この時期まで書かずに、とうとう大晦日です。
こちらに掲載していない面の画像を幾つか。
増女は沢山打っていますが…
何度も修正を重ねました。
個展会場の催しで、この面をシテ方の先生が掛け紋付で羽衣を舞われました。
短時間の舞台ですが、ダメな部分に気がつけたのです。
目じりは短いより、長めの方が美しく見える、艶やかな雰囲気が出るため墨入れを伸ばす癖があるのですが、それも限度があり、過ぎると目尻ばかりが目立つ落ち着かないものになります。
同じ種類の江戸期の優れた面、左右の目尻の差し渡しの寸法を図ると殆ど同じ。
感じの違う面でも寸法が決まっていることがわかります。
その範囲の中で遊ぶ、これが重要なのでしょう。
増女は目尻の短い名品も多いですが、長くすると天人や女神の清浄、崇高さに加え、人間的な艶や深い思いのようなものを感じさせるような気がするのです。
兎に角優れた古面を横に置いて写さなければ本当の面は打てないようです。。
この十六はご依頼で打ったものです。
本面は栄満打では?と思う面。
あまり評価されている面打ちではありませんが、やさしめの彫り、淡い色調の彩色から柔らかな印象を受けるので、もっと古いのでは?と思わせるような面を打つ人のように思います。
ただ、何かそこに弱さがあるようで…
目の彫りが優しい、特に上瞼の眼窩の深さが浅くペラっと見えるような気もしました。
最初は本面のそうした特徴を変えて打ってみたいと思ったのですが、彫り進める内にそのような、気持ちは消えました。だんだん良さが分かるというのでしょうか、見え方感じ方が変わってきました。
こういったことは本面を横に制作している場合は度々あることで、最初気に入らなかった面も、次第に良くなり、ついにはお気に入りになったり。
しかし彩色は変えました。
目の墨入れの仕方と肌に赤味を刺す範囲を広げ、華やかな雰囲気を加味しました。
この面は金剛流のシテ方山田伊純先生のご依頼で打ちました。
角材の状態から完成までをテレビ番組としては多い回数、細かく撮影して頂きました。
もう一般的には若くもなく、もの珍しさは無いので取材は久しぶりです。今まで撮影して頂いたことのない繊細な工程もご披露したのでどうなりますでしょうか。
以下当該番組ホームページのスクショです。
10月に一度仕上げた大童子に手を入れました。
一度お舞台に使って頂きましたが、やはり物足りない。
再び彩色に手を入れました。
骨がモノを言いますが、彩色から受ける印象は大切でしょう。
古色の調子、毛描き、疵彩色、光沢…
今年もお世話になりました。
子供は可愛すぎます。
テレビのために写真を選んでいたところ、これが最も初期の面の制作風景だと気がつきました。
ただ彫っているのは木ではありません、発泡セメントなるものだったような…