備後落合行きの普通列車は、出雲坂根で奥出雲おろち号の上り列車を待ってから発車する。すぐ来るだろうと思って待っていたら、なかなかやってきません。
運転手さんがなにやら曇った表情をした後、車内の乗客(私含め6人くらい)に大声で呼びかけました。
「反対方面のおろち号が20分遅れとの情報が入っています。備後落合から先、新見方面、三次方面とも接続列車に待ってもらうように連絡は入れましたが、何名の方がどちらに乗り換えるか教えてください。」
ぬぬぬ、と思いながら私は新見方面です、と申告。でも付け加えて、新見から5分の待合せで特急やくもに乗る、さらに岡山から12分の待合せでのぞみにも乗る、どこまで列車は待ってくれるのか、と投げ返しました。
運転手さんはええっ!という顔をして、でもすぐに指令センターに連絡をとってくれました。
私、ゾクゾクしました。計画外の事が起き始めているから。
運転手さんに遅れの原因を聞いてみたところ、事故とかではなく、どうやらこの時期に発生する落ち葉によるスリップが原因ではないかと言っていました。氷の上を車がスリップするのと同じように、列車もスリップを起こします。おろち号は登りに差し掛かった際、車輪の空転でスピードが上がらなかったようです。
と、そんな会話をしながら、頭上を見るとおろち号の姿が。
スイッチバックだと事前に列車が見えて良いけど、あそこからが長いんですよねーと2人で言い合う。
ようやくおろち号が反対側ホームに下りてきました。
時刻は定刻の20分遅れ。13:38頃出発!
列車は右側のスイッチバック線に入ります。何百メーターか行くとやがて行き止まりに。
運転手さんは冷静に反対側運転席に移動。私も後を追いかけます。
次の駅「三井野原」までは登りが続くため、列車のスピードが上がらない。速くて45キロといった感じ。運転手さんの「制限30」「制限解除」という冷静な声を度々聞く。
トンネルを抜けると右側が急に開けました。落石防止用柵を抜けると・・・
右下におろち号の名前の由来になった、国道のおろちループの全景が見えました。こんな山奥になんじゃこりゃー!と思わず見入ってしまいました。(これは列車に乗っていないと絶対味わえない感覚だぁ)
さらに右前には大きな谷越えの鉄橋が・・・。道路と鉄道でお金のかけ方が違いすぎるよ!とあきれるほど立派な橋でした。
ようやく三井野原到着。JR西日本で一番標高の高い駅です。
また雪が降ってきました。
ここで特急やくもの接続について続報があり、ダイヤの運用上接続はしない(後の列車に乗るように)、との連絡があった事を運転手さんから聞きました。
私は了解しました。運転手さんは一生懸命聞いてくれているし、1時間も待てば次のやくもはやって来るので、いいかなと。
運転手さんは遅れを取り戻すべくすぐにドアを閉め先を急ぎます。
ここからは下りです。おろち号にとっては登りだった部分。案の定、落ち葉が大量にありました。
↓途中、川も渡ります。
↓やがて芸備線と合流し、終着の備後落合に到着です。
運転手さんへ最後にありがとう!と礼を言い、乗換え待ちしている、新見行き列車の方に向かいました。
私が乗車すると同時に列車はホームを離れ、あっという間に山の中に入っていきました。
備後落合駅、滞在30秒。
・・・その12に続く。