ここ最近エッセイや短編集ばかり読んでいました。

本を読む時間を通学時間にも当て始めたからというのが大きな理由ですが、もうひとつ、小説は一気に読みたいなと思うからでもあります。

でもそうなるとなかなか長編小説を読む機会がないのですが、今回の一時帰省にあたって以前から詠みたいと思っていたものを手に持ち、電車の中を楽しみました。


それがこちら。

ボーイズ・ビー (幻冬舎文庫 か 23-1)/桂 望実
¥520
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これ、すごく好きです。


母親をなくしたばかりの小学校6年生の隼人と、70歳の頑固でとっつきにくい靴職人である栄造。このふたりがそれぞれの問題を抱えたまま、偶然出会うこととなる。


偏屈じいさんが心優しい少年と徐々に心を通わせていくというなんとも「物語」らしい内容。

『夏の庭 -The friends-』 や 『西日の町』 なんかもくせのあるじいさんが出てきて、少年達と心を通わしていくという感じで進んでいきますね。

僕の中の小説No.1は夏の庭でした。あの世界観はいつになっても心地よく、何度も読み返したし、これがきっかけで本が好きになったといってもいい。

しかし、この絶対的なNo.1だった本にすごい勢いで迫ったのがこのボーイズ・ビーでした。


もう完全にお涙頂戴な話の展開、心情描写ですが、嫌味ったらしくなくその世界に引きずり込まれました。

電車の中で本を読んでいて目頭が熱くなったのは久しぶりです。

電車の中で全ては読みきれず、家に戻って読みましたが、もう涙をこらえるなんて野暮なまねはせずにがっつり泣いている自分がいました。


また栄造の発言もどこか面白いところがあり、そこがまた良かったのかもしれません。栄造は発言だけでなく、動きもどこかコミカルで、小6の子どもにうろたえる姿は笑ってしまいました。

隼人は年の離れた弟がいるため、小6とは思えないほどの大人っぽさを持っていますが、度々出てくる子どもっぽさを見ていると、なんだか江戸川コナンを思わせます(^▽^;)

この隼人がなんとも反則的なくらいいい子で、母親を失ったことを表に出そうとしない、父親には迷惑をかけない、弟が泣けば必死に解決しようとする。このなんとも大人っぽさをかもし出すところに心打たれました。

雰囲気は児童書っぽく、読書感想文なんかに推薦されそうなきれいな世界観だけれど、児童書にしては大人びていて、まさに隼人っぽい作品でした。


このふたりの視点からそれぞれ書かれており、読んでいてもわかりやすいです。ふたつの視点から話が進むため気持ちが入り込めないということも…あるのかなぁ?僕は十分入り込んでしまいましたが( ̄ー ̄;

栄造で笑って隼人で泣いたという感じだったかも。


ふと家にある本のタイトルを流し見ると、夏の庭や西日の町のほか、『西の魔女が死んだ』、『ポプラの秋』、『佐賀のがばいばあちゃん』、『老人と海』...とおじいさんやおばあさんと少年少女が作る世界ばかり。僕はどうやらこの組み合わせが好きみたいです。なんでだろ?僕がおじいちゃんこ・おばあちゃんこでは無いからかな?こういった繋がりに憧れていたのかも知れません。



年齢差58歳の、不器用な友情。


出会うはずのない二人。出会っても通じ合うはずのない二人。そんな彼らが、徐々に心を通わせていく。

(僕としてはこの本の裏に書かれたうたい文句と内容ががっちりはまるって感じはしなかったけれど…出会うはずのないってのは…言い過ぎじゃないかい?)



ふぅ…

小説を読んでいると、自然と頭の中で映像化してしまいます。

その映像化された世界はどれも漫画描写で、水墨画であったり、パステル画であったりします。今回は色鉛筆のような雰囲気で話を読み進めていった気がします。

とはいっても顔の描写までははっきりと想像しにくいのですが、栄造の顔だけははっきりとFREEDOM(カップヌードルのCMのやつ)に出てくるアランてじいさんの顔が浮かび上がりました。雰囲気はあんな感じかと思われます。