新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)/森見 登美彦
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あらすじ

森見登美彦が教科書にも載るような作品たちを不毛な大学生の禍々しい境遇になぞりながら展開していく異色作。あるものは逃げるように山へ移り唾を吐き、あるものはブリーフから逃れるために京の町を駆け抜け、またあるものは美しい女性にその身を奉げる。

過去の名作を迷作に、いや新作に変えた森見テイストをどうぞ。


収録作


山月記 後悔ばかりの人生から逃れ、大文字山で唾を吐きかける獣と化した大学生。

藪の中 今の彼女と昔の彼氏をキャストに現彼氏が撮影し、周りから非難を浴びた映画の裏側。

走れメロス 真の友情を示すため古都を全力で逃走する大学生。

桜の森の満開の下 恋人の助言で書いた小説で一躍人気作家となった男の悲哀。

百物語 百物語をするために知らぬもの同士が寺に集まり、ひとりの男について話し始める。



この作品を読んで、改めて作家さんとはすごいなぁとおもいました。

森見さんのアレンジの仕方もすばらしいのですが、あんな大胆なアレンジをしてもなお崩れない原作の力には驚かされます。

この作品を読むにあたり、原作も読んでみました。おっと、百物語は読んでいないのですが。

「藪の中」と「桜の森の満開の下」は初見だったのですが、どちらもすごい作品ですね。

昔の作品てどこかおどろおどろしくて、地の底からのっそりと立ち上がるような感じなのですが、どちらもその風貌を保ちながら性格の違いを感じられてすごい…と。

正直どちらもすっきり好きな僕としては困惑してしまう終わりなのですが、それでも作品の力を感じるとは…


と、原作のことを話し続けてもなんですので本書へ。


どの話も見事なのですが、やっぱり表題作の「走れメロス」は秀逸である。

ブリーフ一丁で踊ることから逃れるために、友人との信頼を解かぬために、京の町を逃げ回る大学生。森見さんのドタバタ劇が短い話に見事に詰め込まれており、スピード感あふれるものになっています。

他の作品も面白いのですが、原作の闇を秘めた感じ、暗い感じのある原作なので、アレンジもそういった部分が色濃く描かれています。

だから走れメロスの喜劇と並ぶと少し落ち着きすぎてしまったんじゃないのかと。

いやいや、それでも十分森見色なのですが。


それにしても…芽野四郎は激怒した。 はある意味反則的な始まり方である(^▽^;)


ふぅ…

そういえば、アニメでも走れメロス等有名な作品がリメイクされていますね。

もちろん新釈ではないので、ドタバタコメディーはありませんが、今のところ走れメロスのアニメは良かったんじゃないかと。

メロスの舞台、メロスを書いた人の人生、それがうまくリンクして舞台の展開にあわせて話も進んでいくという脚本は面白かったですよ♪