最近、物価と失業率はもちろん、給与やマネーストックと、いろいろな指標に触れてきました。このへんで一度、これらすべてと連動しているGDPとの関係を見てみることにします。


なお、GDPといつもただ言っていますが、実は名目GDPのことです。省略していただけです。今回この言葉が多く出てくると思いますが、言葉で敬遠されないでいただくと幸いです笑


ではさっそく見ていきます。

名目GDPと消費者物価指数の関係

名目GDPと消費者物価指数


CPIとは消費者物価指数のことです。CPIの前にコアコアとついているのは、季節性の変動がある酒、生鮮食品のデータを取り除きました。戦争、紛争などで変動があるエネルギーを除きました、ということです。

見てただているとおり、GDPが増えれば物価も伸びる関係が見られます。逆もしかりですけどね!

統計的に相関係数(一致度)が70%を超えると強い相関がある
と言います。90%はもう極めて強い、というほかありません。だからGDPの代わりに物価を国が目標に掲げたりもするわけです。

物価が下がるならGDPも低くていいじゃないか、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、物価より給与の低下速度の方が速いのであしからず。だからデフレを続けるとだんだんと苦しくなるわけです。

物価上昇はその逆、物価上昇より給与上昇のが早いです。これをインフレと言います。だから物価上昇につながるGDPの向上は嬉しいわけです。


さて、どんどん見ていきます。

名目GDPと民間平均給与の関係

名目GDPと民間平均給与

これだからGDPは大切なわけですね(現金

で、この上昇率が、さきほどの物価の伸びより大きいから助かるわけですね!


次にいきます。

名目GDPとマネーストックの関係

名目GDPとマネーストック


最近も記事にしましたが、民間のお金の総量たるマネーストック。これもきれいに相関しています。なお、2年前のマネーストックだということに注意してください。同年同士でもそれなりに相関ありますが、2年前がもっとも高い相関があったのでこちらにしました。

つまり、マネーストックをみれば、2年後のGDPが大体予測できてしまう、ということですね。または、毎年マネーストックを増やすようにすれば、2年後にGDPがきちんと確保できる、と。種をまけば2年後に花が咲く、みたいな感じでしょうか。

マネーストックは信用創造の結果なので、どんどん売買が活発に、金回りがよくなれば増えます。つまり、景気のいい時代だったり、景気の悪い時代には減税して金回りをよくする方法があります。または政府サイドのお金を民間に入れて、金回りの元手を増やす方法があるかと思います。やり方は公共事業が王道ですかね。

次にいきます。

名目GDPと完全失業率の関係

名目GDPと完全失業率


物価と完全失業率の関係は余裕で90%を超える高い相関を持ち、フィリップス曲線とわざわざ命名されていますが、物価をGDPに変えたこのグラフでも充分に高い相関を持ちます。本日の最初のグラフのとおり、GDPと物価自体、高い相関を持つ、つまりは同じような動きを持つわけですからね。


ただ、見ての通り、今回は反比例的な関係です。GDPが増えていると失業率は減ります。GDPは高度経済成長期に20%を記録していますが、それでも失業率が1%あるということは、どんなに景気のいい時代でも失業者は1%くらいはいるってことなんでしょうね。このへんが自然な失業率なのだと思います。


次いきましょう。


名目GDPと自殺死亡率の関係

名目GDPと自殺死亡率


自殺死亡率は失業率と似たような反比例の動きをします。少し相関は下がりますが強い相関です。つまり、経済状況によって自殺してしまう人がいる、ということです。


なお、これは消費税5%のせいでもあります。

名目GDPと自殺死亡率の推移 前年比累積

名目GDPと自殺死亡率2


名目GDPと自殺死亡率の推移 前年比

GDPと自殺死亡率3


1997年の消費税増税5%で、急に跳ね上がりました。大体2万人から3万人に自殺者が増えたので、そこから毎年1万人余計に自殺する人が増えました。15年近く高い状態が続いたので15万近く余計に。


インターネット上では「日本はどこかと戦争しているのか?」というコメントも見たような気がしますね。。


では次を。

名目GDPと人口の関係

名目GDPと人口


ちなみに人口問題も有象無象のことが言われていますが、こうしてみるとすっきりしますね。人口も名目GDPに比例しています。


なお「人口が減ったからGDPが減ったんだ!」というのは間違いです。後述しますが、GDPは政府支出で任意に増やせますので。


ということはつまり、GDPを増やせば人口問題も解決です。最近はこういう話、ニュースでも顕著ですよね。就職活動する若者の2割が自殺を考える。経済的理由で恋愛も結婚も考えられない若者が6割。第2子を生むのに経済的理由で躊躇する。


そりゃそうだ、と思える、統計を後押しするニュースをよく見ます。


さて、では総人口ではなくて、労働者人口を見てみます。失業率の元の人数です。大学生などを除く、すぐ働ける状態にある人の人数です。完全失業率は、その状態の人が働けていない割合の話でした。


名目GDPと労働者人口の関係

名目GDPと労働力人口1


名目GDPを増やせば働る体勢になる人が増える、、、とはちょっと言い難いですね。相関が47%ほどしかありません。…このままでは。


ここで、赤い線から離れている、右下の点の多くはヨコ軸のGDPで非常に高い場所ばかりです。これほど高いGDPだったのは1970年台の高度経済成長期のみです。そこで70年台を外してみると

名目GDPと労働力人口11


非常に高い相関になりました。つまり、高度経済成長期のみ、高いGDPを誇っても、急には労働者人口が確保できない、と考えられます。


まぁ、GDPは高くても別に構いませんが。むしろ景気が良くなるのでイレギュラーでも大歓迎です。それに逆に考えれば、GDP10%程度なら、労働者の数は充分に足りうると考えてもいいのではないでしょうか。


総人口は急には増えませんが、景気が良ければどんどん働きに出ようと思う方が増えます。そうしたことで、労働者人口は調整が効くような気がします。


ですから、いま安倍政権がゴリ押ししている、外国人労働者など入れる必要はないように思えます。その前に「GDP10%以上叩きだせよ」と思います。


以上が名目GDPと連動している各種指標でした。GDPを中心に据えて見ましたが、つまるところ、全てが連動していると言えます。だからニュースの報道はGDPだったり物価だったり失業率だったりするわけですね。


ただ、人口と経済を絡めた報道はほとんどない気がしますね。日本を衰退させてきた失態に触れられたくないのかもしれません。


では、連動することはわかりました。あとはどうやって各種指標を良くするか、です。あとはいつも通り。本ブログのタイトルにもあるように、あとは足し算で片がつきます。


三面等価の原則
名目GDP=消費+投資+政府支出
      =A+B+C


中学校や高校で習う式です。見ての通りA+B+Cの足し算です。ABCどれを増やしてもGDPは確実に増えます。


しかしA消費は消費税増税で減らしました。B投資は流動性の罠で1990年から25年間増えていません。だから消去法でC政府支出を増やすしかありません


この他に輸出-輸入=純輸出がありますが、GDPの1%程度しかないので無視します。それも震災以降ずっとマイナスですし。


では、政府支出と名目GDPの関係を見てみます。


名目GDPと政府支出の関係

名目GDPと政府支出


見てのとおり、比例関係にあります。名目GDPはおよそ500兆円。政府支出はそのうちの100兆円しかありません。しかし、その20%が全体を左右しているのがわかります。全身に血液を送り出している心臓のようなものですね。


足し算を考えてみても、100兆円が110兆円になれば、500兆円は510兆円になります。GDPは前年比で2%アップです。はい、経済成長が達成できました。


さらに現実には、政府支出が前年より10%以上多いと、GDPは5%以上が多発しています。つまり、10兆増やしたら、10兆どころではなく、お金が巡り巡って25兆以上増えています。乗数効果というやつですね。


あとはその支出のための財源ですが、アベノミクス第一の矢で金融緩和をしています。具体的にはお金を刷って、自社株買戻しならぬ、国債の買戻しをしています。お金を刷って、と書きましたが、2012年から2014年で200兆刷りました。刷ったお金の総額を示すマネタリーベースが100兆からたった2年で300兆です。


マネタリーベースの推移

マネタリーベースの残高推移


最新月も、月8兆円刷っています。


マネタリーベースの残高推移2


そのうちの10兆でも20兆でも政府支出に回したら景気回復したんですが、使い道は国債や株を買うばかり、です。とにかく「財源あるじゃん!」ってことです。


しかし「お金を刷れば景気は良くなるー(刷ったお金は使わないで置いておくだけでいい)」というカルト経済学の面々がいます。これを正確に言い直せば「マネタリーベースが増えればGDPは増える」になります。

最後にそれを見て終わりにします。


名目GDPとマネタリーベースの関係

名目GDPとマネタリーベース


いままで見てきた連動するグラフと違うことがわかりますでしょうか。相関係数が低いのはもちろんですが、ヨコ軸のGDPが右往左往してもマネタリーベースが増えたり減ったりということはありません。つまり無関心というか無関係ってことですね。


ほかにも、GDPが同じゼロ付近なのに、マネタリーベースが+50%だったり-20%だったりと脈絡がありません。だから相関係数の判定も20%以下の誤差レベルという判定がでてくるわけです。


つまり、一応赤い近似曲線は引けて右肩上がりに見えなくもないですが、この式は当てになりませんよ、ってことです。統計的に。


しかし、そればかりやっているのがアベノミクスで、第一の矢です。第二の矢が政府支出の増加ですが、最近のニュースだと、その歳出増加を抑制する話まで出てきました。

甘利氏「論理矛盾」×稲田氏「雨乞い」 財政再建で対立
http://www.asahi.com/articles/ASH6D5K7CH6DUTFK01B.html

このままではバブル崩壊からの25年デフレが、あと5年で30年デフレに突入してしまいそうです。統計無視した雨乞いも、A+B+Cを無視した論理矛盾もやっている場合でありません。

こういう人たちがいるのも、日本の常識の中で育ってこうなったわけですから、各人が隣の人に「常識」を教えていかないといけないと思います。ダメなものはダメ、違うものは違う、と。

「景気回復は政府が支出増やさないとだめだよ?」
「三面等価の原則わかる?A+B+Cの足し算だよ?中高あたりで習うやつだけど」
「国の借金?いまお金刷って買い取ってるから10年経たずになくなるよ?」
「財源?いまめっちゃ国お金刷ってるじゃん。5月は8兆だったかな?」
「インフレになる?いいじゃん、給料上がるんだよ?デフレだとどんどん下がるんだよ?」
「破綻する?破綻って何がどうなること?支払?日本は日本円なら刷れるし、外貨で見ると世界一の純資産国だよ?」

小学一年生のお子さんに教えるように、当たり前のように教えてあげてください。「え、1+1は2だよ?」と。本当に当たり前のことですから(私はそういうデータとやり方しか使ってません:前年比、前年同月比)。


◆ よかったらシェアやツイートお願いします ◆
ランキングはクリックいただけると多くの人に読んでいただけるようになります。

人気ブログランキングへ


今回使ったデータは以下のとおりです。

時系列統計データ検索サイト マネタリーベース、マネーストックはここから
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html#


国民経済計算(GDP統計)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html


物価
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

失業率、労働者人口
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/

民間平均給与
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/01_02.htm

人口
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.htm

自殺死亡率
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/