デュークとの戦いが終わった後。星蝕みを精霊たちの力を借りて無に帰した後。みんなはそれぞれの道を歩み始める。

「ユーリはこれからどうするんです?」

「気の向くまま、まだ俺の知らない世界を見に行くかな。」

ユーリは真っ青に続く空を見つめ呟いた。エステルは深呼吸をしながらユーリを見詰め言葉を放つ。

「……。わたしもユーリと一緒が良いです。ユーリの傍にいたいです。」

ドキドキしながらも真っ直ぐに見据えた眼は揺るぎない覚悟に満ち溢れていた。

「仕方ないお姫様だな?ヨーデルの手伝いはどーすんだよ?」

「わたしは……。ユーリが好きだから…。だから……。」

今にも泣き出しそうなエステルを見てユーリはそっと口づけた。

「……!?ユ・ユーリ?!何してるんです?!こういうことは好きな人とって本に書いて…。」

しどろもどろになるエステルを見ながらククッと笑みを浮かべる。

「お姫様だからって我慢してたのに。そんな顔されたらな?……好きだぜ、エステル。」

照れてるのか下を向きながらボソッと言う。
ユーリにしては珍しい。ずっと欲しくて欲しくてたまらなかった。
でも皇帝の跡継ぎになるお姫様だから我慢してた。
その我慢は限界を越えていた。今すぐエステルを自分のものにしたい。
そんな欲望に包まれていた。
なんとなく雰囲気の違うユーリに気付いたエステル。彼女の人を見る観察力はかなりのものだ。

「……ユーリ?えっと…。」

恥ずかしそうにもじもじしながらもお返しにと言わんばかりにギュッと眼を瞑りながらユーリにキスを落とす。
流石にユーリもビックリして我に返る。

「エステル…。俺を本気にさせた落とし前つけてもらうからな?」

ククっと笑いながらエステルをお姫様抱っこして走った。

行き先は………ご想像にお任せしますね?
大好きで愛おしくて堪らない…。
あんたを腕の中に閉じ込めちまいたくなる…。
騎士達から逃げるあんたを助けた日から…。
様々な顔を見せてくれるあんたが。
俺の笑顔のキーなんだ。なぁ、エステル?こんな感情にさせた落とし前…きっちりしてくれよ?
俺の俺だけの愛しいお姫様…?
「こーなったらあたしとダイスで勝負よ!!出目が大きい方の勝ち。あたしが負けたら他のバニーでもなんでも着てやるわ!その代わり、おっさんが負けたらウサ耳に網タイツだからね!!」

「あーら、リタっちそんな大胆な宣言しちゃっていーのぉー?おっさん、今絶好調なんだから☆」

リタお得意のダイスで勝負を挑む。もちろん勝機が見えてるから挑んだ賭け。ぶっちゃけレイヴンのそんな格好は見たくないが、自分にこんな恥ずかしいバニーを着せた見せしめをしたかった。
投げるダイスは2つ。
ジュディスが合図をかける。

「じゃあ、同時に投げてね?lady go!!」

2人とも手の中でよく振った後、一気に机に向かって投げる。
コロコロ…とダイスは気紛れな出目を見せる。
そしてピタリとダイスが止まった。
レイヴンのは8と6。
リタのは8と5。

「ほーら、リタっち。勝負あったわねー☆おっさんの勝ちぃー!!」

「え!?あたしがダイスで負けるなんてありえな…。」

見かねたパティがダイス目掛けてエアガンを放った。見事的中し、リタの出目は8と7に。
もちろんレイヴンにもリタにもバレていない。
ジュディスだけがフフっと微笑んだ。

「おっさんー。喜んでるとこ悪いんじゃが…。リタ姉のが数字大きいぞ?糠喜びで終わったのー!」

レイヴンはまさか!?っと言う顔でダイスを見直す。確かに自分のがわずかに下になっていた。

「まさに神様に仏様とはこのことねー☆おっさん、あたしとの賭け覚えてるわよねぇー?」

「…お、おっさん何の事だかさっぱり…。」

後退りするレイヴンをリタ・ジュディス・パティが笑顔で囲む。
みんなで服をひんむき、無理矢理ウサ耳と網タイツをはかせた。

「あら、意外とお似合いよ?」

「トホホ…。俺様一生の不覚……。」

「ついでに犬尻尾もつけるのじゃ!!」

………ウサ耳に網タイツ。しかも犬尻尾をつけたレイヴンはかなり違和感漂っていた。
その姿を見てリタも鬱憤が晴れたみたいだ。

「あたしに勝負挑もうなんて百万年早いって事ね!!」

その台詞にジュディスとパティが目を合わせ笑いあう。
貴方も楽しい賭事は如何ですか?