最短距離で物事を行うこと | 医療とバレーボールとアメリカ留学記

医療とバレーボールとアメリカ留学記

2016年5月9日からアメリカオハイオ州のオハイオ州立大学に留学することとなりました。日本では埼玉の大学病院でリウマチ膠原病内科医をしていました。冨永こよみ選手を中心に上尾メディックスを応援しております。これからは基本的には留学中の日記が主となります。

何の仕事でもそうだと思うのですが、物事を少しでも速く終わらせるために計画を練ることは、とても重要なことだと思っています。

意外と医者や研究者はその辺の所がルーズが人が多い印象を受けています。

こう思うようになったのは大学院時代でした。

私の研究を指導していただいた先生は、どちらかと言えばフットワークが重い方でした。

私にとってこのフットワークの重い先生が指導教官であったことは、今となって思えばとてもラッキーだと思います。

その先生の指導方法については後々機会があれば書こうと思いますが、とにかく「教えない」教育です。

私はこの先生から学問的なことを時間を書けて教えていただいたのは、初日の1時間だけでした。

その先生から与えられた論文はその初日に受け取った3つの論文のみでした。

残り99.9%は自分でやりました。

ビックリかもしれませんが、これが私にとっては大きな財産だったのです。

それはともかくとして。

そんな先生だったので、最初は実験結果をこまめに提示していたのだが、返事はいつも「この調子で続けよう」「ミーティングで相談しましょう」だけでした。

しかし、この調子で続けるとしても、何をどう続けていいのかがよく分かりません。

そこで、そのヒントとなる機会が、毎週月曜日の夕方に研究室内で行われていたミーティングでした。

そこがほとんど唯一方針を相談出来る場です。

しかし、月曜日までに相談出来るデータがなかった場合、次に相談するのは来週月曜日です。

その間の1週間、やることがありません。

ここで、後1日速く終わらせることが出来れば1週間無駄に過ごさずに住んだのに、という気持ちがわいたのです。

特に極端だったのは最後の1年。

もうほとんどデータもまとまっており、論文を書くだけの状態でした。

その論文に関するミーティングを毎週月曜日の朝に行っていました。

そこで指示を受けて次週までに治すというものでしたが、これがまた大変でした。

極端な時には、図の寸法が少しずれていたので次回までに修正してきて、ということがありましたが、その寸法の修正は1分で終わるものでした。

1分で修正出来るような少しのミスのために1週間待ちぼうけ。

しかし、私はこの時にただ待ちぼうけをしていてはいつまで経っても進まないと考え、先を読んで先を読んでどんどん進めていきました。

もし私がそのことに気づかなければ何年かかったか分かりません。

でも、多分自分だけの裁量でポンポン進めていけば、おそらく10倍速く終わらせることが出来たと思います。


そんな経験をした後に、私は臨床の現場に戻りました。

毎週火曜日の午後にカンファが行われ、そこで治療方針などを決定します。

しかし、そこまでに必要な検査が終わっていなかった場合、じゃあ検査が終わったら検討しよう、という風になることが多いです。

その検査を見て個別にみんなと相談することは、不可能なことではありませんし、私もよくそうしていましたが、病状がそれほど深刻ではない状態だった場合、可能であれば公的な場でより多くの人と検討しながら確実な方法を選んだ方が望ましいです。

ですので、私はこのカンファに合わせて検査をしっかりと終わらせるよう、結構緻密に計画を立てていました。

その意識がないと、治療開始まで酷いと1ヶ月以上かかります。

実はこれにはちゃんとした実績があり、私の場合は患者さんが入院してから治療開始までほとんどの症例で1週間以内で行い、何があっても2週間を超えることはまずありませんでしたが、ある先生は必ず1ヶ月以上検査期間に費やしていました。

そういう先生は治療を開始してからもなかなかスムーズに動くことが出来ず、合併症が生じた時の対応も後手後手になったり、退院させられるのに退院出来なかったりと、明らかに悪循環を引き起こしていました。

この一連の経験から、私はあるポイント、医者や研究者の世界ではミーティングが一つの区切りとなるので、そこを起点にどのように計画を立てて、いかにミーティングで有用な情報を得るデータを集めるかが勝負の分かれ目だと思っています。


ということで、実は今日はちょっと朝早く出勤しました。

その理由は今日の午後3時に行われるミーティングまでに実験を終わらせるためです。

実は日曜日にブログに書いたハイキングに行く前にラボに立ち寄りました。

さらに、先週の時点で、自分の判断で先読みして予め細胞を沢山育てて、いつでも動けるように準備をしていました。

そして今週の時点で来週のことを想定して、私の想定内の結果だった場合にすぐに動けるように、予め次の準備も行っていました。

結果、想定内の結果だったため、来週のミーティングにも間に合いそうです。

その代わり、土曜と日曜の午前はラボで少し実験をする必要があります。

以上のことを何も考えずにやった場合を想定してみたのですが、結果、1週間で終わることが1ヶ月かかってしまうことが分かりました。

単純に4倍です。

それが年余を重ねると、3ヶ月が1年。半年が2年。1年が4年です。

さらに今の2倍量をこなすアイディアを思いつき、タイミングを見て実践したいと思っています。


私がこのように思うようになってから、実は世間一般の常識となっている時間感覚は凄く遅く、本当はもっと多くのことがみんな出来るんじゃないかと思っているのです。

最短距離で物事を行うことは決して簡単なことではありません。

ただ、知識も経験も技術もなく、なおかつ英語も出来ない私がこの地で生きていく上で、おそらく私が出来る唯一のことである「最短距離で物事を行うこと」が、成功への一番の近道だと考えております。

これはおそらくほとんど全ての人に言えるのではないでしょうか。