
- モノレールねこ (文春文庫)/加納 朋子
- ¥530
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あらすじ
『モノレールねこ』
小学生の僕は、我が家に迷い込んできた野良猫に不思議と興味が沸いてきた。ある日その猫に誰かが首輪をつけたようで、僕はその首輪に手紙を挟んだのだった。それからその猫をモノレールねこと名づけた「タカキ」との文通がはじまったのだが、モノレールねこが車に轢かれてしまい、タカキとの交流は閉ざされてしまった…
何かを失った人々の日常をゆっくりと静かに描いた短編集。ちょっと不思議な感動物語に続く扉を開けてみてはいかがでしょうか。
収録作品
『モノレールねこ』
『パズルの中の犬』
『マイ・フーリッシュ・アンクル』
『シンデレラのお城』
『セイムタイム・ネクストイヤー』
『ちょうちょう』
『ポトスの樹』
『バルタン最期の日』
この帯には、まさかザリガニに泣かされるとは思わなかったというようなことが書かれているのですが、言い過ぎではない力がここにはありました。
どれも涙腺に訴えかけるような物語で、いやな言い方をすればちょっと卑怯なお話もちょこちょこっとあるのですが、それが苦ではないところがこの本の良さではないでしょうか。
僕のおすすめは、ねこが手紙を運ぶ『モノレールねこ』、突然の両親の死と残されたダメ男の叔父との生活を描いた『マイ・フーリッシュ・アンクル』、最低な父親の思い出と隠された想いを繋ぐ『ポトスの樹』。
あ、ザリガニが泣かせてくれる『バルタン最期の日』ももちろんよかったですよ。
ちょっと突っ張ったザリガニの主観で語られるというなんとも可笑しな物語ですが、最期にはばっちり決めてくれましたよ( ´艸`)
こうやってちょっと不思議な世界観も感じられる面白さがあるのもよかったです。
これらの作品には何かを失くした人、そして素敵な心を持った人が必ず現れます。
そのふたつの要素がうまい具合に溶け合って涙を流させてくれるわけです。
短編集のためすぅっと話が流れていくので号泣とまではいきませんが、どれもじんわりと心を滲ませる作品が1話目から並んでいます。
短い話ですがじっくりと読みたくなるそんな本です。
ふぅ…
この短編に出てくる人々にはそれぞれ物語にかかわってくる秘密があります。
秘密というものはやっぱり内に秘めておくものだよなぁって再認識させられました。
僕は秘密はがっちり守るタイプ(実際は聞いたことすら忘れていることのほうが多い…)なのですが、友人は案外おしゃべり。
口堅そうに見えたのですが…見掛けによらずってタイプです。
でも、彼は自分の秘密も秘密に出来ずしゃべってしまうタイプだから憎めないんですよね。
だから滅多なことは言えません。……滅多なことなんてそうそうないのですがね。
かっこいい秘密はなく、恥ずかしさやかっこ悪い秘密ばかり。
どうやら僕はこの物語の主人公にはなれそうもありません(^▽^;)