夜間飛行 (河出文庫―文芸コレクション)/長野 まゆみ
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あらすじ

偶然手に入れた雷卵石は特別遊覧飛行の乗車券だった。プラチナとミシェルはこの不思議な出会いに導かれ、空を巡る。そこで彼らは鳥の声が聞こえるカバンを持つ老紳士や、ちょっと変わった品物を売ってくれる男に出会った。紳士のカバンに興味を持ったふたりは、こっそり後をついていく。

彼らの見る世界を懐古的な言葉で魅せる冒険ファンタジー。


以前ブロガーさんが読まれていた本を探しているのですがなかなか出会えず、とりあえずその作者さんを知ろうということで手にしたのが

長野まゆみさんの 夜間飛行です


夢の中を重力に逆らって歩いているような雰囲気のある作品でした。

基本的にはファンタジーの世界で、出てくるものがどれもゆらゆらと光を帯びているような感じがしてまっすぐなファンタジー。

でもなにかこうあってほしいという願望のようなものを感じさせてくれる作品でした。


なんといってもプラチナとミシェルの関係がいいんですよ。

こうどこか一昔前のアメリカンムービーに出てくるような子供たちで、ちょっと小生意気な感じ、それでいてこどもっぽい純粋さを持ったふたりが自分の男としてのプライドを持ちながら会話をするのが微笑ましい。

こどもっぽくないこどもって僕は好きじゃないのですが、どこか「らしさ」が見えてしまうとかわいらしく見えてしまうものですね(笑


そして色彩豊かな世界観。

月の光で黄金色にかがやくタンポポ酒

夜空から降る1カラットのシリトンダイヤモンドの流星群

檸檬色に煌く飛行場

薄荷水が淡青色の結晶になったスノードロップ

などなど

長野まゆみさんの魅せる景色を静かに楽しむのもこの小説の面白い読み方のひとつだと思います。



読んでみた印象として、この人は宮沢賢治の作品に影響受けているんだろうなぁと思わせる人物像、文体、表現がなんかいいなって。実際宮沢賢治さんのことを尊敬しているようですが、、、うん、なんかもろもろ含めていいなって。


実はこの作品を読んだあとすぐに長野まゆみさんの別の作品を読んだのですが、そこでは舞台を大きく変えてがらっと印象の違う作品を描いていました。

でも長野さんの冷たい地面を裸足で歩くような空気感はあって、言葉の使い方や表現はひとつの手法に過ぎず、結局はその世界にどうやって入り込ませるかなんだなと感じさせられました。


ふぅ…


ということでまだいくつか読んだのに感想を書いていない作品がありますが、のんびりと書いていこうと思います。