ポエム パペットの交差点 | 法橋太郎のブログ

法橋太郎のブログ

ポエム 第九回歴程新鋭賞受賞

2021年アラブ語圏にてゴールデンプラネット賞受賞

パペットの交差点

 

車の行き交う交差点をことほぐために青きも

のなき都市の泥濘をゆく。おれの志はいまだ

変わらず。中身のない暗愚の人びとの多さに、

いまさらながら愕かされる。泥濘の脳髄たち

がいたずらにこころなき口をひらく。自己を

深めることもなく、まるでテレビでも視るよ

うに、その対象をあざける類の口吻をして。

 

思い断ち切るすべをも知らず、短きあいだの

人の世に、もはや神仏のことわりを求めるこ

となく、歌謡曲を口ずさみながらの時間つぶ

し。鬱憤のはけ口にすぐに消えてしまうおの

が言葉のまた脆弱さ。暗愚の王は知らぬ存ぜ

ぬとから言葉を吐く。

 

おお、おまえ暗愚の王よ、おまえは仕組まれ

たパペットの生死を生きるしかないというこ

とにまだ思い及ばないのか。経済のひとつの

椅子に凭れかかって、いかさま道化を演じつ

づけよ。この世のひとつの駒。この世のひと

つの歯車として。

 

鏨で叩き割られた墓がおまえの背に建ってい

るが、この世で量れない活字の運命が歩むこ

ろには、おまえも野山の土のなか。ひと摑み

の灰と骨だ。この世は夢でさえなくなる。お

れは志を貫くだけだ。おまえは何を貫くのか。

ああ、また暗愚の旅びとが行く。自己をも極

めようとせず、あのあおぐらき骨壺のなかへ