
- レインツリーの国 (新潮文庫 あ 62-1)/有川 浩
- ¥420
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あらすじ
大好きだったあの本の感想が書かれた個人HPを読んだとき、不思議とその人にメールを送っていた。そこから続くメールのやり取り。共通の趣味、言葉の使い方、メールから伝わる雰囲気。いつしか伸はひとみに会いたいと思うようになった。意を決して会うことを提案すると、ひとみはどうしても会えないという。頑なに拒む彼女には、ある秘密があったのだ。
ふたりを挟む大きな壁を少しずつ崩していく、青春ラブストーリー。
これは……
アツい男性と、控えめな女性の恋愛物語なのですが…
いちいち伸の読んでいるこっちが照れてしまうような発言の数々、熱すぎる男が故の暴走に、本を何度か閉じかけてしまいましたが、決して面白くない作品ではないのでしっとりと読み終えました。
そもそも自分たちの発言を『青春菌』のせいにしてしまうような人たちです。ちょっとやそっとの恥ずかしさや熱さなんてものはあってないようなものなのでしょうね。
僕は聴覚障害者の作品が結構好きで というと少し語弊が生まれてしまいそうですが、強制的に閉ざされた静かなふたりだけの世界が好きなんですよね。
映像作品では「君の手がささやいている」とか、「オレンジデイズ」とか。
ということでこの作品を手にしたわけですが、聴覚に障害を持った人にはどのような問題があるのかということも説明されていて、そうか、そうだよなぁと伸のような気持ちで読み進めていくことができます。
ひとみは障害を持っているということで卑屈になり、もどかしさや苛立ちは伸のそれほど激しくは無いものの、確かに感じてしまう。でも、障害を持っているということが健常者とどう違うのかはやっぱり健常者には分からないということも分かる気がします。
でも、それは健常者だって他人にはわからないだろ?っていう感覚があるのだということも伸は作中で言っています。
つまり結局のところその人が持つコンプレックスや問題は、その人にとっては大きな壁だというだけで、他人からすればなんだそんなものとなぎ倒してしまうよなものばかりなんですよね。
それは互いに慰めて癒すものではなく、激しくぶつかり合うばかりでもなく、ただ、相手を知るということがどれほどの効力があるのかっていうことを改めて感じる作品でした。
ふぅ…