みなさま、ゴールデンウイークはどのように過ごされましたか。静養したりレジャーを満喫したりして、快適に過ごされたことと思います。今回は医療とITとはやや離れた話題ですが、医学部新設のお話を書いてみたいと思います。明日(8日)以降、医療とIT関連を掲載の予定です。

 先日執筆した、函館市の医学部誘致の取り組みにやや関連するのかも知れません。東北地方に医学部を新設する動きはみなさんもご存じの通り、日本医師会(日医)や全国医学部長病院長会議が医学部の新設に反対する意見を示しています。一方で、自民党では「東北地方の医学部の新設を推進する議員連盟」(大島理森会長)が作られたり、同議連に属する平沢勝栄衆院議員が、キャリアブレイン等の各媒体でインタビューに応えたりしています。非常に政治的で、複雑となっている医学部新設に関する動きについて、滝岡なりに分析してみたいと思います。
 まずは、平沢氏が各媒体のインタビューで、東北地方に医学部を新設する必要性を訴えていることについてです。4月になって、平沢氏が各媒体に相次いで露出している印象がありますが、これは「自民党内部の問題はほぼ決着」とみて良いのだろうと思います。ここで言う「決着」とは、“医学部を新設する方向で党内の意見がほぼまとまりつつある”という意味です。政府内部の動きも、東北地方への医学部新設について、容認する方向となりつつあることが示唆されています。ある医療関係者は、「医学部新設を目指している仙台厚生病院では、医師が全国から集まっている。医学部新設は医師不足解消の最善の方法であることを示しているのではないか」と指摘しています。

●日医の反対はポーズ?


 日医は、医学部新設に一貫して反対の立場なのは、みなさんもご存じの通りかと思います。自民党内の状況が決しつつある中でも、反対の立場は明瞭です。中川俊男副会長は2013年3月7日の記者会見でもあらためて医学部新設に反対していますが、一方で政治主導で被災地の医学部に「医療復興講座」を設置することで、キャリアアップにつながるポストを用意したり、国がその講座の医師の採用
を全面的に支援したりすることを提案しています。一見すると、「医学部を作ると、医療現場の医師が医学部の教員として吸い上げられ、医療現場の医師不足は深刻化する(※粗々な表現です)」旨で反対していましたが、「講座」でも現場の医師が吸い上げられる点にはあまり変わりがない気もしますが、これはどう見れば良いのでしょうか。
 見方の1つとしては「条件闘争」が推測されます。自民党の動きを察した日医側が、「医学部新設が避けられないのなら、少しでも日医の望む条件を取り入れてもらいたい」と目論んで、種々の政治活動をしているのではないかという見方です。もう1つの見方は、「中川副会長が日医会長職を目指すため、会員向けに反対をアピールしている」との推測です。どちらもあくまで推測ですが、日医も中川副会長も、医学部新設に関して極めて政治的な動きを注意深く行っていることが示唆されます。

●東北の次はあるのか


 東北地方への医学部新設の動きは、極めて政治的な動きとなっていますし、各関係者の政治的な動きが活発化しています。ところで東北以外でも、医学部新設を求める動きは活発化していますが、医学部が新設される優先順位はどのように推測されるのでしょうか。自民党内の動きから示唆されるように、医学部新設の実現可能性が現時点で最も高いのは東北地方と言えそうです。その次に医学部新設の可能性が高いグループとしては、「千葉県の亀田総合病院および成田市」「神奈川県」「埼玉県」と、東京近郊の各県のようです。成田市は医学部新設に関する調査を行いましたし、埼玉県側は埼玉県立医大への医学部新設を求める動きが出ました。神奈川県側も特区によって医学部を新設することを提起しています。
 神奈川、千葉、埼玉の3県は人口の割に医学部の数が少なく、医療資源も不足している上、高齢化も急速に進むことが予測されています。3県での医師不足への意識の高まりが、医学部新設に関連したさまざまな行動を起こすことにつながっているのかも知れません。(了)