
- 旅のラゴス (新潮文庫)/筒井 康隆
- ¥460
- Amazon.co.jp
あらすじ
文明が失われたこの地では、その代償として様々な能力を得た人々は「集団移転」「壁抜け」などを生きる糧としていた。そんな世界をひたすら旅し続けるラゴス。集団移転で民を救い、持ち前の頭脳で国を治める。奴隷の身になったり、先生として文明を再構築したりと波乱万丈な人生の先にはなにがまっているのか。
僕の好きなジャンルのひとつである「旅もの」です。
ここに出てくる能力は、一見地味です。炎を操れるんだぞ!!とか、体がゴムのように伸びるんだぞ!!というような派手なものではありません。つまり、能力が主たる世界ではなく、ただのツールである。まさに文明が失われた世界に突如としてうまれたツール。
それは個人に与えられた特殊なものもあれば、万人が使えるものもある。
いや、もしかしたらどの人もコツさえつかめればここに登場する能力が使えるようになるかもしれません。
それは便利で、魅力的な能力ですが、人々は結果、文明の力を求め始める。
人が機械に頼る世界、それが楽な世界。
この本の世界では数百年、数千年後にはまた再び文明が失われる日がくるのではないかと思います。
これは作者の今の僕らの世界、文明が発達しているこの世界へのアンチテーゼなのではないか。そんな風に感じ取られる作品でした。
ラゴスの才、波乱万丈な生き方も面白く読めます。
ラゴスは淡々として冷めた人間ですが、常識的で落ち着きがある。だからどんな立場になろうとも己の生き残る道を見つけていきます。
間違いなく英雄としての器が備えられた人物。だからこの物語に力強さのようなものがあった気がします。
旅ものとして、「キノの旅」を読んだことがありますが、キノも淡々として冷めた人間である。確かに英雄としての力はあったものの、子どもであるためかまだラゴスのような風格はなかった。
年を経るということはこういうことか、なんて感じたりもして。
ひとつの世界の始まりと終わりを見れるようなそんな作品でした。
ふぅ…
これは旅先での出来事ごとに話が進んでいくので、20ページくらい毎に話が展開していくわけですが、ちょうどその一節分が僕の通学時間なのです。
短編集も同じようなページ量ですから、通学時のいいお供になるわけです。
実家へ帰省するなんてときは大抵2時間30分くらいなのですが、それは本一冊を読むにはちょうどいい。
だからそうですねぇ、本が区切りよく読み終える時間、そして本が一冊読み終えるまでにつける時間までなら我慢できますかね。
でも本音を言うのであれば、どこでもドアがほしいです(^▽^;)