久し振りに外食して残した・・・・・


これって、少なくとも成人してからは経験したことのない出来事。



あんまりにも不味くて、今日ラーメンを残して帰ってきました。

うむむ。

今思い返しても胆嚢からジワッと汁が湧いてきそうな・・・・・・
そんな強烈なお店でした。




まず最初に断っておきますが、田中はブログ上で食い物を美味いだの不味いだの論評して、時には貶めるラーメンマニアのブロガーたちが大嫌いです。
食べ物なんて人それぞれなんだからさ、なにをシロウトが偉そうに優劣を点けられるの?
一番無意味なブログの中に、ご丁寧にお店のデータ(営業時間・メニュー)と得点が載っているやつがあるじゃないですか?もうね、アホかバカかと。主観をもっともらしくウェブで垂れ流すなと。
ちょっと情報に弱いやつなんて、それに左右されて行きもしないで「あの店はマズい」とレッテル貼り出すのですよ。行っても無い、喰っても無いのにね。
そもそもね、人の好みなんて千差万別だから、簡単に一個のメニューで順位なんて点けられるわーきゃあないってんですよ。

いまさらそんなことを大声で言う田中も相当痛いやつですが、とにかくブログでだらだらとシロウトがウンチク垂れるなと。これが言いたかったわけですね。



そんな前フリの中

本日急な入金があったもんだから、一時的に富豪になりましてね。
じゃあ夕食は豪勢に外食三昧してやろうと。
典型的な貧乏人のその日暮の発想ですが。

まあ、数千円を食費に使ってやるわいくらいの勢いで、夜の街に繰り出したのです。



さあ、流川まであと少しという道すがら、普段とは違う道で向かっていたもので、
眼前に、闇夜に浮かぶ赤提灯の、すごく雰囲気のある一軒のラーメン屋さんが目に飛び込んできました。

「こんなところにラーメン屋があったかな?」

そう思うのも無理は無く、
おそらく昼間は営業をしておらず、夜になると暖簾が出て、煌々と灯りが点ると。
普通の一軒家みたいな体をしているから、余計に気付かないのですよ。

ただ、
周囲が高層マンション
そして、
お店の隣も空き地で高層マンション立地予定ときたもんだから、下町で、頑なに地上げから店を守っている職人気質のお店というものを勝手に想像して、入店しました。これは期待大だ。




お店に入ると午後七時

なぜか店の奥側、カウンターの最深部しか電灯が点いていないんですよ。
つまり、お店の半分が暗黒なわけです。

あれれ?雰囲気がおかしいぞ?

店の奥では60間近の女将が、よれよれのエプロンにくしゃくしゃの頭髪を振り乱しながらネギをザク切りしていました。
いらっしゃいの挨拶代わりにチラリと一瞥されるという最高のもてなしを受けた田中は、もはや最速で食べて店を出ようとメニュー表を見ながら逡巡していました。

が、
ちゃ、チャーシューメン 600円

おお、まるで学生食堂のような値段!!
もしかするとこのお店は、愛想こそ無いものの、昔変わらずの値段で地元民に愛されている良心的なお店では?!
自分の中で補正しながらチャーシュー麺を注文してみました。

女将はごそごそと、とっちらかって薄暗い敵のアジトみたいな厨房で調理を始めました。

店内はお世辞にもキレイとは言いがたく、むしろ営業してすぐの状態なのに、なぜここまでコンビニ漫画本(美味しんぼやこち亀)が至る場所に散乱しています。
ラーメンのかんすいの匂いとは別の、何か臓物が腐って床に撒き散らしたような、一種独特・・・毒々しい臭いが鼻腔を刺激してきました。ラーメン屋でここまで殺人的なのも珍しいです。
おまけにカウンターがベタベタ油でよくヌルつきます。薄暗い照明と相まって、最悪に気持ちが悪いです。





よし、これで料理がマズかったら詐欺だな。



頭の中に、「店の衛生状態は最悪。でもそれに反比例してラーメンは美味かった!下町の名店発見」というブログタイトルを想定しながら、腹が減っていたのでおでんコーナーに。

茶色・・・というよりも真っ黒なヘドロのような液体に、おでん具がざくざく突っ込まれています。それが店内でも最も光が届かない場所、入り口付近にあるものだから、まあ闇鍋かと見紛うくらいの存在感。
だし汁の表面には、アクともほこりともつかない得体の知れない何かが、ゴポッゴポッ、洗剤の泡のように飛沫を飛ばしまくっているのです。

よし、これで料理がマズかったら・・・

再び同じフレーズを唱え、ええいままよとばかりに「牛すじ」と「玉子」をチョイス。
ラーメン前のウォームアップにと、それぞれ食べてみたのですが・・・



ま、まずい・・・・・・・・・・・・


おそらく業務用のおでんダネと思しき材料を使って、どうすればここまでマズく作れるのか不可解な味。
すじがとにかくゴムのよう
玉子はひたすらに醤油の味 カッチカチに茹であがりすぎていて、一体何週間鍋の中に居たのだと言いたい絶品調理具合なのです。
また、さきほどのゴポゴポ泡吹いていたものが、おそらく灰汁だったことが食べてみて実感できたので、この女将は鍋に具材をぶちこんで、点火さえすればおでんだと言い張るトンデモな野郎だと証明されました。いや、ほんと。



おでんでここまでのクオリティということは・・・

不安がマックスになったところで、女将は黙って丼をカウンターに乗せてきました。

果たしてチャーシューは・・・

一見すると普通のラーメンしているのですが、
照明のせいなのか、おでんの毒素で視界が霞んできたのか・・・麺の色がえらく薄いのです。薄い、黄色?
スープはかろうじて広島醤油とん骨のオーソドックスな色合いを醸し出していますが。

まさか味が薄いということはあるまい。

さきほどの胃袋に染みができるほどの醤油味おでんを念頭に、まずはスープをひと啜り。

げぇーーーーーーーーーーーッ

う、薄いッ

何の深みも滋味も感じられない、醤油を湯で割ったようなサラサラのスープ。

これに麺はどう絡むのか?
続いて麺を食し、

どっげええええええええええ。これまたそうめんのような、腰のないフニャチン麺。
薄い色が悪いほうに作用した、ラーメンとそうめんの間、限りなくそうめんい近い中華麺。
噛まずに舌で食べ進められます。

これはトータルでひどいな・・・・・

ラーメンは半分 おでんはひと齧り

小学校以来、食べ物で「本当に無理」な状況に陥りました。

仕方ない、残すか。

不本意ながらも、食べ物の半分以上を残して、清算して店を出ました。



時刻は夜の七時半。

近くにマンションも運送会社もオフィスも軒を並べる絶好のロケーション。
だのに一向に家路を急ぐ方々は、あの店に入ろうともしません。
よくよく気付けば、店の前はタクシーのさぼりスポット。真正面の公園に、運転手たちがわらわらと休憩しに集まっています。なのに、誰も入らないとは。


もう一度店を振り返ってみました。


辺りの喧騒とは一線を画する、都会の狭間に急に現れた昭和の香りがする異物。
それはあたかも伊丹監督のたんぽぽを思わせる年季の入りよう。
店の二階は窓が全開になり、女将のものと思しき洗濯物が、闇夜にわさわさたなびいている。
このお店は過去にどれだけの胃袋を満たし、どれだけの人を失望に陥れたのか?

映画のロケセットとして使うには最高の建物です。