
- 中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)/ニコルソン ベイカー
- ¥998
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これは以前、岸本さんのエッセイを読んで、彼女に惚れ、岸本さんが翻訳した作品も読んでみたいと思って買ったものでした。
簡単なあらすじ
サラリーマンが中二階にあるオフィスへもどる途中の数十秒間の話。
以上。
ふふふ。。。不思議でしょ?( ´艸`)
僕もこの本の持つ不思議さと技巧に魅かれて選びました。
電車は最寄り駅に着き、込み合う電車の中をすり抜け、いつもと同じように自分が座っていた場所に物が落ちていないかを確認し、さらにポケットをポンポンと叩いてホームにいる人が乗り込んでくる前に降りた。手にはしまいそびれた一冊の本を持っていた。
そもそも僕はこの本を昨日、5時限目の授業が早めに終わった午後六時、帰りの電車の中で座りながら読んでいた。(※1)この本も終わりを迎えようとしており、ちょうど最寄の駅までの乗車時間と、読み終えるであろう時間がぴったりであることに多少の期待感と、万が一5ページほど読み終えられなかったときの絶望感が入り混じっていた状態で本を読んでいた。最寄り駅のひとつ前の駅に着いたことを察すると、どこか胸がそわそわし始め、普段なら噛み砕きながら読むのに対して、文字を追いかけていく作業のようになり始めた。文章を読みながら、電車のアナウンスに耳を傾けるという作業は、二つのことを同時に出来ない僕にとって大変な作業である。(※2)
※1 普段は5限終了後の電車はサラリーマンで込み合っており、ギュウギュウ詰めになった状態で本を読むきにはなれない為、暑苦しい電車の中で翌日の講義までにレポートが間に合うのかとか、今日は家に帰ったら昨日撮っておいたドラマを見ながら、ハンバーグでも食べようなどと帰宅後の過ごし方を考えている。しかし今日は早めに授業が終わったこと、席がちょうど空いていたこともあり座りながら読書をすることが出来た。そもそも僕は立ちながら本を読むという技術がまだ身についておらず、座る席がないときはふらふらしながら読み続けるのか、左手でつり革をつかみ、右手の親指で本の中央を押さえながら持ち、次のページに進むたびに左手を下ろしてページを送るかしていた。ただ、片手で読む場合は左手を下ろすという作業が加わり、非常に面倒なため、本を読んだ気がしないまま駅に着くというのがほとんどであった。
※2 少し前にAと僕の家で昼食をとっているとき、Aはおにぎりを片手に持ちながら、ラーメンを食べていた。一方僕はというと、おにぎりはまだぴっちりと包装された袋に入ったまま、ラーメンのみをすすっていたのだ。それを見てAはおにぎり食べないの?と聞いて来たのだが、僕はおにぎりを食べるのか、ラーメンを食べるのか、どちらかに集中しないと食べられない性格であり……
僕の生活をもとに同じような感じで書いてみたのですが、まぁこんな本です。
といっても僕のはまだスケールは大きいほうで、ニコルソンベイカーの作品はミクロ単位の考察が書かれています。靴紐はなぜ切れたのか、牛乳瓶からカートン容器に変わったときの感激、トイレでの過ごし方などなど。
これは言うならば注釈本です。もちろん注釈を読まずにいても話が進んでいきます。この状態でも十分ミクロの世界を味わえますが、注釈を読むことでさらに細かい世界を見ることが出来ます。
もしかしたら注釈が無かったら100ページほどで読み終えてしまうかもしれません。だって、エスカレータに乗ってるほんの十数秒だもの。
その間に彼はあっちへ話が飛び、こっちへ話が飛び、さらにはずっと向こうへ話が飛んだかと思ったら今までの道に戻ってくる。
高校の先生でもこんな感じでまったく授業が進まない先生がいました。皆は授業がうまくつぶれて喜んでいましたが、僕はそんな先生の『感じ』が好きで、授業どうこうではなく、脱線するその状況を喜んでいました。
文章自体は少し硬く、さらに注釈が加わることでより読みづらく、あまりに細かい世界なためこちらが理解しきれないところもある。
でも僕は何かを細かく考える人、いろいろなことに興味を抱く人が好きなのではまってしまいました。
それでも読みにくさは森見登美彦さんのものよりあり、なんなら森見さんの本が読みやすいと錯覚するほどです。
またもやこうして薦めにくい本を薦めてしまう結果になりましたが、僕は好きな作品だったので…
考えてみればここ最近『夜は短し歩けよ乙女』 『四畳半大系』のような妙な世界を独特の表現で書かれたものや、『むかしのはなし』のように昔話を題材にして今風昔話を見事に書いたものなど、変わったものばかり読んでいました。作風って意外とたくさんあるもんだなぁ。しかし…こうも変り種ばかり読んでいていいのだろうか。もっと乙一や東野圭吾のようなものを読まなくてもいいのだろうか。
でもなぁ…あまりミステリーとか読まないからなぁ…
ふぅ…
実はこの後、次の本を読みました。今度は変り種ではなく、純粋なもの(というと今まで読んできた作品に失礼ですが)を読みました。
そう。読みま『した』。
森見作品、中二階と続けて読んだ後に純粋な作品を読んだところ、あっという間に読み終わってしまいました。もともとページ数も少ないものでしたが、今日中に読み終えてしまうとは…
修行の成果です( ̄▽+ ̄*)