平積みされていた本の雰囲気とタイトルにひかれ、手に取る。
今、昔話が生まれるとしたら…
この一言にひかれて購入したのが『むかしのはなし』
- むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)/三浦 しをん
- ¥560
- Amazon.co.jp
簡単なあらすじ
3ヵ月後に隕石がぶつかって地球が消滅する。生き残れるのは抽選で選ばれたヒトのみで、彼らは脱出ロケットに乗って他の惑星へ移住することとなる。。。
もし、地球がなくなると知ったら、人々はどう動き、何を考えるのだろう。
もし、宇宙に住むことになったら、人はどう動き、何を考えるのだろう。
7つの昔話(かぐや姫、桃太郎、猿婿入り(僕は知らない昔話でした)などなど)を現代版にアレンジした…というと作者の意図と違う書き方になってしまうかもしれませんが、地球消滅と関連させて書かれています。
作品の構成、演出に弱い僕は、この書き方にやられてしまいました。
少し砕けた部分として、「ロケットの思い出」(花咲かじいさん)ではロケットという犬を登場させたり、「入り江は緑」(浦島太郎)では、カメちゃんという女性が登場したりします。おいおいと笑ってしまう感じですが、いつの間にか話のなかに引き込まれてしまいます。
見た目や構成力だけでなく、話の深さもあり、非常に考えさせられる作品でした。
正直、カバーにかかれた文句のような、今「昔話」が生まれるとしたらという言葉とは線路が一本違う気がするものの、行き着いた先は僕のイメージと同じ駅でした。
いや、もしかしたら昔の昔話が存在しなかったとして、今、浦島太郎のような話が生まれるならと考えたとすると…
まだまだ僕は読書力が足りないみたいです。
話を伝えるには様々な方法、状況がある。今回の構成の面白さにはこの『伝え方』でもあります。
携帯のメール、日記、警察の調書、精神科医とのカウンセリング…
もしかしたらもともと御伽草子も、浦島さんの寝言だったり、小柄な一寸法師君の武勇伝を自慢したり、桃太郎さんとペットの会話だったりするのかもしれません。
ところで
3ヵ月後、地球がなくなるとしたら…今の僕は何をするのだろう。
就活をやめるだろうか。
大学を辞めるだろうか。
大きな借金をして旅行に行くだろうか。
宝くじを当てるかのようなロケットの搭乗券を必死に手に入れようとするのだろうか。
それと同時に世界も動く。
会社は機能するのだろうか。
先生は教育を続けるのだろうか。
返される可能性のない大きなお金を貸してくれるのだろうか。
優れた技術者、若い女性、莫大な財産を持った人は、どんな気持ちで荒れる地球を見るのだろうか。
それとも僕は
アルマゲドンのようなヒーローが現れることを待ち、お金は大切に貯金し、犯罪なんてすることもなく、いつもとかわらない生活を過ごすのだろうか。
地球が生き延びたときのために。。。
ダメだ…答えが出ない。
想像できないほどありえないと思い込んでいる状況なんだろうなぁ。
ふぅ…
昔話はなにか教訓が隠されている(もしくは、こじつけた)から、今に伝えられている。
今から300年後に伝えられる話は、僕らの知っている花咲かじいさんや浦島太郎なのだろうか。
もしくは…