世に出なかった作品 | ブラジル番長【Diary】

世に出なかった作品

昨晩、番長は夢を見た。


著書『ぶっちぎり少年院白書』に登場する

佐世保少年院のオニ教官「古沢先生」が、

我が家の喫茶店に顔を出してくれた夢だ。


「あっ古沢先生!」

店内のテーブル席でコーヒーを飲んでいた番長は、

思わず椅子から立ち上がり、直立不動の姿勢になって

古沢先生に深々とお辞儀した。


その姿をニコニコと微笑みながら見ている古沢先生が、

「番長、元気にしとったかね?」と声をかけてくれた。


「先生、ひさしぶりに会ったんですから、

一緒に温泉にでも行きましょう」とお誘いした。


番長はとても嬉しかった。

少年院時代は、この先生から一番お世話になったんだから

せめてもの恩返しをしたいと思った。


先生と積もる話をしながら、喫茶店を出て

一緒に番長の車に乗り込んだ。


そこで夢から覚めた――。


ベッドで横になったまま、しばらくの間、天井を見つめていた。

「古沢先生…」

この夢が現実ではなかったのが、残念でならない。


著書のクライマックスで古沢先生から掛けられた言葉。

いまも忘れられない。


「がんばるんだぞ。しっかりやっていくんだぞ。

ワシら先生の願いはなあ、もうお前たちの顔を見ないことなんだ。

二度とここには戻ってくるんじゃないぞ。達者でな…」


あれだけ怖かった古沢先生の目から、涙がこぼれ落ちた。


中学校のときも定時制高校のときも、

学校の先生たちから見放されていた番長。


そんなどうしようもなかった番長に

古沢先生はエールを送ってくれた。


著書『ぶっちぎり少年院白書』の挿絵は計21枚描いた。

でも、その中でたった一枚だけ本に採用されなかった作品がある。


編集者の意向で、

クライマックス・シーンには挿絵を載せないことが急に決まったためだ。


その挿絵が、これである。



ブラジル番長【Diary】


「そうだ。この挿絵の原版を古沢先生にプレゼントしよう」

番長は、昨晩の夢を見てそう思い立った――。



古沢先生、喜んでくれるかいな。


=byブラジル番長=