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セーフティネットになろう

2016-05-12 09:43:56 テーマ:エッセイ
「今年は、あかんのかな……?」

 少し前から、心なしか寂しげに話していた連れ合いだったが、連休に入って急に騒がしくなり、あっちやこっちやいろいろと試した結果、ようやく連休後半になって落ち着き先が決まったようだ。

「今年は、えらい遅かったねぇ」

 確かに連れ合いがそう言うのもムリはない。以前の雑記を掘り起こしてみれば、すでに連休前には出来上がっていたのだから、例年に比べると半月ほど遅い。現れたの遅ければ、現れてから手を付けるまでも結構時間がかかっていたのは、一応休み中観察していた小生が言うのだから間違いない。

 朝早くから声が聴こえるからと、そっと窓を開けて覗いてみれば仕事を始めているわけでもなく、それ以前に場所を確保したわけでもなく、傍らの柵につかまって何を話しているのか、やたらと騒がしいだけだったり、あっちからこっち、こっちからあっちへと飛び回っているだけだったりと、そんな状況だったから、「誰かさんみたいに喋ってるばっかりやん」と変なツッコミが来てしまう状況だった。

 となると、悪いクセで、またここで輪をかけて変なフォローまでしてしまう。

「いやいや、きっと始めたら早いんちゃう? 仕事が早い! 福屋工務店いうやっちゃ」

「えっ? 何それ?」

 案の定、通じない。この辺り、知ってる者には簡単でも、知らない者に対して説明するのは難しい。とりあえずスルーしてもらう。

 ……

 と、まあそれはともかく、いずれにしろ今年もこうして戻って来てくれたわけで、つい最近ラジオで耳にした、近ごろは家が汚れるからとツバメが巣を作り始めたそばからすぐに壊してしまう人が多いらしい、なんてことを思えば、世知辛い世の中、彼らも場所の確保が大変なんだろうと思う。都会ではほとんどツバメを目にしなくなったということもあるし、とりあえず小生の家くらいは、彼らのために場所を貸してあげようかと思ったりする……、が、ちょっとちょっと、今年はまたエライ場所に作ってくれたもんやねぇ。

 今までは、玄関の庇の下辺りで、玄関の扉から1.5mほど離れていたから、まだましだったが、今年確保した場所は玄関の扉のすぐ上だ。玄関扉もかなり汚れるに違いない。が、前述の話、とりあえず彼らのセーフティネットになると決めたわけだから致し方もない。ま、汚れたら掃除したらいいわけだし……。

「ほな、玄関の下、汚れるからダンボール敷くなり、準備しといて」

 おっと、そうだった、この辺りの準備は、小生の仕事だったわ。ダンボールを敷き、そのまた上に新聞を敷き、飛ばないように垂木を置いてと……、さてさて見守ってあげましょうかね。
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お祭り騒ぎの片隅で

2016-04-09 08:50:05 テーマ:エッセイ
「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 今年も、この季節が来た。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 小生の職場は、造幣局の桜の通り抜けの起点になる駅のそばだから、毎年この時季になると周辺は人でごった返す。特に今年は、外国語の比率が高いようで、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語など、いろんな言葉が飛び交っており、意図せずスピードラーニング状態になっている。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 ……

 なかでも目立つのは爆買いという言葉も作り出したかの国であることは言うまでもなく、恐らく大挙して日本にやって来ているに違いないが、それに加えて声がでかいものだから余計に目立つ。ある程度の人数が集まると急にボリュームが上がるようで、そこら中から張り上げる声が聞こえてくる。

「☆+□○$”%#!」

 どうやら、店先を覗いていた仲間を呼んでいるようだ。

「……桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 お昼ともなれば、それなりにお店が集まっているところでありながら、どのお店もいっぱいで、店の外にまで人が溢れ、悲しいかな行きつけのお店にも行けない。笑顔で出迎えてくれる女性陣が密かな楽しみだったりするから、ちょっと寂しかったりもする。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください……」

 致し方なくパンでも買ってと、またまた人が溢れるコンビニのレジに並んだ末、事務所に戻ったが、ふと思えば、今日はすでにこの声を何度聞いていることだろう、

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 交差点の角でハンドマイク片手に呼びかけていた警備のオジサンの声だ。気がつけば、同じフレーズを繰り返していて、事務所に戻ってからも、この声がずっと聞こえている。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 交通量も多い場所だから事故があってはいけないと、皆に呼びかける声は、荒げることもなく、面倒くさそうな雰囲気もなく、落ち着いた調子で道行く人に呼びかけている。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 道行く人たちにはあくまでも一瞬耳にするだけで、きっと右から左に抜けて行くだけに違いないが、オジサンは今日一日こうしてごった返す人たちに混乱が起きないよう、注意を促し続けているのだ。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 交差点に溢れる人たちは、それぞれ一緒に来た友達や恋人やいろんな仲間と喋りながら、またこの時季だけ急にお店ができて販売が始まる造幣せんべいなどを手にしながら、みな笑顔に溢れつつ、オジサンの誘導に従ってゾロゾロと桜の通り抜けが行われている造幣局に向かっていく。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」

 そんなオジサンをふと、紹介したくなった。翌日は出張で朝が早いため、7時過ぎには事務所を後にしたが、まだオジサンの声が聞こえていた。

「桜の通り抜けにお越しの方は、信号を渡らず、矢印に沿って歩いてください」
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太陽に向かうか? 太陽を背にするか?

2016-03-31 08:53:12 テーマ:エッセイ
 太陽に向かうか? それとも太陽を背にするか?

 ふと、そんなことを考えてみた。

 車を運転しているときには、できれば太陽に向かいたくはない。特に夏の夕方など、低い位置からまともに目に飛び込んでくるまだまだ強い陽射しは、場合によっては危険を伴う。視界を遮られたり、そこまでいかなくとも逆光のおかげで信号さえ見えにくかったりするから、サングラスをかけ、サンバイザーを下ろしつつ、さらに目を細めて慎重に運転しなければならない。

 さらに逆光で特に気を遣う場面と言えば、記念撮影だろう。

「えっ、逆光? もう~、せっかく並んだのに~! 先に言うて~な~!」

(こっちから撮ってね、なんて言いながら勝手に自分たちが並んだくせに、顔が暗くなってしまいますよ、と言ったとたん、これだ。まったく、女という生き物は困ったもんだ……)

 ぞろぞろと撮影場所を移動する女性の集団を横目で見つつカメラを弄ぶ男性の嘆きが聞こえてきそうだ。


 モノをクッキリと、ハッキリと見るには、また見せるには光が大切だ。光を当て、明るい面を見せることが望ましい。だから、太陽に向かうか、それとも太陽を背にするか、そんなことを実用的に考えた場合には自ずと太陽を背にする方に支持が集まってしまうかと思うが、小生どちらかと言えば太陽に向かう方が好きだったりする。

 朝の電車なら、東側の窓に向かい、信号待ちの交差点では、紫外線を気にしてビルや街路樹が作る陰に女性陣が集まる中、できればそこへお邪魔したいとの邪念を振り払いつつ、陽の当たる場所に出る。そして太陽を見上げる。もちろん、目を傷めてはいけないから直視はできないが、目を細めつつ少し視線を外すと放射状に光の筋が見て取れる。太陽の絵を描いてみてください、との課題が与えられたなら誰もが描く線、太陽のシャワーという感じで小生お気に入りだ。このシャワーを浴びていると何かしら力をもらっているような気がしてくる。さらには目を閉じてみると、しだいに目の前が赤く広がり、何とも暖かくて心地よい。ふと、子どもの頃、屋根に干した布団の上で寝転んでいたことを思い出したりする。

 が、そんな気分も何秒と持たない。まあ、行き交う人の多い交差点で空を見上げて目を瞑っていたらぶつかられても致し方もなく、逆にちょっと申し訳なかったかもしれない。ただ、ぶつかったならぶつかったで、できれば何かしら一言発するか、頭を下げるかしてほしいところだが、当の相手は持っていたスマートフォンを落としそうになってそれどころではないようだ。

 一瞬、ムッとしかけたが、太陽のおかげか、みんな、それぞれいろいろ忙しいのだろうと、そんな気分になった。ふと肩をすくめつつ、横を見ると一部始終を見られていたのか、若い女性と目が合った。ちょっと小首を傾げて肩をすくめる仕草は、どうやら小生と同じ気持ちのようだ。

 周囲を気分悪くさせずに済んだと胸を撫で下ろしつつ、笑顔を返し、その場を後にする。
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気がつけば春

2016-03-09 08:55:32 テーマ:エッセイ
 忙しくなり、しなければならないことが増えすぎると、とにかく時間の確保が必要だ。23時だった就寝時刻を1時にして2時間を確保し、さらには勝手にオフシーズンということにして走る時間を削り1時間半、ランチ後のコーヒーを削って30分、都合4時間を確保したことになるが、それでも足りないとなれば対象はさらに広がる。

 本を読む時間が削られ、食事にかけていた時間が短くなる。場合によっては買ってきてもらったお弁当を広げながら雑務をこなさないといけないこともある。目的地までのルートは最短になり、最短になった移動時間でさえ、頭の中ではこの後の段取りを考えたりと、何かしらの仕事をこなしていたりする。常に効率を考え、時間をムダにしない……。

 忙しさの渦に巻き込まれるというのはこんなところなんだろう、ふと気がつけばまるで出来るビジネスマンのような思考になってしまっている。自分では、いろんなことを考えているつもりが、いつの間にかその大半を仕事に占められてしまっていて、自身できれば距離を置きたいと思うような人間になってきているような気がしてきた。


 ということで、さらに睡眠時間を削りつつも、いつも以上に早く出かけたというわけだ。そうしてまだ動き出す前の街を歩きながら朝の空気を大きく吸い込むと気持ちも頭もスッキリして、リセットできた気がする。何より、こうしてものすごく久々に雑記に落とし込もうとしているのだから、とにかく傾向としては悪くないはずだ。それなりに気持ちに余裕が出来つつあるのは確かなんだろう。

 気がつけば店先にはピンク色が目立ち始め、街行く人たちの装いも明るい色になってきた。となれば、少し浮かれ気分で恋でも見つけたいところだ。

「くしゃみ三つは惚れられた、いい気分いい気分……」

 くしゃみ三つに気分よく鼻歌でもと思ったが、悲しいかなくしゃみは三回で止まらない。止まらないどころか、いつまでも続く……。おまけにかざした手には鼻水ベッタリ、目は真っ赤。

 前回の雑記からちょうど2ヶ月、すっかり春になってしまったようだ。
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今年は……

2016-01-09 01:50:23 テーマ:エッセイ
「今年は……」「今年こそは……」

 新しい年になると口には出さずとも、誰しも頭に浮かべるフレーズだ。小生も毎年この時期にはそれなりに何かしらを思い浮かべている。その結果、その年の終わりに「できた」と言える場合もあれば、残念ながら「できなかった」と言わざるを得ない場合もあり、時には年頭に思い浮かべていた抱負自体を忘れてしまっていることも少なくない。

 ただ、よくよく考えてみれば、こうして「今年は」とか「今年こそは」という言葉のついた誓いを立てられる回数はそれほど多くはないことに気付く。例えば100歳まで生きたとして、物心のつく小学校3年生くらいから物心をつくことができているであろうせいぜい90歳くらいまでとして、80数回といったところで、自身すでにその半分以上を使ってしまっているのだから、少し大事にしないといけないような気がしてきた。

 とてつもなく忙しい今現在の状況を考えると、残る「今年は」をすべて「できた」にしたいとハードルを下げたくなるが、それでも今年は精一杯がんばって、少しハードルを上げてみようかと思っている。
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初めての体験中 <笑ってごまかそう>

2015-12-25 00:00:06 テーマ:エッセイ
 発症からすでに2週間以上経ったが、未だボタン留めだけは一苦労する。ボタンダウンの右襟は先にネクタイを通しボタンを留めてから袖を通せばいいが、右袖だけはどれだけ手をすぼめてもボタンを留めたままの袖には通らないからどうしようもない。かと言って、ボタンを留めてもらうために寝ている息子を毎回起こすというのも申し訳ないし、頼ってばかりというのも悔しいからトライしてみる。が、人差し指があまり利かないため、中指と親指を使うもののどちらも感覚は乏しいからボタンホールを見失ってしまう。ボタンがかかったとしてもそのボタンを押し込めない。

 う~ん、ボタンを留めるのはこんなに難しいことだったのかとつくづく思う。2、3日前に見た、小さな男の子がシャツのボタンを留めようとしている光景を思いだし、ふとつぶやいてしまう。

「えらいなぁ、ボク」

 そんな状況が続く中、最近はお互い忙しくてなかなか会えていない友人から久しぶりに電話がかかってきた。

「アホか、お前は! ちゃんと医者行ったんか!」

 有無を言わさぬ物言いは相変わらずだ。某fbにリンクされている当雑記を読んだらしい。

 レントゲンとMRI撮って、その診察の結果を伝えるとさらに声が降ってきた。

「お前、頸椎とか神経とかは大変なんやぞ、判ってるか? セカンドオピニオンや、別のとこにも行って来い!」

 昔大きな事故をして、この辺り詳しい彼の言葉は重い。

 加えて、「判った」と電話を切った後、しばらくして彼から電話が回ったんだろう、共通の知り合いの女医の先生からも電話が入り、またまた叱られてしまった。

「お前は家族に言われても聞かんし、せやから医療関係者から電話させたんや」

 確かに、よく判ってらっしゃる。持つべきものは友ということだ。

 となれば、とりあえずお医者に電話だ。が、行きたいときには暇がなし行けるときには医者はなし、発症の状況、症状、すでに診てもらったお医者での話、その後2週間以上経っていることなど、いろいろと説明を行ったのも虚しく、整形外科に回された途端、予約しようとした当日は専門の先生がいないらしく、丁重に断られてしまった。

 土曜日というところにムリがあったかと思いつつも、病院の案内には土曜日、整形外科にちゃんと○がついているのだから、期待もしてしまうというものだ。

 結局、何軒か電話したものの当たりはなく、首の牽引にでもと近くの整骨院にいくことにした。こちらも某fb経由で当雑記を読んでいただいているため、話は早い。指だけでなく、腕の力具合など、いろいろと確かめられていく。

「……たまけみさん、きっとこれ頸椎から来ているものではないですよ」

「えっ?」

「頸椎から来ていれば、指先だけ力が入らないということはないですよ。もう少し周囲にも影響あるはずですから、たぶん圧迫による末梢神経麻痺やと思います。僕も以前やったことがあるから判ります。確か2ヶ月くらいかかりましたかね」

「えっ、それってお風呂で変な寝方してたからいうことですか?」

「恐らく」

「結局、飲み過ぎ?」

「きっと」

「……」

「まあ、時間が経てば戻ってきますよ。温めて動かす努力をすれば大丈夫」

 確かにどこにも痛みはなく、少しずつながらも日に日に感覚と握力も戻ってきているし、何より自分の体から発せられる信号は差し迫ったものとは思えなかったから何かしらしっくりきてしまうが、それにしても先のお医者で言われたあれやこれやはなんだったんだろう?

 レントゲンに加えMRIまで撮られ、そのあげく首がずれてるだの後湾症だの、貴方の首は明らかにおかしいと言われ、脳外科の先生に至っては、頭は大丈夫ですが、この痺れが各所に飛び火するようなことがあった場合には、筋萎縮症等の難病の疑いが出てくるとまで言われて、ちょっとだけビビッていた自分が何かしらアホらしくなってくる。加えて、そんな言葉にこの先とても大層なことになってしまいそうだと書き始めたこのシリーズ、結局相変わらずの失敗談に落ち着くことになってしまうのだから、カッコ悪くて仕方がないが、まあここは笑ってごまかすしかない。

 気がつけば今日は一年のうちでも最も笑顔溢れる日だからして、まあ勝手に許してもらえると思っておこう。

 Merry Christmas!!
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初めての体験中 <ここから>

2015-12-18 08:37:35 テーマ:エッセイ
前回からのつづき。

 結局、この日は整形外科と脳外科を回った。結果、頭にはまったく問題なく、首の骨の若干のズレと後湾により、左手の人差し指と親指を司る神経の通る箇所が細くなっていることによるものだった。

 とりあえず頭に影響がなかったことは幸いだ。笑えるし喋れるし考えられる。くだらぬことを喋って笑うことは、多くの趣味を持つ小生の中でも結構大きな割合を占めていて、これが不自由になるのは苦しいと、そんなことを思っていたから、少しだけホッとした。

 とはいえ、今日のところは一応病人だ、いやケガ人か。まあいずれにしても、左手が不自由だからと、行きは助手席だったが、気がつけばランチでビールを注文していた連れ合いのおかげで、帰りはこうしてハンドルを持つはめになってしまった。

 まあ、普段から優しくされることに慣れていないから、これぐらいの方が落ち着くのだが……。

 それはともかく、さてさてちゃんと完治するのかしら……。

レポートはつづく。
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初めての体験中 <習得期間>

2015-12-15 10:08:02 テーマ:エッセイ
前回からのつづき。

 まだ、利き手の右手でなくて幸いだったが、それでもこうしていざ動かせないとなると途端に不便を感じる。右手に持っていたカバンを左手に持ち替え、改札に向かおうとするもカバンを支えていられない。レジで支払をしようと、いつものように右の内ポケットから財布を取り出そうとするも、財布を取り出せない。朝など、カップに注いだミルクを温めようと、いつもの調子で右手にカップを持ったまま電子レンジの扉に手をかけたものの、結局カップを置いて右手で扉を開けることになってしまった。

 習慣とは不思議なもので、こうして左手が思い通りに動かせないことを意識しているくせに、無意識のうちにいつもと同じ動作をとってしまう。そうなると、余計に不自由さを感じるもので、自分の身体を自由に動かせないもどかしさにイライラが募り、モノに当たったり、人に当たったりしてしまうのも致し方ない。

 ……と思っていたが、案外そうでもなかった。

 つい、いつものクセで左手で掴んだり、摘まんだりの動作をしてしまうものの、使えないとなれば別の方法を取らざるを得ないから、そうこうしているうちに徐々に慣れてくるみたいだ。新しい習慣が生まれつつあるということだろうか、こうしてこの状況に慣れていくうちにこれが普通に思えてくる。順応性が高いというか、ただのアホというか……。

 そんな話をしているからだろうか? 周囲もあまり心配してくれない。

「飲み過ぎちゃう?」

「まあ、なんとかなるで」

 ほとんど他人事で、娘など「しっかり! (笑)(笑)(笑)」と、まあ呑気なメッセージを寄越して来るような状況だが、大体において人は何かしら大変な事態に直面したとしても頭の中で勝手な希望にすがろうとしてしまうのが常だし、普段から人一倍病気には無縁のような小生だからして、まあこんなもんだろう。

 ただ、数字という客観的な事実があると一瞬うろたえてしまう。

「右は? 62。で、左は……えっ? 3? 3……キロ?」

 看護師さんから握力を測った結果を告げられた整形外科の若い先生、若いだけに反応が素直すぎる。

(いやいや、せんせ、そんな言い方せんといてえな……。オレめちゃめちゃあかんみたいやがな)

 つづく。
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初めての体験中 <発端>

2015-12-10 08:31:46 テーマ:エッセイ
(あれ? 何コレ? 変や、動かへん……)

 突然だった。

 飲んで帰って、お風呂から上がった後、気がつくと左手がおかしい。特に左の人差し指、親指、それと中指がほとんど動かない、というより動かせない。

「気のせいやで。帰ってきたときは何も言うてへんかったやん。風呂で寝てたのが悪いんちゃうの? 寝たら治るで。それより、オレも入ろうと思うてたのに、お湯落としてるし……」

 内心、これはヤバイのではないかと思いつつも、お酒ですでにトロンとした頭にはそんな気休めの言葉にすがってしまうのだから、人間なんて、いや小生なんて弱いものだ。つかの間同居の息子の一言に期待をしつつ、床に着いた。

 ……甘かった。

 一晩寝てスッキリしたはずの頭には、この状況がいかによろしくないかが判ってくる。

 コップが……持てない、ペンが……掴めない、ボタンが留められない……。

(もしかして、頭か?)

 脳卒中とか、脳梗塞とか、自分にはまったく縁がないと思っていた病名が頭をよぎるも、とりあえずは急ぎの仕事の予定があるから思い悩んでいても仕方がない。変に心配させてもよくないか、と寝ている息子には何も言わず、結局右袖のボタンを留められないまま、仕事に向かった。

 つづく。
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鏡を置いてみる

2015-12-01 08:37:48 テーマ:エッセイ~ストーリー
 近ごろは本業がクソ忙しく……、いや小生としたことが久しぶりに書いているというのにいきなり言葉尻がよろしくない。何せ最近は場合によっては本当に寝る間もないことがあったりするから、どうも頭がうまく働いていないのかもしれない。最初からやり直しだ。


 近ごろはとにかく本業が忙しく気がつけば丸々一ヶ月飛んでしまった。この一ヶ月ほぼ常にオンタイムの状態で、ふと気を休める時間もなかったから、どうも精神衛生上よろしくない。そんな状況が続くと、くだらぬものながらもここである程度定期的に書いている雑記がそれなりに精神の安定に役立っていたことに気付いたりする。恐らくこれは親元を離れて初めて親の有難味が判るのと同じ類で、書くことがそれなりに当たり前の状態として定着しつつあったんだろう。ちなみに先日知った「あたりまえ」が「ありがとう」の対義語だったというのは、こうした親の有難味を知った人が考えたに違いないと思いつつ、それはともかく。

 そんな文章、いやまとまった文章のみならず、何かしらのコメントやちょっとした物事を書くに当たっては自分なりに取り決めがあったりする。

 ***

 カゼかなぁ。のどは痛いし、咳も止まらない、コホッ、コホッ……。
 熱を測ったら39℃だって。
 こういうのってダメね。数字を見たら余計にしんどくなってきちゃった。
 食欲もないし、お薬もないけど、お買い物に行く元気もないから、もう寝ちゃいます。
 今日はこの辺で……。

 ***

 こんな文章を目にすると、少しだけ困ってしまう。具合がよくないのに『いいね!』を押すわけにもいかず、目にしてしまったのにスルーするのも何かしら申し訳ない。律儀な小生としては困ってしまうのだ。

「お~、大丈夫ですか恭子さん。近くにいればすぐにでも駆けつけたいところですが、キミの顔すら知らないボクとしては如何ともしがたく……」

 いらぬ心配をしてしまう。

 ということは、そんな恭子さんのような書き方をすると、どこかの誰かにもいらぬ心配をかけてしまうということだ。また何より、そんな書き方を男の小生がしたりすると、何かしら慰めの言葉を求めているようにも見え、どうも女々しさを感じてしまったりする。と、そんなことを思えば、必然的にこれが一つ目の取り決めになる。

   『読む人に極力心配をさせない、慰めを求めない』

 ***

 あっ、その場所、この前行こうとしたんだけど、道を間違えたみたいで辿り着けなかったんですよ。行き方教えていただけませんか?

 ***

 普段あまりいただくことのないコメントが珍しく入っていたと思ったら、書いた内容に込めたメッセージに対するものでなく、主題にはほぼ関係のない付属情報として引き合いに出しただけの固有の場所に対するものだ。まるで採用面接での本人からの質問が「お昼休みは何時からですか?」といった類のちょっと間の抜けた感じで、思わずため息をつきたくなってしまう。恐らくこれは小生の文章構成力が足りないから言いたいことが伝わらず、脇の配役だけが目立ってしまったに違いないが、あわよくば共感のコメントでもいただけるかなとの下心がそもそもの要因であることは間違いない。

 ……これもよろしくない。

   『固有な情報は極力書かない』

 それとやっぱりこれだ。

   『負の連鎖を起こさない、負の連鎖に加担しない』

 これは以前にも書いたが、何がしかをあげつらうような話や愚痴の類の話は、人の不幸は蜜の味という言葉があるように、とかく人の心を掴んでしまう。そんな書き物やコメントを目にすると、改めてコメントを入れないまでも頭の中には何らかの思いが浮かぶはずだ。

(うわぁ、それってほんと? ほんとだったらひどいわね。そんな奴どうにかなっちゃえばいいのよ!)

(そこまで言わんでもええんちゃうの?)

(どうでもいいわ)

 肯定、否定、それとどちらでもない意見それぞれあるだろうが、いずれにしても気持ちが晴れやかになって優しい気持ちになっている人はいないだろう。井戸端会議や、お茶の席で話しているだけならまだいいが、文章というのは後々残ってしまうからそんな気分のよくない状態になる人をさらに増やしてしまう可能性が続いてしまう。これはよくない。世の中が暗くなってしまうじゃないか。小生としてはできれば笑顔溢れる世界にしたいのだ。負の連鎖でなくフフフの連鎖にしたいのだ。

 と、そんなことを思いつつも、世の中には気になってしまうことは少なくなく、その中には場合によっては、それこそあげつらってしまいたくなることもあるのは小生も人の子だから仕方がない、たまには勘弁してくれ。

 さて、これだけエクスキューズしておけばいいだろう。

 ***

(兄ちゃん兄ちゃん! その食べ方はあかんやろ! えっ、兄ちゃんだけやないがな。オッチャンも? えっ、オバチャンも? この人たち自分の子どもらや、その友だちにはどない言うてるんやろか? あら、こっちではお姉ちゃんも、そんなスーツ姿やのに……、どないなってんのや? 日本人どうなってしもたんや!)

 近ごろはそんなことを思わずにはいられないほど当たり前の光景になってきたような気がする。

 仕事柄、自分のペースというものがあって、小生昼食は一人の場合が多い。というか、一緒に行く連れがいないだけかもしれないが、世間では同じような人が多いのか周囲を見渡せば、小生のみならず一人ランチは少なくない。考えてみれば、ずっとずっと若い頃には、こうして一人で食事に行くのは寂しく感じたものだが、いざこうして一人で食事をしていると今さらながら大人を味わっている気分になってくる。ピーク時間を少し外した時間帯、いろいろと思いを巡らせながら一人ゆっくりと食事をいただく。一日に緩急をつけるなら緩の時間、少し時間もゆっくり流れているように感じる。いい時間だ。

 思いを巡らすときには、決まっていろんなところに目を遣ってしまうものだ。窓から見える外の景色はもちろん、店員さんの動きやオムライスを食べる女性のスプーンさばきなど、特に意識することのないまま知らず知らずのうちに、ぼうっとしたまま目で動きを追ってしまっていたりする。なかなか一点に留まることのない、そんな目の動作自体は目移りそのものだが、意識して見ていない以上、目移りとは言わないのだろうか。

 ただ、近ごろはそんな目も一点に留まってしまうことも少なくない。特にピークを過ぎたこのお昼の時間帯、誰の目を気にすることもないのか、一人で食事をしている人たちの姿勢がよろしくない。左手(または右手)を膝に置きながら、また場合によってはテーブルの上のみならず、組んだ足の上に肘をつきながら片手で食事を摂っている。食べるときにはテーブルに肘をつくなと、父親や母親からうるさく言われ、また我が子たちにも口やかましく言ってきた小生にとっては、ありえない光景だ。

「あなたたち、その姿勢はいけないわよ。ちゃんと左手を出してお茶碗を持ちなさい」

 オッサンの中に潜む老婆の心が顔を覗かせ、思わず指摘したくなってしまう。

 それにしても、彼ら彼女らはいつもこの姿勢なんだろうか、特別な人の前でも同じなんだろうか? もし小生なら、なんとか辿り着いたマドンナとの食事の席となり、周囲の羨ましそうな目がいっぱい集まって有頂天になっていたとしても、この姿勢を見た途端、一気に熱は冷めてしまうに違いない。この辺り我が子たちに訊くと、彼らも小生と同じ感覚だったから、ひとまずは安心したが、果たして世間の感覚はどうなんだろう? いろいろと考えてしまう。

「そう? 別に気にならないわ」

 そもそも気にならないか、

「別にええんちゃう、他人やし……」

 それとも他人は他人と達観しているか、恐らくはいずれかに違いない。

「マドンナとは、えらい古臭い言い方やなぁ」

 まあ、それは放っておいてくれ。ともかく、気にならないのも達観するのも、何かしらどちらも寂しく感じてしまう。親から子へ、子が親になればまたその子へと、昔から続いてきたはずであるのにこの有様だ。何とかできないだろうか、ちょっと考えてみたいと思う。

 ***

(ターゲットは彼女だな)

 恭介さんの目配せを合図にそれぞれが動き始める。

 隣の席には卓三だ。スーツ姿でビシッと決めたスタイルは、いかにもできる男といった感じで、おまけにイケメンときているから十分目立つ。卓三がターゲットの前を横切り、席に着く瞬間、彼女の目がチラッと動くのが見えた。

(よし、ええぞ卓三! ほな、今度はオレの番やな……)

「おっ、今日のランチはハンバーグかぁ」

「ここのハンバーグ美味しいのよ。だけど今日は私がハンバーグだから、あなたは別のにしてね」

「えっ? なんで、ええやん」

「ダメよ、だってあなたいつも言ってるじゃない、同じじゃ面白くないって」

「え~何それ、かなんなぁ、オレが先にハンバーグって言うたのに」

「はいはい、つべこべ言わない」

 文句を言いつつも彼女の言い分に従ってしまうところは、この先の関係を暗示しているように見えるであろう、いかにも仲の良いカップルを装いつつ、ターゲットを挟み込む形で卓三とは反対側の席に着く。

 そして、コウタくんとキョウコちゃんがやってきた。

 *

(なんなのよ……。この時間ならゆっくり食事できると思ったのに結局いっぱいじゃない。左のイケメンはいいとしても、こっちのカップルはさっきからずっと喋ってるし、前の席なんて子どもじゃないの。せっかく落ち着いた大人の雰囲気を楽しむつもりだったのに、なんだかツイてないわね。……料理は美味しいけど)

 そんなことを思いつつ付け合せのニンジンを口に運んでいると、前の席に座っている男の子の話声が聴こえてきた。

「ねぇ、おねえちゃん……」

「ごはんをたべるときにはひだりてをだしなさいって、いつもおとうさんやおかあさんにしかられるけど、みんなひだり手でてないよ。ひざの上にひじついてる人もいるよ。どうして? おとなの人はしかられないの? ねぇ、おねえちゃん」


(……うっ)

 ニンジンをつまんだまま、お箸が止まってしまった。

(私のこと?)

 思わず、辺りの気配をうかがうと、周囲の動きが止まり空気が凍りついている……。それもそのはず、横目づかいにイケメンを見ればひじがテーブルの下で組んだ脚に乗り、カップル二人の手は揃って膝の上だ。恐らくみな、大人の自分たちがこんな小さな子に指摘を受けるなど思ってもいなかったから、どうしていいかたじろいでしまっているに違いない。隣のカップルがようやく動き出したと思ったら、もぞもぞと左手をテーブルの上に出していて、まるで叱られた子どものようなさまは客観的に見ればどちらが大人なのかよく判らない。もちろん、私もだ。

 すると突然、隣のイケメンがカバンを持って立ち上がった。

 あなた、逃げるの? 一瞬、そう思ったが……違った。イケメンは姉弟のテーブルの前で立ち止まり「ボク、ゴメンな。申し訳ない」と男の子に向かって頭を下げたのだ。そして「ゴメン。ほんなやな、大人のくせにあかんな。考えたらオレも昔、父親からうるさく言われてたのに、いつのまにか忘れてしまってた。おおきに、ありがとう。これからはちゃんと気ぃつけるわ」そう一気に話すと、あっけにとられた感じの男の子の手を掴み、半ば強引な握手をして店を後にしていったのだ。

 ……

 あっけにとられたのは男の子だけでなく私もだ。いきなりこんなドラマティックな展開になるなんて……。

「ビックリしたぁ。けど確かにほんまやなぁ、大人の俺らがちゃんとせなあかんわなぁ」

「ほんとね、子どもに教えられちゃったね。ほら、あの子たち嬉しそうよ」

 どうやら隣のカップルも私と同じみたいだ。そんな会話を耳にしながら男の子に目をやると、照れ臭そうに笑ってるけど、どこか誇らしげだ。そして気がつけば、自分の姿勢もよくなっていることにも気づく。もちろんすでに左手はテーブルの上だ。

 そうよね、大人の私たちがお手本にならないといけないんだ。少なくとも、こんな小さな子を混乱させてはいけないな、と思いながら残っていたコーヒーを飲み干した。私は区切りをつけるように大きく一つ息を付くと席を立った……。

 ……

 *

「おつかれさん」

 マスター役の恭介さんがやってきた。

「ええ感じやったで。中でもコウくん、表情が抜群やったわ」

「……いやいや、それはオレの演技がよかったからやないか!」

 卓三が裏口から戻ってきた。こいつは黙っていれば確かにいい男だが、喋るとやかましい。

「オレの去り方、決まってたやろ、お姉ちゃんの顔が見たかったわぁ。振り返りたかったけど、ここはグッとこらえて背中で演技。う~ん渋いねぇ、健さんならぬ卓さんいうとこやな。……自分、不器用ですから」

「それでコウくん、これ見てみ」

「オイオイ、卓ちゃんの話はどこ行った?」

「えっ、ありがとう……って?」

 恭介さんが置いたメモには丁寧な字で一言、ありがとうと書いてある。

「ターゲットの彼女からコウくんへのメッセージや」

「おっ、卓ちゃんにか?」

「お前は黙っとけ!」

「へえ~、なんだかうまくいったみたいね」

「それもこれも、卓ちゃんのおかげいう奴やな」

「……」

 ***

 てなところで、無理やり一息つかせて書いたら、久々ということもあってか思わず長く、またストーリー混じりになって、おまけに仕事人みたいなキャラクターまで作り出してしまった。まあ考えようによっては、直接表現すると角が立ってしまうことも彼らに語らせればいいわけだから、今後たまには、このキャラクターを軸に書くことも悪くないような気がする。とはいえ、『必ず』でもなく、ましてや『殺す』なんて言葉を使うようなシーンに登場させるつもりは毛頭なく、どちらかと言えば、たまにゆる~く、それも自分で気付くように仕向けたいわけだからと、少し考えてみたが近ごろの働かない頭ではなかなか気の利いたネーミングも浮かんでこないし、まあそれはボチボチと考えることにしよう。
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