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あちらからこちらへ

2017-02-17 09:59:31 テーマ:エッセイ
 ふと、何かが気になった。本に落としていた目を上げ、窓の外を眺めてみる。降車したばかりの人たちがホーム端の階段に向かって歩く姿が見える。多くは仕事帰りの人たちで、中には塾の帰りだろう、デイパックを背負った小学生くらいの子たちも混じっている。

 こちらは春物の服でも買った帰りだろうか、ショップの名前が入った大きな紙袋を肩にかけた女性が改札に向かっている。周囲の人たちに比べると心なしか表情も明るく、また足取りも軽く見えるのは彼女の気持ちが少し上がっているんだろうが、それだけだろうか? ふとそんなことを想う。

 扉が閉まり、電車が動きだした。改札に向かう人たちを追い越しながら少しずつ加速していく。そうしてまた流れ始めた窓の外の光景を眺めていて、気になっていた何かに、ようやく気がついた。

 うちの駅だった……。

 またやってしまった。今月に入ってこれで二度目というのだから困ったものだ。とはいえ、フィーリングの合う本に出会うと、こうしたことが少なくない。降りるべき駅を過ごしてしまったり、駅を降りた途端、今回の目的地はここでなかったことに気付いたり。本の世界に入り込むあまり、現実の世界に戻るのに少し時間を要するのかもしれない。

 いや、それとも単に歳か? できれば前者であることを望みたい。
 
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バレンタインを想う、いや想わない

2017-02-15 09:31:23 テーマ:エッセイ
 バレンタインにもトンと縁がなくなった。

 まあ、すでに齢50を過ぎたオッサンで、平日は単身、加えてオフィスに女子がいないとなれば当然と言えば当然だ。だからと言って、女性のいるお店にでも行けば、いくつかはいただけるに違いないが、何かしら狙ってると思われそうで、それも悔しい。もっとも、この歳になればチョコレートよりもワインやお酒の方がよかったりするし、先日のお休みの日には連れ合いとランチもしたことだし、まあこのバレンタインをキッカケに何かしら進展させたいと思う人たちがうまく行けばと想う。と、この辺り、一応は達観の域も見えては来たような気もする。

 ただ、少し、ほんの少しだけ、寂しい気がしないでもない。

(あ~、高校の頃には大きな手提げ袋を一杯にして帰ったこともあったのに、あ~それなのに、それなのに)
 
 今年はついにゼロに終わった……。
 
 いかん、オチもない、まんまやがな。
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狙わない

2017-02-03 08:53:14 テーマ:エッセイ
 狙った感じじゃないのがいい。周囲の反応を期待するわけでもなく、遠くの誰かに見せるために近くの誰かに撮らせているわけでもない。
ましてや自分たち自身にカメラを向けて、いわゆる自撮りをしているわけでもない。何かの練習なのか、それとも単に遊んでいるだけなのか、いずれにしても存分に楽しんでいる様子だ。

「ほな、行くで」
「うん」
「せぇ~の」

 ……
 ……

「あかんやん、ハハハ」
「ごめんごめん、右からやったね、よしっ!」
「よしっ、て……。ほな、も一回やで。せぇ~の」

 窓越しのため細部までは判らないが、こんなやり取りだったに違いない。

 二人の女の子たちは、キッと顎を上げ足を踏み出した。頭の上から糸で引っ張られているような感じで背筋を伸ばし、胸を張り、お尻を上げ、歩調を合わせて颯爽と歩く。小生には見えないが、恐らく二人の前にはランウェイが伸びているんだろう。

 いわゆるモデル歩きは否が応でも目を惹く。と思ったが、周囲の人たちは手元の機械に夢中なようで、どうやら誰も気がついていない様子だ。もしカウンターの隣の席の女性がこの窓ごしの光景に気付いていたなら、お知り合いになれるチャンスではあったが、彼女たちのレビューは、ほんの4~5mで終わってしまったから、残念ながらそれも叶わず仕舞いになってしまった。もっとも、手元の機械の上で激しく指を滑らす仕草が見えた時点で、積極的にお知り合いになろうとすることはなかっただろうが、それはともかく、何かしらいいものを見せてもらった。
 
 はしゃぐ彼女たちの表情がいい。
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今さら新年の抱負など

2017-01-14 09:01:25 テーマ:エッセイ

 さてさて、気がつけばすっかり年も明けきって、すでに1月も半ばに差しかかってしまった。何のご挨拶もできないまま、当雑記もなかなか更新されることなく、ほとんど開店休業状態になってしまっているが、とはいえ書いていない訳でもない。とりあえずUPできないだけだから、この辺りご理解いただけるとありがたい。

 

 というのも、元々当雑記は文章の練習のために綴り始めたわけであって、それを思えば、自分で言うのもなんだが文章に関しては当初から比べると、下手の横好きなりには上達したと思う。喜ばしいことだ。が、こうなってくると困ったもので、また少し背伸びをしたくなる。下手の横好きなりに、クオリティにもこだわるようになってしまうのだ。

 

(ん? この表現は筆致に合わへんのちゃうか?)
(言い方変えてるだけで、同じこと2回書いてるし……)
(あかん、ええ言葉が見つからへん……)

 

 結果、陽の目を見ることなく、いたずらにノートが殴り書きで埋まるだけで終わってしまう。

 逆にこんなこともある。

 

(おっ! これええんちゃうか? この展開、たまらんがな……)

 

 いわゆる自己満足という奴だ。が、これもまた困ったもので、ちょっと満足できるものが書けたりするといい気になって、もう少し先を見たくなってくる。ただし、こうしたチャレンジには制約が付きものだったりするから、またまた悩ましい。例えばこんな制約だったりする。

 

『応募資格は不問。但し、未発表のものに限る。(ブログ等含む)』

 

 結果、それなりに満足できる仕上がりになった文章というのは、またまた陽の目を見ることなく、悲しいかな応募作品の一つとして埋もれることになってしまう。今後も埋もれるだけになってしまうかもしれないが、今年は本気でチャレンジしてみようかと、ようやく一月半ばにして抱負みたいなものを書いてみたというわけだ。

 

 ちなみに、もう少ししたら、一編だけ某誌に載せていただける予定だが、まあそれはそのときのこととして、さてさて、今年の年末にはどんな心境でいるか、ちょっと楽しみではあるが、まあそれなりにボチボチ行こうかしらと思っておりますです、ハイ。

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突然はここから生まれた?

2016-12-14 09:50:42 テーマ:エッセイ

「ラブストーリーは……」

 

 ラジオから流れてきた音に、ふとそんなフレーズが頭に浮かんだ。と言っても、いきなりのギターカッティングで始まる我々世代なら誰もが知っているあの曲ではなく、最近の若者世代の曲だ。パンチの効いた、なかなか重めの音ながらも、その歌詞は近いようで遠い彼女への想いをつづるラブソングになっている……。

 

 考えてみれば、若い頃に比べて歌詞が頭に入ってくるようになった。ふと流れてきた何十年かぶりの曲を耳にして、その歌詞の意味するところに今さらながら新しい発見をしたりする。きっと昔は、メロディに任せて歌詞も音の一部として聴いていただけで、齢50を超えて、ようやく歌詞を歌詞として、言葉として受け取れるようになれたようだ。

 

 今さらかい? というところだが、正直今さらだ。こうして下手の横好きなりに文章を書くようになったからか、それとも単に歳を重ねたからなのか判らないが、いずれにしてもそんな言葉に気付けるようになったというのは悪くない。

 

 そうして、いろんな曲の歌詞に注意して聴いてみると、実にラブソングが多いと思う。もちろん、理不尽なものへのメッセージを歌にした社会派の曲も少なくないが、そんなメッセージの中にも近しい、もしくは密かに想うあの人に対するメッセージが見受けられたりする。確かに、怒りを持続させるには思った以上にパワーが必要なのと同様、硬派を貫き続けるのもしんどいし、詩の上でカッコつけすぎても普段の行動がそこまで伴っているわけでもないだろうし、ついでに全体の歌詞のバランスを考えればアクセントになるのは間違いないし、そうして改めて身近なところに目を向けて素直な気持ちを書いてみた、そんな感じかも? と勝手にライターの気持ちを思ったりしてみるが、まああながち外れてもいないだろう。結局は、どんな硬派なメッセージも、社会的な発言も、誰かを想うことから発しているに違いなく、行きつくところはこの言葉ということだ。

 

「Love」

 

 この言葉も今では一般的にも使われるようになったとは思うが、昔は、特に奥ゆかしさが美徳とされていたここ日本では、Loveや愛なんて言葉は、もっぱら歌詞や映画のセリフなどエンターテインメントの世界、感性の高い一部の人たちの間で使われる言葉だったから時代も進んだということだ。まあ、その分、我々も少し素直になれるようになったということかもしれない。なるほど、結局ラブストーリーは突然以前に必然だったということか。この辺り、うまくかけたタイトルだったとは、流石に小田さんだわ。

 

 定かではないが……。

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つりバカ日誌? ん?

2016-11-21 23:25:56 テーマ:エッセイ

 準備を怠るな!!

 

 今さらながら、この言葉が身に沁みる。……と思ったところで始まらない。始まらないどころか今さら遅い。あと残り7kmあまり、ここからは苦行となった。

 

 考えてみれば、ここ6年あまり、年に1本か2本フルマラソンの大会に出場し、そのためそれなりにトレーニングを続けているが今年は確かに走れていない。仕事が忙しくて帰りの遅い日が続いたことで定期的だったジョグが不定期になり、不定期になれば走れる時間ができても、何かと理由をつけてサボってしまったりと、振り返れば走行距離はいつもの年の半分以下だったから致し方もないか。さらには、加えてこの暖かさはなんだ? 天気がいいのは気持ちよくてうれしいし、沿道の人たちも快適に違いないが、季節外れのこの気温は人一倍汗かきの小生としてはまったくお呼びでない。いつも以上に水分補給に気を付けていたつもりだったが、やっぱりダメだった。

 

 最初は左もも前部に来た、大腿四頭筋という筋肉だ。

 

「うっ、やばい……」

 

 筋肉が硬直し、固まったまま戻らない。それでも負けるもんか止まるもんかと、少しペースを落とし、そのまま騙し騙し走り続けていたら、次は右の大腿四頭筋に加え、ハムストリング※腿の裏(大腿二頭筋)まで攣りだした。ここは塩分補給が必要だと、慌てて塩タブレットを取り出そうと腰のバッグに手を回した途端、今度は右のわき腹(外腹斜筋)が攣った。少しでも楽な体勢を取ろうと右わき腹を伸ばす感じで身体を少し左に傾け右腕を挙げる。

 こうなると筋肉反応は次々連鎖していく。上げた右腕のおかげで収縮した右の上腕(三角筋)が攣り、左の肩甲骨周り(棘下筋)が攣り、左の臀部(大臀筋)が攣る。

 

「おっ、あっ、いっ、うっ、え……」

 

 痙攣にもがきつつ、いろんな体勢を試みるも次は右、次は左と痙攣は治まらない。ここまで何とか走り続けてきたが、ついにストップしてしまった。

 

「あぁぁぁ……」

 

 そのままでは再スタートもままならない。痛みに耐えつつ、なんとか攣った部分を分散させようと腕を上げたり、腰を横に突き出したり、肩をすぼめたり、痙攣が治まるのを待つ。恐らく沿道の人たちから見れば「なにを身体クネクネさせてんの?」と思われるに違いないが、今さらどう思われようと構わない。とりあえず緩めないと、まだまだ先は長い。

 痙攣が少し治まったところを見計らって、再び走り始める。が、またしばらくするとまた痙攣が始まる。攣りにもがきつつ緩むのを待ち、緩めばまた走り始める、この繰り返しだ。だが、悲しいかなこれも長くは続かない。緩んでから攣るまでの間隔がしだいに短くなり、ついには常時痙攣状態が続くことになってしまった。加えて、すでに体力も消耗し切ってしまっているから、身体自体すでに思うように動かせなくなってくる。周囲のランナーも多かれ少なかれ同じ状況だ。すでに歩きに変えたランナーや次の一歩が踏み出せないまま立ち止まるランナー、メディカルの力を借りてストレッチしてもらっているランナーなどが目立つようになってきた。

 

(ここでなら、止まっても目立たないからええかも……)

 

 ともすれば気持ちが萎えてしまうが、それでもとにかく前に進まないとこの苦しみからも抜けられないのは確かだから、なんとか気持ちを奮い立たせる。

 

「がんばれ~!」

 

 なんともありがたい声だ。大人も子どもも女性も男性も、誰もかれもがわざわざ沿道に出て、見ず知らずのランナーたちに声援を送ってくれている。きっとこの声がなければ、ほとんどのランナーはゴールに辿り着くことはできないに違いないと思いつつ、前半の20km以上に長くに感じるこのラスト2kmほど、沿道の声を借りてなんとかゴールに辿り着くことはできたが、昨年に比べて30分弱ほども遅く、スタジアムで待っていた連れ合いは救急車に運ばれていないかと本気で心配していたぐらいだ。結局3年前、交通事故の1ヶ月後のレースとほぼ同じタイムというから情けない。4時間15分台、とにかく練習不足が身に沁みた大会になったが、一点、攣りまくりのおかげで、筋肉の名前には結構詳しくなったかしら。

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年に一度の写真です

2016-11-13 04:59:37 テーマ:お知らせ

ラジオ考

2016-10-21 08:39:41 テーマ:エッセイ

 ラジオが好きだ。

 

 ボタン1発でお目当ての放送局に合わせられるラジオなどない時代、耳を澄ませて音を拾いつつ、一番クリアに聴こえるところで針を止める。針の位置が微妙にずれているとは思いながらも、まあそんなものかと聴きはじめたのが確か小学校5年生くらいだったか。そう思えば、もうかれこれ40年の付き合いだ。当時は今のように検索すれば何でも出てくるどころか、テレビにキスシーンが出てくることすら珍しく、また水着姿の女性が雑誌の表紙を飾るのも、まだまだ少ない時代だったから、くだらぬ話や大人の事情、時折混ざるムフフな話など、大人たちのフリートーク感満載の世界に夢中になったものだ。

 

 何より、そのフリートークの合い間に流れる音楽は、歌謡曲や演歌など当時のテレビのそれとは違ってカッコよく、そこからは一気にラジオの世界にはまっていく……。トーク中心のAMから音楽中心のFMへ。そのうち自身の感性に合う番組、DJさんなどお気に入りができるが、かと言って依存しすぎるわけではなく、本を読みながら、仕事をしながら、掃除をしながら、ほどよい距離を保ちつつ、ふとトークに耳を傾け、流れてきた音楽に身を任せる。それは齢50を越えた今でも変わらない。

 

 ただ、聴き方が変わったことだけは確かだ。少し前からはラジコなるものが登場し、地下やビルの影など電波が届きにくい場所でもインターネット経由でクリアに聴くことができるようになり、さらには本来電波の届かない遠く離れたエリア外の地域でも聴くことができるようになったから、長年平日単身赴任を続けている小生にとっては週末でもお気に入りの番組が聴けるこの状況は非常にありがたい。つい先日からは、オンタイムの放送を聴き逃してしまったとしても、1週間のうちなら聴き直しが可能というタイムフリー機能まで登場したというのだから、これはもうラジオとは別物の感覚だ。

 

「そら、ラジオやなくて、ラジコやからね」

 

 そうだった。ラジコ、そうラジコだった。心しておこう。

 

 それはそうと、このネーミング、恐らく名付け親はまだ「子」の多かった小生と同じ世代の人ではないだろうか。ラジ男に対し、ラジ子。例えるなら、和男に対する和子、秋男に対する秋子、ジャイアンに対するジャイ子のようなもので、音の響きだけで性別が判るという安心感がある。近ごろのように音だけでは性別どころか、名前なのかさえ窺い知れず、窺い知れないからと書いてある文字を見れば、音と見た目が一致せず、さらにはそんな名前を思いつく親の頭自体が理解不能という状況だから、こうした判りやすさというのはありがたい。

 

 まあ、実際このネーミングがこうして性別から来ているかどうかは知らないが、それはともかく変わらずラジオを楽しもうと思う。最近は少しばかり、テレビのニュースなどと同様、双方向を意識したSNSとの連携が過ぎているような気がしないでもないが、この辺りほどよい距離を保つことを意識しつつラジオを楽しめればと思う。

 

「あれ? ラジコちゃうの?」

 

 ん? まあ、エリア外なら仕方ないが、ただ気がつけば隣のテーブルの女性がクスッと笑うタイミングも、指先が刻むリズムも、イヤホンから聴こえるラジオの音にシンクロしていることを思えば、小生としてはやはり同時進行感、ライブ感を感じられるラジオがいい。

 

 もしかしてお知り合いになれるかもしれないし……。

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長い一日

2016-09-22 11:16:34 テーマ:エッセイ

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 

 アナウンスが聴こえてきた。

 

「お客様にお知らせ致します。この先、○○駅○○駅間において、台風による倒木のため、撤去作業を行っております。復旧には今しばらくかかる見込みでございますので、そのまま車内にてお待ちいただけますよう、お願いします。本日は列車が遅れ、誠に申し訳ございません」

 

 30分遅れの各駅停車に乗るか、それとも1時間半以上遅れている次に着くはずの特急列車に乗るか、少し思案したが結局大阪に着くにはどちらが速いか皆目見当がつかないとのこと。であれば、来た電車に乗るかと、各駅停車に乗ったところがこれだ。動き出して2~3駅ほど過ぎたところで停まってしまった。

 

 まあ、ジタバタしても仕方なく、そのうち復旧するだろうし、朝が早かったものだから、一眠りしようと目を閉じる。考えてみれば向かう先が台風直撃の恐れがあるからと朝4時に起きて、早めに客先に入ったが、本当にまともに直撃を受けるとは思わなかった。客先は3時間以上停電し、帰りの電車も台風の影響で動かず、ようやく動き始めたのが19時半過ぎと、とにかく長い一日だった。とはいえ、台風でなくても大阪まではまだこれから3時間近くかかるのだから、まだまだ長い。そんなことを思いつつ、眠りに落ちた。

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 

 チャイム音のような軽い音の「となりのトトロ」のメロディから少し間が空いた後、しばらくして改めて社内アナウンスが入った。

 

「お客様にお知らせします……」

 

 腕時計に目を遣ると20時過ぎ。どうやら30分ほど眠ったようだが、まだ復旧のめどは立っていない。

 

「なかなか、動かないね」

 

 他の席から話し声が聴こえてくる。まあ、そのうち動くだろうと、その声は長閑にも感じられる……。が、それもここまでだった。

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 

 トトロのメロディが鳴るもアナウンスが入って来ない。どうしたんだと思っていると、忘れたころにアナウンスが入る。

 

「お客様にお知らせします……」

 

 まだまだ復旧の目処は立っていないようで、伝える内容はあまり変わっていない。恐らく、ここまで連絡が届いていないんだろう。気がつけば、時計はすでに21時半を過ぎている。あきらめているのか、いつの間にか周囲の話し声もまばらになってしまっている。

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 

 そんな中、聴こえてくるのはトトロのメロディばかりで、続くアナウンスは聴こえてこない。車掌さんも、だんだん落ち着かなくなってきているのかもしれないと思いつつ、この状況をひたすら耐える。

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 ……

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 ……

 

 何度かのトトロの後、久しぶりにアナウンスが聴こえてきた。

 

「お客様にお知らせします。倒木の撤去作業がようやく完了しましたので、列車はまもなく動き出します。なお、和歌山駅より先、大阪方面にお越しの方は、この先、海南駅にて後続の特急列車にお乗換えください」

 

 ようやく列車が動き出した。この時点ですでに24時前、まあ大変な日になってしまった。列車が海南駅に到着し一旦降りて伸びをする。同じように特急を待つ人たちの表情も一様に疲れた表情だ。

 

「ティリリリ ティッティリ、ティッティリ……」

 

 突然、後ろからトトロのメロディが聴こえてきた。

 

 えっ? 振り向くと、そこには男性がいるだけだ。手にした携帯に目を落としている。

 

(何や、トトロはオッサンやったんかい!)

 

 思わず口に出しそうになってしまった。それにしても紛らわしいオッサンだ。ただ、結構アナウンスには合っていたから、そんなことを思い出すとふと笑えてきた。

 

 さてさて、後続の特急も来たことだし、ようやく帰れそうだ。

 

 19:39発、大幅遅れの特急に乗れたのは、24時を10分ほど過ぎた頃だった。

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遅ればせながら……

2016-09-19 19:43:39 テーマ:エッセイ

 この春先からの怒涛のような忙しさに、身体が、心が、いつ悲鳴を上げだすかと思っていたら、先に音を上げたのはすでに10年を超える付き合いになる、こいつだった。

 

「もしもし~、お世話になります。はい、今大丈夫で ブチッ……」

 

 会話中、いきなり電源が落ちてしまった。しかも今までなら、再度入れ直せばなんとか復活していたのに電源が入らない。

 

 確かに予兆はあった。すでに何か月か前からカメラ機能にすると電源が落ちるようになってしまっていたし、少し前にはメモリ内に残っていたはずの写真はすべて破壊されてしまっていたが、何とか電源だけは入り、通話には問題なかったから忙しさにかまけて、ここまで引っ張ってしまったというわけだ。Oh! She's Gone、ここまで使い切れば彼女も本望に違いない……。

 

 とはいえ、そんな嘆いているわけにもいかない。小生にとって忙しいというのはイコール、電話が多いということだから、その電話が使えないのは即致命傷になってしまう。急ぎ近くのShopに飛び込み、相談するも今さら修理もままならず、かと言って新しいモノに変えるとすれば1時間以上もかかるというのだから困ってしまった。

 

「すぐに使いたいんですが、なんとか、ええ方法ありませんかね?」

 

 こんなとき、やはり頼りになるのは、お姉さんだ。

 

「お店のデモ機なら、貸し出せますが……」

「ありがとうございます、助かります!!」

 

 これしかないんですが……、とお姉さんが奥から出してきたのは、ショッキングピンクのいかにも女子高生が持つようなもので、オッサンが持つと恐らく周囲からは気持ち悪く見えてしまうに違いないが致し方ない。一瞬、「故障中につき借り物です」と札を付けたい衝動に駆られたが、女々しい気もして、まあいいかと使っているとこれも慣れてしまうものだ。気がつけば、そのまま使い続けて10日ほども過ぎてしまい、そろそろ返却の時期が近づいてきた。

 

「う~ん、どないしょうかなぁ、スマホ? ケータイ?」

「そら、今さらスマホやろ! 今さらガラケーの選択肢はないで。こんな仕事してるんやし……」

 

 周囲の声はどれも同じだが、仕事以外ではそれほどネットも使わないし、月々が高くなるのも嫌やし、と気持ちが定まらないまま、休日を迎えた。

 

「悩んでるんですよね。スマホとケータイ比べたら、月々の費用って全然違うんですよね?」

「いえいえ、今はそれほど違いはないんですよ」

 

 どうやら、もう以前のようなほぼ通話オンリーのような契約形態はなくなってしまったようだ。となれば、ただでさえ小さいものが見づらくなっている小生としては画面は少しでも大きい方がいいと、今までのこだわりなどなかったように、晴れてスマホユーザと相成ったが、意図せず電話をかけてしまったり、逆に切ってしまったり、まだまだ慣れない。

 そしてそれは小生だけでなく、周囲も同じようだ。

 

「たまけみさん、似合わんわぁ」


 遅ればせながら、たまけみ、スマホデビューいたしました。

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