- あめふらし (文春文庫)/長野 まゆみ
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あらすじ
きみがそうやって生きているのは、おれがまだタマシイをつかまえているからなんだぜ――ウズマキ商會を営む橘河にタマシイを拾われた岬。蛇を捕まえたり、昭和32年生まれの少年に傘を届けたり、アルバイトとして様々な雑務を引き受けるが、背後には常に怪しげな気配が・・・。時空を超えて描かれる8篇の連作和風幻想譚。
長野まゆみさんの作品に惹かれ、「夜間飛行」に続いて読んだのがこの「あめふらし」です。
全体的に雨のノイズがかかっているような作品で、これはこうなんですよ、あれが正体なんですよ、というような形は一切無く、結局あれはこうだった・・・んだよなぁ・・・という形で読み終えましたが、正しい読み方だったのでしょうか?(汗
でもですね、そのノイズが心地いい作品であることは間違いない。
和風な幻想譚、ちょっと妖(あやかし)の混じるような話になるとどうしても梨木香織さんの「家守綺譚」を例に挙げてしまいますが、家守綺譚と似たような雰囲気はありつつも違う方向を向いて描いてあります。
家守綺譚では比較的これはこうですというようなニュアンスを掲げていて、こうなるときれいでしょう?というような読み方ができるのですが、
あめふらしではこれはこうなのかもしれない、という場所で終わらせてしまう。その後のことや物語の中核でも何か秘密を隠して終わらせてしまっている。でも全くの秘密ではなく、雨の中でかすかに聞こえる話し声を聞こうと思えば聞こえる、そんな感じがするから素敵です。
このノイズが心地よくて、でも物悲しくて、それがこの魅力だと思います。
「あめふらし」というのは「もの」に宿るタマシイを捕らえることを生業とする職業・・・ということでまぁ正直まったくもって なるほど、わからん な設定なわけです。が、この小説においてこのあめふらしという職業は大きく意味を持たないというか、もちろんあめふらしがいなければ始まらないことなのですが、あめふらしがどういったものかというのは重要ではない。
では何が中核になるのかを考えながら読んでいたのですが、僕には雨の中の声を聞き取れませんでした。
湿り気の含んだ作品で、じめっとした世界から離れられない、という感じで読みましたが、なんてことはない
それだけ楽しんで読んでいたということですね。
また少し時間を空けて再読したいと思える作品でした。
ふぅ・・・
でね、これに惹かれてまた手にしたのが長野さんの同じような感じの作品だって言うね。。。
何かに興味を持つと気が済むまで離れようとしないから困る。
困る。