
- プリズムの夏 (集英社文庫)/関口 尚
- ¥480
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あらすじ
町の小さな映画館で受付をしている女性がいる。彼女(松下さん)は凛とした美しさを身に纏っていたが接客業にしては無愛想。しかし僕らは次第にそんな彼女の事が気になってきていた。
それから間もなく、ネット上でうつ病の女性の日記を見つけたのだが、その女性が松下さんではないかと疑い始めるのだった。
高3の夏、僕は彼女に何が出来るのだろうか。。。
このあらすじでは恋愛小説っぽいのですが、主人公(植野)が松下さんに恋を…しているのかな?背表紙のあらすじでも植野が彼女に恋をしたというような表記があるのですが、なんとな~く恋とはまた少し違うレベルで話が進んでいるようにも…といいますか、僕は完全な青春小説として読み終えました。
確かに恋をしているような書き方はあったし、もしかしたら好きになったと言うような直接的な表現も…あったっけかなぁ?(ちゃんと読んだのかい(^▽^;))
なんというか、好きだという言葉、恋愛という表現では表せない感情があるように感じたんですよねぇ。
僕が鈍いだけなのかもしれないし、読み込みがあまいのかもしれませんが。
ただ、その恋愛を根底にしていない雰囲気がよくて、読んでいてすっと入り込んでくるようなそんな世界でした。
ん~…高3にしては大人びているとも言えるのですが。そもそも僕が感じた好きではあるけれど恋愛とは少し違う感情というあたりが妙に大人っぽすぎていますね。少なくとも彼らは、僕の4年前では考えられないほどの行動力と思考回路を持っています。
まぁなんてったって高3男子が大学院生にそういった感情を持つあたりがもう大人!
さて、植野くんは映画館の女性にどうやら恋をしたらしいです。
この気持ち、なんとなくわかります。というかありますよ、そういった出会いと言いますか、感情の生まれかたは。
駅前の本屋さんのあの人…いい感じなんです。ちょこんと小さく、他の人よりもひとサイズ小さいエプロンをかけていて。声はしっとりとした声ですこしとろみがかっているのだけれど決して不快ではない。
で、バカな男は見栄を張るわけです。必死になって本を読んでは次のを買いに本屋へ足を運び、その人がレジにいるときを見計らって足を進める。
普段は読まないような本を買ってみたり、わざわざ専門書を注文してみたり。
ん?いやいや、そんな不順な動機で本を選んでいる訳はありませんよぉ~その男もきっと。
うん、読みたい本だから…いや、読んでもいいかなぁと思える本だから手に取るんです。
でもそんなバカな男は小心者で声なんてかけることは無いんだ。
そうですねぇ、せいぜいカバーをつけてくださいとか(そういえば昔はカバーを付けない派だったのですが、電車の通学時に読むようになってからは本が傷つかないようにカバーをかけてもらうようになりました)、袋はいいです(エコアピール?)とか言うくらいなわけです。
はたして自分はあの人の記憶に残っているのだろうか、つまり相手はこちらがよく来る男だという印象を持っているのだろうか、あるいはただの買い物客であり、あの人からしてみたら黒い影絵のような映像しか映っていないのだろうか。
そんなことを考えながら数十円のおつりを受け取り、何事も無かった時間としてこの一瞬を通り過ぎるわけです。
なんて書いていると遠くの方からの冷たい視線が怖くなってくるので終了。
しかし、こういった店員さんにはどうやって声をかけるのでしょうか。
小心者は考えます。
だって、突然アドレスを教えてくださいって店内で聞けませんし、紙にアドレスを書いて渡すなんてさりげないことも当然出来ない。じゃぁそっと置いてきてしまおうかなんて考えるものの、ここは中学校の下駄箱じゃあるまいし、さらりとハンカチを落とすかのごとくレジに置いていこうと考えるもきっとこう話しかけられるでしょう。
「これ、忘れていませんか?」って。
ふぅ…
昔、ケーキ屋さんで働く女性が気になった男がいました。
週末になるとケーキを買いに行くのですが、男はその出会いを無かったことにしたのです。
その男は最後に一言こういったのでした。
「出会った場所が悪かった。もし彼女が駄菓子屋で働いていれば…」