2007年01月08日

実質収支と実質単年度収支~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

テーマ:自治体用語集

毎年、秋になると「赤字自治体、県内で◎団体、前年より増加」などというニュースが新聞の地方面に掲載されます。これは実は大変問題のある現象です。

このような報道の基準となっているのが実質収支です。実質収支は下記の手順で算出されます。


Ⅰ 歳入総額<プラスの数字。役所に入ってきた現金>

Ⅱ 歳出総額<マイナスの数字。役所から出て行った現金>

Ⅲ Ⅰ-Ⅱ 歳入歳出差引<形式収支のこと>

Ⅳ 翌年度に繰り越すべき財源<マイナスの数字。たまたま年度内に終わらなかった事業に関する経費なので、翌年度には金は残らない>

Ⅴ Ⅲ-Ⅳ 実質収支

このように実質収支は算出されます。

で、これを年度の自治体の成績というか、赤字黒字の基準にするというのはどうかということですが、論外です。なぜなら、ここには財務面での収支が含まれないからです。(また、単式簿記では、昨年までの蓄積が単純に残高として残っているので、今年の実績を見るには前年度の実質収支をも差し引く必要があります。)

ハムスター的に解説すると、実質収支を増やそうと思ったら、貯金(いわゆる基金)を取り崩せばいいのです。つまり、十分な貯金がある限り、実質収支はプラスに操作できます

なお、いくら良い運営をしても、実質収支がマイナスになることがあります。

大量に貯金(基金への積み立て)をした結果、たまたま実質収支がマイナスになることは十分にありうる話です。

このような操作可能な数字を会社の成績の基準にすることは、ビジネスの世界では間抜けというか、ありえません

なお、ビジネスの世界で古来、よく使う指標にケイツネ(経常利益)があります。これは、主な事業の収支による成績を示す指標であり、特別利益、特別損失という財務面での収支は入っていません。特別利益を出すには株の含み益を吐き出したり、本社ビルを売ったりするわけですが、こんなものが経営者の成績ではないことはビジネスの世界の住人なら知っているわけです。

では、財務面の影響を取り除いた、つまり、貯金の出し入れに左右されない自治体の収支とは何なのかと言うと、下記の計算が必要です。

Ⅵ 前年度の実質収支

Ⅶ 単年度収支 Ⅴ-Ⅵ<前年度までの蓄積を引く式>


Ⅷ 基金への積み立て+地方債の繰り上げ償還<プラスの数字。貯金した、あるいは借金を返した>

Ⅸ 基金の取り崩し<マイナスの数字。貯金を取り崩した>

Ⅹ 実質単年度収支 Ⅶ+Ⅷ-Ⅸ

この、実質単年度収支が自治体の最終的な数字の帳尻です。

もちろん、これは普通会計 であり、公営企業会計や第三セクターの会計などは別ですし、自治体といえでも粉飾も大いにありうるので、ここだけではまったく安心できません

しかし、この実質単年度収支こそが出発点であることは間違いないと思います。

ということで、実質収支を基準にした報道は愚であるということが納得していただけたでしょうか。

ちなみに、和光市はどっちも黒字でつまらないので、下記に兵庫県篠山市のグラフをお示しします。実質収支の推移と実質単年度収支の推移には関係がなく、実質収支の推移だけに注目するということは世論をミスリードすることだということがグラフから読み取れます


篠山市

出所:篠山市役所(クリックすると大きくなります)


結論ですが、実質収支だけで業績の判定はできません。そういう報道はまやかしの報道です

最低でも実質単年度収支の推移と併せて見ましょう。

ところで、この種の指標ですが、議員でも職員でもしっかりと頭に入っている人は少ないですから、議員(特に新人)各位もご安心ください。私も忘れないために、時々思い出したように書いているのですw。

なお、詳しくは下記の本をご参照ください。

<松本武洋の著書『自治体連続破綻の時代』についてはこちら >

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2006年12月23日

バランスシートを自治体関係者向けにざっくり言うと~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

テーマ:自治体用語集

今日はバランスシートです。

バランスシートは貸借対照表といわれます。

左右がバランスしている(つまり、イコールで結べる)からバランスシートです(誤訳説あり。でも、これで理解できると思います)。

もともとは複式簿記という帳簿のつけ方をすると自動的に出来上がる、2つの「表」のうちの1つです。

複式簿記は1つの取引を2つの要素に分解してそれぞれ左右に帳簿につけ、それを集計していくことで2つの「表」をつくります。


たとえば、100円の現金で商品仕入れを行うと、

商品  100  現金   100

と記帳します。

1つの取引が2通りに記帳されたわけです。

このようにして、どんどん取引を2通りに記帳していきます。

すると、あら不思議、期末に必要な処理をすると

バランスシートと損益計算書(自治体だと行政コスト計算書)が出来上がります。

自治体の簿記との違いは自治体が何にいくら支払ったとだけ記帳する(実際はもう少し情報量が多いですが)のに対して、複式簿記では必ず取引を2つに分解して記帳するということです。


で、2つに分けると言いましたが、これは、いろいろな要素をストック(残高)とフロー(流れ)に分けるということです。

何らかの取引(この場合の「取引」は会計用語。金銭が発生する組織内外のやり取り)には原因と結果があります。

先ほどの取引だと、原因(フロー)は100円払ったこと。結果(残高)は商品が100円分来たということです。

さて、期末の必要な処理ですが、原因は原因ごとに集め、結果は結果ごとに集めます。

すると、原因の集まりである、つまり、お金の流れの集まりである損益計算書(自治体は行政コスト計算書)とお金をやり取りした結果であるバランスシートが出来上がるのです。

この、それぞれの取引を分解して記帳して集計するという仕組みが優秀なのは、自動的に物事を原因と結果という2つの側面から分析できる表が作成される仕組み(システム)になっている、という点です。

役所の会計では「何にいくら使った」という取引記録を集計するだけですから、このような2つの表はできません。

そして、バランスシートはストック(結果)の情報を集めたものです。

左には資産の一覧、つまり、財産目録のようなものが並びます。

右に来るのはその資産を形成するために使ったお金の出所が並びます。


バランスシートとは、組織にどの程度の資産があるか、そして、その資産の資金源はどこか、が書かれた左右対称の表だということです。


ちなみに、役所の会計についてもう少し説明しましょう。

役所の会計は毎年、いくら現金が流入する予定か、流入したか、という予算・決算の歳入と、毎年、何にいくら使う予定か、使ったかという歳出でできています。

そして、一年の間にいくら分の市民が使える資産が蓄積されたか、また、過去から現在の流れの中ではどの程度蓄積されたか、という情報が示せない仕組みになっています。

これを示せるのがバランスシートです。バランスシートの有用性の一端がお示しできたのではないかと思います。


なお、バランスシートには退職給付引当金が計上されます。これは、今期末に全職員が退職した場合に発生する退職金の総額が示された数字です。

これは、役所の潜在的な債務がどの程度あるか、ということを検証するための有用なツールになります。

これと、退職手当組合への積立額との比較をすれば、退職金の資金不足がどの程度見込まれるかを想像することができ、これを示すだけでもバランスシート作成の元は取れます。


地元自治体にバランスシートがないなら、ぜひ、作成させるようにしてください。

なお、連結会計は中心的な組織と資本的、あるいは人的な実質的なつながりがある組織の会計を合体させようというものです。これを厳密に適用すれば負債の「飛ばし」は不可能になります。

(最近、企業会計ではもっと複雑なタックスヘイブンを使った手法などで会計情報をいじくって、経営者に不利な状況を隠すケースが増えています。)


追記:自治体の関係者でも複式簿記・会計を簡単に理解できる『会計のルールはこの3つだけ』(洋泉社新書)を2008年4月、刊行します。税理士の石川淳一氏との共著です。

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2006年12月17日

普通会計~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

テーマ:自治体用語集

自治体について考えるための用語の一番基本的なものを忘れていました。

それは普通会計です。

自治体には一般会計、特別会計、企業会計という会計区分のほかに普通会計という考え方があります。

普通会計による決算というものは実は存在しません。

会計は一般会計や特別会計という区分で行われ、普通会計によって決算を行うことはありません。

では普通会計は何なのかというと、ずばり言えば、一種のモデルです。

モデルというものは自然科学では基本の考え方ですね。

前提条件を設定する(水100mlに食塩10gを入れた、など)ことで、実験を行うための条件が一定にそろえられます。

そこから何回実験しても同じ結論が導かれることを帰納(つまり、「AならばB」をたくさん繰り返す方法)的に立証するのが典型的な自然科学の手法です。

そして、普通会計では自治体の、ある程度科学的な比較をするために、標準的な自治体の持っている事業の定義を定め、それに従うような前提で自治体の決算を行った場合に算出される数値が示されます。


たとえば、総務省が普通会計の市役所には市民課と議会しかない、と決めれた場合、全国の自治体が自分のところを市民課と議会だけからなると仮定して普通会計の決算にかかる数字が決められます。

ということで、自治体の比較ができるように、あらかじめ普通会計に入る事業項目は定められています

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2006年12月15日

経常収支比率をざっくり言うと~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

テーマ:自治体用語集

<この記事はフルサイズの画面で見てください>


よく聞かれる指標が経常収支比率ですので、これも解説しておきます。


経常収支比率は一般的に自治体のエンゲル係数といわれています。


具体的には

「経常経費、つまり自治体を単純に開店していると自動的に出て行く経費は

自治体の経常一般財源(地方税、普通交付税、地方譲与税)のうちどの程度の割合を占めるかという指標」

算式だと


                「役人の人件費、生活保護費などの

                    扶助費、借金の返済資金」*1

経常収支比率=---------------------------------------------

           経常一般財源

            +減税補てん債、臨時財政対策債などの特別に

             分子に入れることが認められた赤字地方債


*1 経常経費充当一般財源と呼ばれる。役所を開いているだけで出て行く最低限のお金


となる。


これを単純化すると、

      




                「自治体を開いているだけでも

                            出て行く経費」

経常収支比率=---------------------------------------------

           自治体の税収+普通地方交付税+地方譲与税

            +減税補てん債、臨時財政対策債などの特別に

             分子に入れることが認められた赤字地方債



もっともっと単純化すると、

           

            自治体を開いているだけでも出て行く経費

経常収支比率=---------------------------------------

            ひも付きでない収入


で、言葉で言うと、


経常収支比率とは、自治体のひも付きでない収入に占める自治体を開いているだけでも出て行く経費の割合ということ。

まさに自治体のエンゲル係数。

で、これが100%を超えると、その自治体はどうしようもないほど財政が硬直化していて、新しい施策は何もできないと言われる。(この状態であれをやれ、これをやれと新たな財政支出を訴える市民や議員、そして、あれもこれもやります、という首長は勘弁してほしい存在だと思って間違いない。)

それと、経常収支比率100%を超えた分はどこかで調整しないと結局のところ、自治体の赤字となって積み上がっていく。


ちなみに、インフラや箱モノの建設期から自治体が成熟期を迎えると、投資的経費は一段落となり、経常収支比率は自然と上がっていく。なぜなら、経常的な維持管理費の比率が上がりきり、シンクロしてそれ以上の投資は必要なくなって行くから。だから、経常収支比率が高いからといってもいろいろあり、少なくとも80%がいいとか、そういう単純なことは実は言えないわけだ。


ただ、減税補てん債、臨時財政対策債等の取り扱いが歪められているため、その点、注意が必要だ。

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2006年12月14日

実質公債費比率をざっくり言うと(新ランキング付き)~ハムスターでもわかる自治体財政用語シリーズ

テーマ:自治体用語集

<この記事はフルサイズの画面で見てください>

 

これから、大切な指標についてよりわかりやすくを目標にときどき説明してみます。

とくに、実質公債費比率は私のブログに検索で来てくださる方の数が一番多いため、取り急ぎ解説しておきます。

 

実質公債費比率をざっくり言うと、

「標準財政規模(自治体のあるべき税収+普通地方交付税+地方譲与税など)に占める

地方債の元利償還金(交付税充当分を除く)と下水道、地下鉄など公営企業債の返済に充てた繰り出し金などの割合

 

なんですが、そのうち、実際には返さなくても済んでいる部分があるのでそれを分子と分母から取り除いたもの」です。

 

 

つまり、

 

ざっくりと数式にすると、

実質公債費比率

 

 

     「一般会計の借金の返済(元本、利息)」

 

   +「その他の会計の借金返済(元本、利息)

      のうち、一般会計で面倒を見るもの」

  -「借金のうち実質的に自治体の負担にならない部分*1」

= ------------------------------------------------

             「標準財政規模」

  -「借金のうち実質的に自治体の負担にならない部分*1」

 

 

*1 なぜ、負担にならないかと言うと、地方交付税を計算するときに一部の借金の面倒は国に見てもらえるから。

 

 

 

もっともっとざっくり言うと

 

 

 

  自治体のほとんど全ての借金の返済(元本と利息)*2

 

=----------------------------------------------

  用途が指定されておらず、自治体が資金の

  用途を決められる収入について理論的に計算した値*2

 

 

*2 ただし、実質的に自治体の負担にならない部分が多少あるのでこれは除く。

 

 

 

で、青字の部分(下水道会計とか地下鉄の企業会計とか・・・・)を取り除くと起債制限比率になる。

 

この、標準財政規模に占める地方債の元利償還金(交付税充当分を除く)である「起債制限比率」と比較すると実質公債費比率は起債制限比率より平均4%高くなるとされている

起債制限比率は旧来の財政破綻の指標。これに下水道とか地下鉄などの会計を連結した指標が実質公債費比率だから、こちらの方が信頼性が高いということだ。

 

ただし、公表されている実質公債費比率は過去3年の平均値(つまり、今<平成18年のこと>公表されている指標は平成15、16、17年度の数値の平均値)なので、遅行指標(問題が起きて数年してから悪くなる指標)である。

 

最後に、これでもかと単純化すると、

実質公債費比率とは、国が決めた「その自治体が自分で使い道を決められる使えるお金はこんなもん」という金額のうち、借金返済に使っているお金は何パーセントあるかということ。

 

実質公債費比率は自治体の公債発行の基準となる指標になっており、これが18%以上だと公債発行は上級官庁の許可が必要。それ未満だと、上級官庁との協議があれば発行できるということになっている。つまり、18%未満を総務省は財政的な一人前の自治体としている、という意味だ。

 

なお、本式の定義の数式は総務省のリンク先 をご覧ください。

本式の定義に書いてある算式はまったく別物ですから、念のため。

ちなみに、この数式は税法などと同様に法令(地方財政法第5条の4第1項2号)においては文章で表現しています。面白いので見てみてください。

 

「政令で定める地方債に係る元利償還金(政令で定めるものを除く。以下この号において「地方債の元利償還金」という。)の額(A)と地方債の元利償還金に準ずるものとして政令で定めるもの(以下この号において「準元利償還金」という。)の額(B)との合算額から地方債の元利償還金又は準元利償還金の財源に充当することのできる特定の歳入に相当する金額(C)と地方交付税法の定めるところにより地方債に係る元利償還に要する経費として普通交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入される額として総務省令で定めるところにより算定した額(特別区にあつては、これに相当する額として総務大臣が定める額とする。以下この号において「算入公債費の額」という。)(D)との合算額を控除した額を標準的な規模の収入の額として政令で定めるところにより算定した額(E)から算入公債費の額(D)を控除した額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値」

(笑

 

で、Bの中身は政令で指定されています。ここに何を入れるかは、官僚が決定します。

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