頭のうちどころが悪かった熊の話/安東 みきえ
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あらすじ


全7編の動物たちと人生について考える短編寓話集。


『頭のうちどころが悪かった熊の話』 

『いただきます』

『ヘビの恩返し』

『ないものねだりのカラス』

『池の中の王様』 

『りっぱな牡鹿』

『お客さまはお月さま』



以前から読みたいなぁと思っていた作品をやっと読みました。

これはこどもっちに向けて書かれた作品なのでしょうが、大人が読んでもふぅっと息をつける作品になっていると思います。

それぞれが短い話なので、読んでしまおうと思えばさくっと読み終えてしまう絵本のような作品なのですが、さくっと読んでしまっていいの?って思わせるようなテーマが全編を通して掲げられています。

寓話集ということで、少々ブラックジョークのような様子も見せるのですが、絵本のような言葉の編み方によって、やわらかい雰囲気が前面に出た寓話集となっています。


・・・いや、でもじっくり読んでみると結構怖いというか、ぎくりとさせるような話もあるのですが、そう感じさせないところがいいのかな?


僕が好きなタイトルは『池の中の王様』と『りっぱな牡鹿』です。


『池の中の王様』は自由を求めるおたまじゃくしが自由を手にすることの容易さと難しさを知る旅が描かれています。おたまじゃくしのハテの発想はまさに自由そのものなのですが…


 「自分の目でしか見えないんだよ。何がホントかなんて、だれにもわかりっこないじゃないか。でもわかっているのは、ぼくの世界ではぼくが王様ってこと。ほら、その証拠に……」

ハテは目をぎゅっとつむった。

「僕が目をつむりさえすれば世界はなくなる」


『りっぱな牡鹿』は意味のあることを捨て、意味の無いことを手にすることで気楽に生きていこうとする牡鹿の物語です。意味の無いことをしようと心がけていくのですが、その道はけわしく…


 「意味なんてもの、もともとないんだ。生きていくのに、意味なんていらないんだ。ただ生きているだけでじゅうぶんなんだ」

牡鹿は決心した。

「ぼくはこれから、意味のあることはいっさいしないことに決めた。いっさいだ。いっさいしないんだ」



寝る前にひとつ、読んでみるのもいいかもしれません。


ふぅ…

それにしてもこの本の挿絵、雰囲気はとってもいいのですが…

熊がちょっと…なんていうか…なんか違う意味で怖いです…(^▽^;)