に、人の採用の仕方。職務を明確に規定して、それに合った人材を採用するし、募集にもその規定を載せること。例えば、職務に必要がないのに学歴等で敢えて敷居を高くするようなことはしないそうだ。
当たり前だと言えば当たり前かもしれないが、そうでないのが世の中。このやり方、私の咀嚼ではRFPの人材募集版といったところか。面白そうな手法である。
なお、就業規則も面白い。ここでは紹介しないが、「こんなにシンプルで定性的な書き方でいいの?」と思うくらいに短い。が、本質をズバッと突いている。

最後に、経営思想。ビジョン、ミッション、エンパワーメント、ベンチマーキングなど、経営的なキーワードが多い。私がITコーディネータという資格を取得すべく勉強していた頃、初めて知った言葉が結構出てきている。ITコーディネータの資格試験の学習の副読本くらいにはなるのでは?とも思う。
この本の日本語版の初版が1996年8月。原書は1990年以降で、日本語版より数年前に出ていただろう。すなわち1990年代の前半。日本ではバブル経済が終わり、不景気に入った頃だろう。その頃の思想が今なお通用するんな時に海の向こうでは既にこんな本が出ていたのが驚きであった。


これ以外にも参考になる内容がたくさんあった。特に、カンブリア宮殿で見かける、顧客満足度の高い企業が行ったり掲げていることと重なる部分も多い。
自分の経験とも合わせて、もう少し深く読み直してみたいと思う。


サービスが伝説になる時―「顧客満足」はリーダーシップで決まる/ベッツィ・A. サンダース

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