酒遊 亭久五~スタッフブログ~

4/19号の週刊誌「AERA」より、サッカー元日本代表選手

の中田英寿さんの記事ををご紹介したいと思います本音譜



兵庫県神戸市 繊細で奥深い日本酒の世界

                                中田 英寿


馴染みのない言葉ではあるが、日本の「国酒」は日本酒だ。

これまで僕はワインやシャンパンばかり飲んできたが、日本の旅を

始めてから県ごとに2~3軒の蔵元を訪ね、酒造りを勉強している。

改めて感じているのは、日本酒はこの国の大切な文化だということだ。


日本酒は本当に奥が深い。日本には現在でも約1200の蔵がある。

水と米、米麹という限られた素材から、地方や蔵ごとに特色のある酒

が生まれる。その味は千差万別。同じ日本酒とは思えないほどに、

それぞれが特徴を持っている。その差がまた飲んでいて楽しいのだ。


糖化と発酵を同時に行うという、世界でも稀な酒造り。さらに、冷やから

燗まで幅広い温度帯で楽しめるなど、日本酒には世界的にも珍しい特徴

が多い。ワインは葡萄がよければ美味しくなるといわれているが、日本酒

はまったく同じ材料でも杜氏によって味が変わる。ひとりの杜氏の腕が

日本酒の味を決める。その繊細さもまた日本酒の魅力といえるだろう。


今回僕が訪ねた兵庫の灘は、昔から酒どころとして知られてきた土地だ。

その理由は日本酒米の最高峰といわれる「山田錦」の主産地であること。

そして酒造りに最も適しているといわれる「宮水」があること。宮水とは

「西宮の水」の略で、日本では珍しいほどの硬水。だからこそ宮水は、

日本酒にとって奇跡の水とまで言われているらしい。


その結果、灘には日本を代表するたくさんの蔵元が生まれた。白鹿、

大関、日本盛。松竹梅、菊正宗、富久娘・・・これらはすべて灘の酒だ。

白鹿を作っている辰馬本家酒造では、直接宮水を引いている井戸を

見せてもらった。同じ米でも農家によって味が異なるように、同じ宮水

でも水の引き方によって微妙に味が異なるのだという。


何十、何百と飲み比べていると、味の違いや自分の好みがわかってくる。

最近は日本酒離れが進んでいるといわれるが、こだわりのある蔵もまだ

たくさんある。そういった蔵を訪ね、造り手の顔を見ながら丹精込めて

造られた酒を飲んでいると本当に幸せな気分になる。学べば学ぶほど

知りたくなり、知れば知るほど美味しくなる。これからの旅の中でも、もっと

たくさんの日本酒を学び、飲んで、その美味しさを楽しんでいきたい。


そして最終的に旅を終えた後、自分のこだわりを詰め込んだ日本酒を

造ってみたい。自分の造った酒で、友達をもてなせたら、どれだけ楽しい

だろう。ヘルシーで美味しい日本食が海外でブームとなったように、日本酒

もきっと受け入れられるはずだ。繊細で奥深い日本酒を単なる酒の一種類

としてではなく、国酒、日本を代表する文化として世界に紹介していきたい。



酒遊 亭久五

http://www.take5sake.com