『ハウ・トゥー・サクシード』2020.9.4〜10.9
全29公演をカンパニー全員が怪我なく健康に大千穐楽を迎えて完走することができました!!!
コロナ禍の中、御来場頂いた方々、今回は観劇を見送る選択された方々、SNSなどでいつも応援してくださる方々をはじめとする全ての皆様に心より感謝申し上げます❗️ありがとうございました。
さて、無事終える事ができた今だからこそ言える僕個人の心境を少しだけ書こうと思います。
4月頭に公演予定だった「モダン・ミリー!」がコロナウイルスの影響で全ての公演が中止になり仕事を失いました。
稽古場での通し稽古は終わり、あとは舞台稽古と本番だけでした。
僕が最後に見た「モダン・ミリー!」の姿は、空っぽの客席から見た「未使用の舞台セットがバラされる」ところでした。
今までに味わったことのない虚無感と悲しみで満たされて、それに戸惑いながらなんとか前向きになろうとカンパニー全員の着登板を表に返して劇場を後にしました。
それと人生で初めて合成アプリを使い、全員の合成集合写真を作り出したのもこの頃です。消化しきれない事柄が沢山ありました。
そして『ハウ・トゥー・サクシード』の稽古が始まり、自分がコロナを持ち込む事、疑心暗鬼になる事、仕事を失う事、何よりも楽しみにしているお客様を裏切る事が心底恐ろしかったです。
勿論カンパニー全員がプロですから毅然とした姿勢で稽古に臨んでいた事は間違いありません。
しかし同時に全員が誰も経験した事のない事態なのも事実で、僕自身も心の中で不安に思ったりソワソワしてました。
しかし稽古を重ねるにつれて、本当に晴れやかなカンパニーの良さが不安を掻き消してくれました。
その中心にいたのは座長の増田貴久さんでした。
若い頃に大御所の方から「空気は読むものじゃなくて作るものだ」と教えて頂いたことがあります。
それを座長として自然体で行なっていた事に静かに感動しました。
ご本人も初のブロードウェイ作品でなれない事も沢山あったと思うのに、うわぁ、、、こういう事ができる人っているんだな、、はぁ、、、S U K I ‼️
となった事を覚えてます。
本当にお人柄の素晴らしい座長でした。
そして優しく暖かく楽しい、スタッフさん方を含む最高のカンパニーの皆さんのお陰で大千穐楽まで楽しく駆け抜けることが出来ました。心から感謝しています!
本当はお一人お一人のお人柄に触れたエピソードを書きたい気持ちなのですが、長くなり過ぎてしまうので一旦ここまでにさせて頂きます。
再演を強く希望します!
出演者としてちょっと遠慮してましたがやはり声を上げなきゃ届かないから!わぁぁぁぁお願いしますぅ!フジテレビさーーーーーーーん!シーエイティーさーーーーーーん!!主催者の皆様ーーーーーーーー!
さて、ここからが本題ですよ!
*「りんたろうの〜ハウトゥー独自考察〜♪」*
ここでは私が『ハウ・トゥー・サクシード』に携わる為に調べた資料や、ミュージカルファン歴20年で蓄積された知識から導きだされた「非常に偏ったミュージカル作品の考察」を恥ずかしながら披露させて頂きます。
作品の魅力やなぜヒットしたのか、どんな作品のオマージュが含まれているかなどもご紹介して行こうと思います。
少々のネタバレ的な事柄も含みますので、この作品を見てない方で内容やオチを知りたくない方は以降の記事をご覧になる事をお勧めしません。
ご了承ください。
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・作品の背景
この『ハウ・トゥー・サクシード』という作品は1961年に初演され、1417回のロングランヒットを記録しました。
舞台となる1950年代のアメリカは第2次世界大戦の戦勝国として大いに発展し、何を売っても儲けが出る超経済成長の中にありました。
平たく言うと なかなか調子に乗ってました。 社会全体が絶好調でした。
(『ハウ・トゥー・サクシード 』に登場するWWW社は「ウィケット」を売って儲けている大会社ですが、「ウィケットが何か」は誰も知りません。)
そんな社会に対して
「このままで本当に大丈夫?」
「カッコ付けてるけど外から見たら結構笑えるよ」
「よく見ると中身スカスカだよね」
などの社会への警鐘とも取れる皮肉が効いたコメディ作品なんです。
(でもそれって決して当時だけではありませんよね。)
これはミュージカルだけではありませんが、ヒット作ほどその当時の社会を凄く反映している作品が多いです。
例えばミュージカルの祖と言われる1943年初演の「オクラホマ!」は異例の大ヒットをしました。
アメリカ西部のカウボーイと農民の娘の三角関係を明るく描いた、ストーリーは平凡で温和なラブロマンスです。しかし当時はまだ戦争中でした。その様な社会背景がのんびりとして暖かな作風とマッチ人々の心を掴みました。
1957年初演『ウエスト・サイド物語』もそうですね。誰もが知る『ロミオとジュリエット』を下地に当時の社会情勢を上手く織り込みながら書かれ、今も世界中で上演され続けているミュージカルです。
この様に『ハウ・トゥー・サクシード』も当時の社会の痛いところを上手くコメディに変えて当時の人々に笑いと考えるキッカケを与えた素晴らしいミュージカルなのです!
・珍しいシチュエーション
1960年までのミュージカルは、『オクラホマ』『回転木馬』などの大ヒット作品の影響を受けて、
多くの登場人物、多彩な衣装、華やかなダンスシーンを物語の中で必然的に作る為に「様々なシチュエーションに移り変わる」様に構成されていました。
しかし『ハウ・トゥー・サクシード』では基本的には「WWW社のビル」と言うシチュエーションしかありません。
それまでその様なヒット作品もあまりなかったのでクリエイター達は作品を創るのに躊躇した様です。
しかしそれらの風潮を跳ね除けて大成功を収めた事により、後のブックレスミュージカル(『コーラスライン』『キャッツ』など)の発展にも繋がったと考えられています。
改めて物凄い作品なんですよね。
・影響やオマージュ元となる作品
これらは『ハウ・トゥー・サクシード』がヒットする為に欠かせない要素です。何と言っても1940〜1960年代はミュージカル黄金期と言われてます。観劇した多くに人がすぐに理解できる有名作品からオマージュされています。
その中でも私が好きな3つをご紹介させて頂きたいと思います。
まずハウトゥーに影響を与えた、オマージュに使われた作品とシーンの説明をざっくりとしますので、ハウトゥーのどのシーンに当てはまるか予想しながら見てみてください。
●1945年『回転木馬』の「June Is Bustin’ Out All Over」(6月は一斉に花開く)
僕は初めてこのシーンを見た時衝撃を受けました。
このシーンでは「6月になるとどれだけ男女が浮き足立ち、色めき立ち、如何に素晴らしい季節か」を歌ったミュージカルナンバーです。
内容が「1」の事を「10や20に膨らませる」と言う手法は他にもありましたが、ミュージカルは基本的にナンバーで話を進め状況や心境に変化を与える必要があります。
なのに「6月ってサイコー!ヒャッホー!」を伝えるためだけに1曲(それも割と長い)歌って踊っちゃう訳ですよ。それに歌詞も
「6月みんなはじけるー♪ジュン♪ジュン♪ジュン♪ 我らのジュン♪ジュン♪ジューーーーーーーーン♬」
ですよ本当に!中身の無さったら!!!笑
更にはアクロバットな男女のリフトや激しいダンスシーンもあります。
どこかで既視感がありますね!
そうです。「コーヒーブレイク」ですね!
「コーヒー頂戴」「無いと仕事なんか出来ない」たったこれだけの内容に対してあのダンスシーンのポテンシャルを発揮する欲求衝動の高さが笑っちゃいますよね。
そもそも「そんなに歌って踊れるくらいエネルギーあるならコーヒーいらないでしょ!ww」って突っ込みたくなります。
しかし、よくよく考えると人間ってそう言う矛盾した側面を沢山持っていますよね。意外と人間の理にかなったコメディシーンなんですね。
●『ウエスト・サイド物語』の「マリア」
この作品をご覧になった方はすでにお気づきかも知れません。
この「マリア」と言う曲のシーンでは主人公トニーとヒロインのマリアがひと目見ただけで運命的な恋に落ちます。そしてトニーは彼女の名前を知り、その美しい名響きと彼女に出会って世界が全く違う様に見える高揚感で街を徘徊しながら「マリア〜♪ま〜〜〜り〜〜あ〜〜〜〜♪」と熱烈に歌い上げるシーンです。
その歌詞の中に
「マリア、なんて美しい響きだ。強く呼べば音楽になり優しく呼べば祈り様だ。」
と言う趣旨のブレーズがあります。
この曲をオマージュに使ったハウトゥーのシーンは、、、、、もうおわかりですよね!
1幕最後に歌われる「ローズ・マリー」です!
ここでもフィンチが「ローズマリー♬ローーーーーズマリーー♪その名前は遥かなメロディー♪」と歌ってますね。
ウエストサイドのトニーとマリアが運命的なひと目惚れで恋に落ちたのに対して
フィンチはヘディ・ラルーにキスした事により「自分はローズ・マリーに恋してたんだ!」と気づきますね。笑
「人間が恋に落ちるのは必ずしも突然訪れる運命的な恋ばかりでは無いよね!笑」と言うメタファーにもなっており、更にフィンチのヒョウヒョウとしたキャラクターが良く理解出来る素晴らしい構成のシーンになっています。
(曲中でローズ・マリーにもキスをすると案の定ヘディー・ラルーのキスマークもバレて怒られるフィンチの「全然完璧ではない主人公」が人間味を引き立てて、「おバカだなぁ」と思いますが憎めないんですよねー。^w^)
それから「ローズマリー♪ジェーイピエールポーント♪」と歌ってる1番印象に残る旋律ですが、あれも『ウエスト・サイド物語』「Somewhere」と言うナンバーを彷彿させます。
日本語では「どこか」と言うタイトルです。二人の行く末のアンサーソングになっているのかも知れませんね。
●『オクラホマ!』『王様と私』『サウンド・オブ・ミュージック』など
前のブログにも書きましたが現在に「ミュージカル」と言う演劇ジャンルは1945年『オクラホマ!』が大きな基礎となってます。
それらを作ったミュージカルの祖が「リチャード・ロジャース & オスカー・ハマースタイン2世」と言う作曲家と作詞家のコンビです。(ここテストに出ますよ!)
彼らがこの演劇スタイルを「ミュージカル」とするのに幾つかの特徴を作りました。詳しくは前のブログをご覧ください。
そのうちの1つで「主人公とヒロイン以外のカップルをもう1組作る」と言う特徴があります。
これは主人公カップルの様な王道では出来ない発展の仕方や、ストーリーから少し外れたところでも関係性を進めることが出来るので、バリエーションやバラエティに富んだシーン作りをする為に後のラブロマンス作品の典型的な手法となりました。
1961年に『ハウ・トゥー・サクシード』を見た観客達は「フィンチ × ローズ・マリー」以外のカップルを何となく予想しますよね。
そしてビグリーとヘディ・ラルーが歌う「愛の宝物」のシーンで、最後なんだかんだで「ビグリー × ヘディー・ラルー」になるのかなー。と思いきや!
フィナーレで何の前触れもなく、発展するラブシーンも無しに「ウォンパー夫妻」として登場するわけです!そら笑うわ!
「これまでのビグリーとヘディー・ラルーのシーンは何だったの?!笑」 となる様な良い裏切り展開ですね。
それこそ男性から見た女性の変わり身の早さや逞しさが上手く笑いに描かれていますね。(ビグリーの浮気が空気の様な扱いなのが時代だな。。。と感じますが。)
ビグリーはウォンパーに好きな女性を取られ、フィンチに会長の座を取られ踏んだり蹴ったりと言うオチにまで繋がる素晴らしい構成なのです!
如何でしょうか?この他にも色々とお気づきになった方もいると思います。是非コメントで聞かせて下さい!
もしも『ハウ・トゥー・サクシード』が再演された時に新しい視点で作品を楽しんで頂けただけたり、他のミュージカル作品に興味を持って頂けると僕は本当に嬉しいです!
ちょっとしたオマケコーナー!
実は「え!この曲って元々ミュージカル曲なの?」と驚く曲って意外とあるんですよ。
その代表が「ドレミの歌」「エーデルワイス」です。
西洋の童話の様に教科書に載っていたり自然に耳にする頃が多いですが、
実はどちらの曲も1959年初演『サウンド・オブ・ミュージック』の曲なんです!
そしてそれを作ったのはあの「リチャード・ロジャース & オスカー・ハマースタイン2世」なんです!!ジャジャーーーン♪(笑)
この作品見たことない方は映画にもなってます。僕の中で「出来の良いミュージカル映画 第1位」です。
超絶オススメなので今すぐDVD借りてきて観て下さいね!!!(圧)
ここまでお付き合い下った皆様、本当にありがとうございます。実は1度この記事を投稿寸前まで書いたのに全て消えると言う事態に意気消沈しましたが、ツイッターでのコメントやこれまで頂いた応援やDMが背中を押してくれて無事に書き終えようとしてます。
改めて『ハウ・トゥー・サクシード』と言う作品は多くの人との繋がりをもたらしてくれた凄く大切な作品です。
この作品がまたどこかで再演できる様に、
そしてミュージカルという文化をもっと多くの人に知ってもらい楽しく素晴らしい経験をしてもらえる様にこれからも精進して参ります。
これからも応援よろしくお願いいたします!
本当にありがとうございました!僕は出来た!
そして今後も出来る!!!
また劇場にて皆様にお会いでることを心待ちにしています。
りんたろう
で、終わらせると見せかけてーーーー!
最後に10月末ライブの宣伝もさせて下さいませ。
ご興味ない方は下記は見なくても大丈夫です!
本当に見なくても大丈夫なんですよ?笑
見てくださる方ありがとうございます❣️
ミュージカルコンサートに出演いたします。
生演奏バンドなので僕も凄く楽しみです!
*10/27 19:30〜 (ネット配信あり)
場所:北参道 GRAPES KITASANDO(東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-11)
様々なミュージカル作品の良いとこ取りの曲を
歌と生演奏でお楽しみ頂けます🎶
実はハウトゥーサクシードからも
「Brotherhood of Man」を歌わせて頂きます❗️
他にも6曲ほどソロ曲やデュエット曲も歌います。
楽しみにしていてくださいね!
ハウトゥー仕込みのコロナ対策もバッチリしておりますので安心してご来場下さい!
来場チケット 3800円(1drink代別)
ご予約はこちらからお願い致します↓↓↓
配信チケット詳細はもう少しお待ち下さいませ。
お申し込みお待ちしております!
そしてここまで読んで頂いた皆様、重ねて本当にありがとうございます😊
また元気にお会いできることを心待ちにしています!
ありがとうございました!!!
りんたろう