NOTE レース公示、参加と資格 | Fanfare for the common man

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日本テーザー協会より、「普通の人」がTasarをよりディープに楽しむためのサポートをゆるい企画でいきますので、宜しくお願いします。まずは、左のテーマより「はじめに」をご一読ください。

レースに参加する際には、参加資格を満たす必要があります。

この参加資格がどんな要件になっているかを確認するのは、主にレース公示になるかと思います。実際には、レース公示の他にも、セーリング競技規則(RRS)テーザークラスルール(クラス規則)も知らなくてはなりません。

また、このレース公示が常に正しい内容で記載されているとは限りません。残念ながら、作成者もプロフェッショナルではないので、間違いや語弊が生じることがあります。こうした間違いや語弊が生じた場合、レース公示は訂正され、どこをどのように訂正したかが示されるわけですが、間違いに気付かれなかったたり、間違いとも言い切れないような内容だったり、レースまで間がないなどの事情が生じた時、特に訂正もお知らせもないことがあります。
(※もちろん、速やかに訂正が行われたり、誤解が生じるような内容に関しての正しい解釈が示されるなど、主催者や協会側に当然期待することはあります。)

それではどうすればよいのかを考えた結果、各参加者が参加と資格に関して、より知識を身につければ、もし疑問が生じた場合には、すぐに主催者に問い合わせることができ、主催者側もそうした質問を受けることにより、より早く間違いに気付くことができる、と考えました。

理想的には、常に公平で正しいレース公示であればよいのですが、残念ながら、ミスはなくすことはできないことを確信しました。諸事情ありますが、例えば、担当する方も変わりますし、引継ぎにも限界があります。
従って、できることをできるところからのスタンスで、皆さんでよりよいレース環境を維持していこうと、参加と資格に関連する内容を紹介していきます。読んでみて、ご一考いただければと思います。

初めにお断りしておきますが、当方も専門的な知識を有するものではありませんので、記載内容に間違いなどがあり得ます。もし、そのような間違いがありましたら、ご指摘ください。尚、間違いを信じたために生じた損害等についての責任は負いかねます。
各規則は、現時点のものを用いていますので、ルール改正があった場合には、該当する内容をルールブックでご確認ください。また、少なくともRRSは適用される前提で記載しております。


それでは、最初に最も基本となるRRS75から・・・

RRS75 レースへの参加
RRS75.1 レースに参加するためには、は、レースの主催団体が求める要件に従わなければならない。艇は、次のいずれかにより参加申し込みをしなければならない。
(a)ISAF加盟の各国連盟に加盟するクラブまたはその他の団体のメンバー
(b)上記のクラブまたは団体。
(c)ISAF加盟の各国連盟の会員


まず、参加要件を満たすのは誰かということですが、これは「艇」になります。
艇は、RRS序文の一部にその定義が記載されています。

RRS序文
用語 (略)…「艇」は、セールボートおよび乗艇している乗員を意味する。…(略)

つまり、主語は、基本的にとなっています。

レース公示によっては、参加要件の中に乗員を主語とする追加要件を加えている場合があり、注意が必要になります。例えば、「全ての乗員は、**年度のJSAF会員であること」などの類です。これも「レースの主催団体が求める要件」になると思われます。
少々余計なお話ですが、こうしたことを要件に入れたい場合は、RRSの記載の仕方を見ると、「JSAF会員」より「ISAF加盟の各国連盟の会員」の方が望ましいと思われます。

次に、RRS75.1に記載された「次のいずれか」の部分である(a)~(c)について、考えてみます。
これは、申込者の"属性"とでもいうのか、(a)~(c)に該当する人(または団体)が申し込みできるとの規定です。申込者と乗員が必ずしも一致する必要はありませんが、テーザークラスの場合、申込者と乗員は同じ方である場合が多いと思われます。但し、申込者についての規定であるので、乗員すべてが(a)~(c)に該当する必要までは規定していないものと思われます。

申込みをする段階で(a)~(c)に該当する必要がありますので、テーザークラスの場合においては、申込者は、JSAF会員などの「ISAF加盟の各国連盟の会員」(c)であるか、日本テーザー協会のメンバー(a)であるか、になるかと思います。

続いて、クラスルールの規定について、考えてみます。

クラス規則C.7 メンバーシップ
C.7.1 少なくとも1名の乗員がICAまたはテーザークラス規約に従って設立されたリージョン、ナショナル、ディストリクトのクラス協会の現役メンバーでなければならない。

さて、このクラス規則C.7.1ですが、これは公式レース以外でも適用されるのでしょうか?
「今回はオープンレースだから、JTAメンバーではなくても問題ない」のでしょうか?

それに関しては、次のRRSが気になります。

RRS78 クラス規則に従うこと、証明書
RRS78.1 艇のオーナーとその他の責任者は。艇がクラス規則に従うように維持されていること、および艇の計測証明書またはレーティング証明書がある場合には、これが有効であることを確実にしなければならない。


このRRS78.1によれば、"艇"がクラス規則に従うように指示していますので、クラス規則におけるメンバーシップの項目も"艇"は満たしていなくてはならないように思えます。あるいは、RRS78.1を適用しない変更が適切に行われ、クラス規則を適用しないなどの手続きが必要になります。

クラス規則C.7.1をもう少し掘り下げて考えます。レース主催者が、「全ての乗員は日本テーザー協会の現役メンバーでなければならない」とした場合は、どうでしょうか?
これは、RRS75.1にある「レースの主催団体が求める要件」にはなるのでしょうが、これは、クラス規則C.7.1を変更しています。このようなルールの変更に関しては、RRSでもクラス規則でも所定の手続きによらなければ許されていませんし、一定の内容に関しては、変更自体を許されていません。

それでは、クラス規則を変更する場合に関わる内容を確認してみます。

RRS87 クラス規則の変更
帆走指示書では、クラス規則にて変更が許されている場合、またはその変更に対し、クラス協会の書面による許可が公式掲示板に掲示された場合のみ、クラス規則を変更することができる。


すぐ目につくものに、RRS87がありますが、これは、帆走指示書でできる変更の方法です。
それでは、レース公示ではどうかというと、次のRRSの規定を順を追っていくようになります。

RRS89.2 レース公示、競技役員の任命
(a)主催団体は規則J1に従ったレース公示を、公表しなければならない。適切な通知がなされた場合に限り、レース公示は変更することができる。


まず、レース公示を公表する義務があり、それは規則J1に従ってなければなりません。

RRS付則J1
レース公示には、次の事項のうち、適用され、かつ競技者が大会に参加するかどうかを決定するために役立つ事項、または必要な情報を帆走指示書が入手可能になる前に得られるような事項をすべて含めなければならない。

(※(2)~(8)、(10)~(13)、(15)は、省略しました。)
(1)変更する競技規則の特定(規則86参照)、変更の要約、および変更内容すべてを帆走指示書に明記するという記載(また、…省略…)
(9)規則87に基づき認められているクラス規則の変更。それぞれの規則を明示して、変更内容を記載
(14)チャーターまたは借用艇に対し、規則G3が適用されるか否か。


クラス規則の変更に関しては、その変更を明示して変更内容を記載するようになっています。仮に「全ての乗員は日本テーザー協会の現役メンバーでなければならない」としたとしても、それだけでは、レース公示としては不備があることになります。

さらに、クラス規則での変更に関する規定を確認していきます。

クラス規則 解釈29
「公認大会」(規則C.2.1,C.6.1,C.6.3及びC.7参照)とは世界テーザークラス協会あるいはテーザーリージョン、ディストリクト、フリートによって主催された、または承認された大会を意味する。これらの大会におけるテーザーのクラスレースはテーザークラス規則によって制御されるが、テーザーリージョン、ディストリクト、フリートの年次総会あるいは特別総会で規則または条文を適用しないことが決定された場合にのみ変更してよい。世界テーザークラス協会によって主催された大会ではクラス規則の変更をしてはならない

解釈29の言う「公認大会」でなければ、変更してもよいようですが、RRS付則J1は適用されるので、注意が必要です。
また、もし主催者に日本テーザー協会と記載されていた場合、解釈29の言う定義によると「公認大会」に該当すると思われます。この場合は、総会決議などが関連しますが、日本テーザー協会の場合、次の決議があります。

日本テーザー協会総会決議
2010年11月20日に開催された、日本テーザー協会年次総会において、下記の規則を非適用とすることが決議された。したがって、個々のレガッタにおいて、クラス規則解釈29 に基づき、これらの規則について変更することができる。
C 1.5、C 2.2(c)、C6、D.3.2、解釈32、

よく読むとこの決議の文書も語弊(※)がありますが、この決議で承認されたクラス規則以外は、「公認大会」では変更できないことになります。
(※書いていて気付きましたが、「非適用とすること」ではなくて、「非適用と変更できること」が正しい決議内容だと思います。クラス規則の和訳の表紙の記載から転記していますが、少し文章がおかしいようです)

さて、RRS、クラス規則をざざっと目を通して、参加と資格に関連するようなものを抜き出して、例示を交えながら、基本的な事項から規則を変更する場合の事項への流れで紹介してみました。RRSやクラス規則には変更に関する規定などもあり、いつもと違うような参加要件が指定されていた場合、不備や間違いが生じている可能性があります。
改めて申し上げますが、漏れや誤解などによる間違いなどがありましたら、是非お知らせください。

本件の内容を作成するにあたり、ゆうさんと軽部さんのご協力をいただきました。
そのご協力に感謝します。

最後に、抜き出した関連条文等を末尾にまとめて再録しておきます。

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セーリング競技規則(以下、RRS)より(※2013-2016より抜粋)

RRS序文
用語 …「艇」は、セールボートおよび乗艇している乗員を意味する。…

RRS75 レースへの参加
RRS75.1 レースに参加するためには、は、レースの主催団体が求める要件に従わなければならない。艇は、次のいずれかにより参加申し込みをしなければならない。
(a)ISAF加盟の各国連盟に加盟するクラブまたはその他の団体のメンバー
(b)上記のクラブまたは団体。
(c)ISAF加盟の各国連盟の会員。

RRS78 クラス規則に従うこと、証明書
RRS78.1 艇のオーナーとその他の責任者は。艇がクラス規則に従うように維持されていること、および艇の計測証明書またはレーティング証明書がある場合には、これが有効であることを確実にしなければならない。

RRS87 クラス規則の変更
帆走指示書では、クラス規則にて変更が許されている場合、またはその変更に対し、クラス協会の書面による許可が公式掲示板に掲示された場合のみ、クラス規則を変更することができる。

RRS89.2 レース公示、競技役員の任命
(a)主催団体は規則J1に従ったレース公示を、公表しなければならない。適切な通知がなされた場合に限り、レース公示は変更することができる。

RRS付則J1
レース公示には、次の事項のうち、適用され、かつ競技者が大会に参加するかどうかを決定するために役立つ事項、または必要な情報を帆走指示書が入手可能になる前に得られるような事項をすべて含めなければならない
(※(2)~(8)、(10)~(13)、(15)は、省略しました。)
(1)変更する競技規則の特定(規則86参照)、変更の要約、および変更内容すべてを帆走指示書に明記するという記載(また、…省略…)
(9)規則87に基づき認められているクラス規則の変更それぞれの規則を明示して、変更内容を記載
(14)チャーターまたは借用艇に対し、規則G3が適用されるか否か。


テーザークラスルールより

C.7 メンバーシップ
C.7.1
少なくとも1名の乗員がICAまたはテーザークラス規約に従って設立されたリージョン、ナショナル、ディストリクトのクラス協会の現役メンバーでなければならない。

解釈29
「公認大会」(規則C.2.1,C.6.1,C.6.3及びC.7参照)とは世界テーザークラス協会あるいはテーザーリージョン、ディストリクト、フリートによって主催された、または承認された大会を意味する。これらの大会におけるテーザーのクラスレースはテーザークラス規則によって制御されるが、テーザーリージョン、ディストリクト、フリートの年次総会あるいは特別総会で規則または条文を適用しないことが決定された場合にのみ変更してよい。世界テーザークラス協会によって主催された大会ではクラス規則の変更をしてはならない。

日本テーザー協会総会決議
2010年11月20日に開催された、日本テーザー協会年次総会において、下記の規則を非適用とすることが決議された。したがって、個々のレガッタにおいて、クラス規則解釈29 に基づき、これらの規則について変更することができる。
C 1.5、C 2.2(c)、C6、D.3.2、解釈32、