薬指の標本  小川洋子


薬指の標本 (新潮文庫)/小川 洋子
¥380
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あらすじ

『薬指の標本』

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡、その人の思い出の品を標本してくれる場所がある。私はそこで働いており、そこの主人である標本技師に恋をした。ある日彼から靴をプレゼントされ、毎日ずっとその靴を履くように言われ…。

奇妙なふたりの愛、この恋愛の先にあるものは…。


『六角形の小部屋』

どこか不思議な雰囲気を持った女性、ミドリさん。私はミドリさんのことが気になり始め、その人の後をつけていくと見慣れぬ道のその先の社宅に入っていった。その前まで行くと、ひとりの男性に中に入るよう促され、覗いてみると中には六角形の小部屋があった。人々はその小さな部屋に吸い込まれるように入り、それぞれの時間を気が済むまで過ごすのであった…。



短編小説2編が入っています。僕は小川洋子=博士の愛した数学、というよりもそれしかしらず、しかも知っているのは映画のみ。

ということで初小川洋子だったのですが…この人の作品はこういった文章なのかと少し驚きました。確かに博士の愛した数学も妙な雰囲気がありましたが、世界が独特な気がします。

いや、僕は恋愛小説(これを恋愛小説というのかわかりませんが)を読むことが無いのでこういった世界観はよくあるのかわかりませんが…

僕の少ないボキャブラリーで言うのならば、幻想的な官能性…かな?


どちらも幻想的な世界観が展開されています。。。いや、世界だけでなくて文章や表現方法が幻想的なのかな?薬指の標本では特にその文章の魅力が出ていました。

読んでいて痛みやそれにともなう美しさと恐怖が頭の中でビジュアルとして浮かび上がるくらいです。


設定や世界は六角形の小部屋の方が好きなのですが、文章の素敵さは薬指の標本の方があり、結果的に後者の方が好きなのかもしれません。でも…僕は少し痛みを想像しすぎたようで…しかも物語りもちょっと怖くて…



どちらも魅力的な『場所』が物語の中心です。標本室、六角形の小部屋、ともに奇怪ではあるものの、引き込まれるような力があるのは少しうなずけます。


初めはこの幻想的な描写が苦手だったのですが…気がつけば次に手にした本も小川洋子。

不思議な中毒性があります。


ふぅ…

でも…もう博士の愛した数学は本では読まないのだろうなぁ。