強運の持ち主 (文春文庫)/瀬尾 まいこ
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あらすじ


会社での付き合いに慣れなかった吉田幸子は会社をやめ、アルバイト情報誌に載っていた占いの仕事をはじめた。もともと占いに興味があったわけでなく、営業で鍛えた話術となにより割のよかった時給にひかれて選んだのだが、『ルイーズ吉田』の占いは当たるという評判だ。はじめは真面目に占い本を手に占っていた吉田だが、相手の表情をみることで喜ぶ「答え」を探し当てる適当かつ適切な占いをしていい気分で帰ってもらうというスタンスで占うようになっていた。

買い物先はどちらのスーパーがいいのか聞きに来た小学生の男の子は吉田の占いを信じ、いつの間にか父母どちらを選べばいいのかという大問題を尋ねる。

何度占いが外れても通い続ける女子高生は振り向いてほしい相手との関係を秘密にする。

人の終わりが見えてしまう不思議な力を持つ大学生は、吉田のアシスタントとして一方的に彼女の横に座り、ただ人の終わりを見ては吉田にだけこっそり教えていたのだが、占いにきた女性にとある終わりを告げる。

正式なアシスタントを募集し吉田と間逆の性格の竹子に決めたのだが、彼女の正直さがあだになりフォローに四苦八苦する。

占いを通じて出会う人とのつながりにほっこりさせられるやわらか小説。



温かみを感じるやさしい小説でした。

嫌味なところも、黒い部分も、痛い部分もない、ほんわかストーリーです。

一方で、吉田のインチキっぽい占いの毒づいた部分、なんとなく抱いている占い師の裏側みたいなものを感じる部分があって小説を引き締めているような感じがあります。

僕自身は占いは信じたり信じなかったりで、どちらかといえばルイーズ吉田式の占いに喜び帰るタイプではあると思いますが、占い=統計学あるいは占い=カウンセリングという認識なのでどこか文書の端々でふふんとなる部分がありました。


4つの話から構成されていますが、どれもやさしさで包まれたような話で癒されます。

出てくる人みんないい人で、なんかこんな人が集まってくるとは…強運の持ち主とはもしかしてこのこと?なんて思ったり。

ただひとつ気になったのは……

今までにも関西弁(を話す)の小説というのは読んだことがありますが、3つめの終わりが見えてしまう青年の関西弁にあら?って。

関西弁て文章でがっつり書くとあんな感じなんだなぁって。

妙な違和感を感じるのはやっぱり関西弁=方言だと思っている人間だからでしょうかね。



癖がない物語だったので苦もなく読めます。

少々ぬるま湯な感じと、各話のオチが思ったとおりの展開になる部分がありますが、ある意味こういったほっこり小説のTHE・王道かもしれません。



ふぅ…

なんだかんだで瀬尾まいこさんの小説は3作品目でした。

どれもほっこりタイプの作品で、何か迷子になったら辿り着きたい場所、そんな感じがします。