俺は「はしたなし」
久々に授業風景を。英語の授業でのお話。
「このweaker and weaker、比較級二つをandで結んだのは『だんだん~』、『ますます~』って意味だ。するとどう訳せばいい?」
「だんだん弱く?」
「さ~すが。ぱっと言えちゃうんだね。じゃあ文全体を訳してみて」
「彼女の声はだんだん弱くなった」
「ピンポ~ン! 正解! 古文で言えば『ようよう弱くなりゆく彼女の声』ってとこだな」
「あ! それ、『枕草子』でしょ?」
「ようよう白くなり行く山ぎわ少し明りて紫立ちたる雲の細くたなびきたる」
「清少納言だよね」
「すんごい! すらすら言えちゃうんだなあ」
「何言ってんの。先生が覚えさせたくせに」
「清少納言はおもしろいことを書いた女性だ。彼女の感受性の豊かさは君たちに通じるものがあるんじゃないかな」
「え~? そうかな?」
「そうだよ~。例えばね『うつくしきもの』という段があるんだけど、古文で『うつくし』っていうのは今で言うと『かわいい』って意味なんだ。清少納言は幼児やスズメのヒナ、人形など自分がかわいいと感じたものを並べ立てては
『いとうつくし~』
って言ってるんだ。今の言葉にすれば
『チョーかわい~☆』
って感じだね」
「先生、体をくねくねさせながら言わないでよ。それに…」
「『ものづくし』って言われるんだけど、これが結構おもしろいんだよ。『すさまじきもの』『憎きもの』『はしたなきもの』などなど。
『いとすさまじ』だったら『チョーつまんな~い』
『いと憎し』だったら『チョーうざ~』
って感じ」
「だから先生、いちいちくねくねしないの! それに今は『チョー』なんて言わないよ」
「え。そうなの?」
「そうなの」
言葉のはやり廃りははやいものですね。
いとはしたなし(チョーきまり悪い)!