帝とかぐや姫のモデルの一つと思われる話を続けましょう。
…
(太子 [後の武烈天皇] は、歌垣 [若い男女が集まって歌で求愛する場] で、影媛の袖をとらえます。二人の間に入った平群 [へぐり] 大臣の息子の鮪 [しび] は、影媛の恋人でした。)
太子は鮪に歌いかけました。鮪が答歌して、歌の応酬となります。
そこで太子は、影媛に歌を贈りました。
琴頭に 来居る影媛 玉ならば 我が欲る玉の 鰒白玉
(琴を奏でると琴頭 [ことがみ] に現れる神 [かみ] の影、その名を持つ影媛。玉だとすれば、鰒にできる白真珠。私が欲しい玉だ。)
鮪が代わって答えて歌うには。
大君の 御帯の倭文織 [しつはた] 結び垂れ 誰やし人も 相思はなくに
(大君の御帯、国産の文様の織が垂れています。垂れ [たれ] どころか誰 [たれ] のことも、影媛は思っていません。鮪のこと以外は誰も)
太子は初めて、鮪がかつて影媛を得ていたことを知りました。
(続きます)…
ここでは、太子が影媛に歌を贈っていました。(琴・帯、どうも歌の内容が神功皇后を連想させますね。それはともかく)
太子の歌には「影媛」という名前と「玉」がありましたね。
竹取物語では、帝とかぐや姫が歌を交わす場面が、後で出てきます。
実は、帝の歌には「かぐや姫」という名前、かぐや姫の返歌には「玉」が詠み込まれているのです。☪
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影媛の話、続きます。
ミカドを御門と書いていましたが、帝と表記することにしました。
参考文献:
片桐洋一、他(校注・訳)
『竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語 日本古典文学全集8』小学館、1972年。
小島憲之、他(校注・訳)『日本書紀② 新編日本古典文学全集3』小学館、1996年。
大野晋、他(編)『岩波古語辞典』岩波書店、1974年。
イラスト:あおい
字*:リンクあり