傾国の美女 李夫人8 ~竹取物語の謎をうら読みで解く#243 | 竹取物語の謎を「うら」読みで解く

竹取物語の謎を「うら」読みで解く

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かぐや姫は、5人の求婚者を不幸にした上に、帝までを虜にして後宮を乱しました。中国の史書にも、君主を夢中にさせて政務が疎かになり、国を傾ける「傾国の美女」が登場します。漢武帝の寵姫、李夫人を取り上げます。

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

 

若くして亡くなった李夫人の兄に、李広利がいます。

前漢の武帝の時代には、シルクロードが開かれたように、対外活動が盛んでした。

李広利は、李夫人の兄だということで、西域の良馬を得るために将軍に任じられました。

広利は苦戦の末、勝って帰国します。

 

後年、匈奴討伐に向かった際に、李広利の援軍として五千の兵を率いていた李陵が、数万の匈奴軍に敗れました。

広利の戦功が乏しく、李陵に援軍が送られていませんでした。

李陵の投降を聞いた武帝は激怒し、群臣が李陵に罪があるとするなか、一人だけ李陵を弁護した者がいました。

「李陵は、五千に満たぬ歩兵で、敵地に踏み入り、数万の敵軍を抑えました。

敵は瀕死となり、戦力のすべてを投入して、李陵を包囲しました。

李陵の郡は千里を転戦していて、矢が尽きて白刃をもって死闘しました。

人の死力を尽きさせたことで、古来の名将といえど、これにすぐるものはありません。

彼が投降したのも、いつか時を得て漢に報いようとしているために違いありません」

(小竹武夫(訳)『漢書5 列伝Ⅱ』を元に、井之亀が再話)


…画像:Pixabay様よりロイヤリティーフリーの写真をお借りしました…

 

武帝は、李広利の功を阻もうとして弁護したと思い、李陵を弁護した者を宮刑(去勢の刑)に処してしまいます。

この弁護をした者が、『史記』を記した司馬遷です。

 

李夫人への寵愛が、兄である李広利の優遇につながり、孤軍奮闘した李陵のほうが罪を被り、

その弁護をした司馬遷が罰せられるという連鎖が起きていました。

組織の中での振る舞いの難しさをヒシヒシと感じます。

李陵の悲劇は、中島敦の小説『李陵』でも描かれました。

 

一方、李広利は…。 

 

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☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆  次回  ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚* ☆

 

李夫人の遺児をめぐって。

 


参考文献:
 片桐洋一、他(校注・訳)
 『竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語 日本古典文学全集8』小学館、1972年。

 野口元大(校訂)『竹取物語 新潮日本古典集成 第26回』新潮社、1979年。

 大野晋、他(編)『岩波古語辞典』岩波書店、1974年。

 戸川芳郎(監修)佐藤進・濱口富士雄(編者)『全訳 漢辞海 第三版』三省堂、2011年。

 班固、小竹武夫(訳)『漢書5 列伝Ⅱ』ちくま学芸文庫、1998年。 

 小川環樹、他『史記列伝 五』岩波文庫、1975年。

 市川桃子『中国古典詩聚花 詠史と詠物 ③』小学館、1984年。

 

 
イラスト:あおい

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