本日は、アメリカの社会運動家ラルフ・ネーダーについて紹介したいと思います。

ラルフ・ネーダーは、1934(昭和9)年、レバノン移民の子としてアメリカに生まれた。

アメリカでも指折りの名門大学プリンストン大学を卒業すると、ロースクールに入学し卒業後に弁護士資格を取得。

その後、弁護士や大学教授を務めたが、思う事があり、ヒッチハイクで首都・ワシントンDCに行き、上院議員のアシスタントをしながら、ロビイストとして活動していく。

ロビイストとは、日本で言う根回しみたいなロビー活動を行なう黒幕のような人の事を言う。

しかし、功罪が常に問われるロビー活動であるが、ネーダーのロビー活動は反権力反権威に貫かれていた。

この活動が、後のネーダーの名声へとつながった。

そして、ネーダーの名を一躍世間に轟かせたのが世界最強最大の自動車会社GM(ジェネラル・モーターズ)への告発であった。

GMは、アメリカの強さの象徴。

時に1965年、ネーダー31歳の時である。

そのGMの人気車であるシボレーの欠陥を告発。

数多くの犠牲者を出すほど横転しやすいのに、それを公表せず、改善しようともしないというタブーを突いたのである。

しかし、ここでGMは驚くべき戦法に出てきた。

ネーダー陥れるために、探偵を雇い24時間監視を敢行して粗捜しをしたのである。

その監視は手荒く、命の危険も疑われる中、その凶行を逆に暴露されて訴えられ、当時の社長が上院に呼ばれて証言させられ、そしてネーダーにプライバシー侵害で訴えられ多額の慰謝料を払わされると共に、謝罪させられ、問題のシボレーの販売中止に追い込まれた。

そして、この多額の賠償金を後の活動資金にし、賠償金を活動資金にする活動形態が出来上がった。

一躍、ネーダーは社会運動の象徴的な存在となった。

世界最強のアメリカの強さの象徴GMと戦い、たった一人で勝ったのである。

それ以降、ネーダーは大企業の監視活動はもちろん、人道問題、環境問題、消費者の権利問題、民主化問題、政治と金の問題などの反権力半権威主義の運動に怯まず臆さず戦い続けた。

この雄姿に、若者が多数共鳴し、「ネーダー攻撃隊」を結成。

ネーダーの援護射撃をすると共に、権力の不正濫用を監視し徹底的に攻撃していった。

「ボウリングフォーコロンバイン」や「華氏911」などの話題となった反権力映画を作った事で知られるマイケル・ムーアは、このネーダーに感化された一人である。

そして、ネーダーは大統領選挙にも二度打って出た。

もちろん、二度とも完敗。

2000年と2004年の二度出馬したが、どちらも現大統領ジョージ・W・ブッシュに完敗した。

しかし、特に初出馬となった2000年の大統領選は大健闘した。

ネーダーに感化されたムーアが援護射撃した選挙で、反権力の闘士二人が関わるとの事で、庶民の支援は非常に拡大した。

しかし、だからこそ批判があった。

それは、第三候補のネーダーが出馬し、予想以上に票を獲得したために、最悪の結果であるブッシュが当選し、アル・ゴアを落選させてしまったから。

確かに、そういう見方もある。

だから、出馬自体を促す動きもかなりあったという。

しかし、私はネーダーの行動は正しかったと思う。

結果的に、ネーダーの出馬による予想外の躍進により、最悪の結果であるブッシュ当選という結果となった。

だが、出馬辞退をしてゴアが当選をしてもブッシュほどではないにしろ、国民に向いた政治をするとは思えないから。

それに、もともと勝てるとは思っていなかっただろう。

しかし、弱いものは負けると分かっていても戦わなければいけない時がある。

そして、弱いものが強いものに勝つにはしつこさという狂気で、恐怖を与えるのが一番。

そのためにも、倒されても倒されても挫けず、戦いを挑み続ける狂気を見せつける事が必要だったのである。

それを、二回の選挙では見せつけられた。

このネーダーの人生から学ぶべきリーダーシップは、

強い相手でも怯まず戦う反骨心。

そして、

「弱気を助け強気を挫く」義侠心を自ら先頭になって戦い、その背中についていきたいと思わせる人心掌握術。

さらに、

勇猛果敢でも、負け続けてはリーダーとしては求心力がなくなる。それを、負けても負けても戦い続けて強者が一番恐れる弱者像であるしつこい狂気を演出し、強者のやる気を削ぎ、勝利を呼び込む粘り強さを持つ。

この三点ではないだろうか。

それと共に、ネーダーにはリーダーシップ論の他に、自己啓発のエッセンスも含まれている。

それは、

自分自身は弱く小さな存在でも、策を練りしつこく戦いを挑む事で強者を打倒できる可能性があるという事。

人生において、最初から強者という事はほとんどありえない。

最初は、ほとんどが弱者からのスタート。

そして、世間の常識などから外れた事に挑戦する時は、可能性も薄いわけだし世間体も悪い。

だから、立場は弱者。

そういう場面の方にも参考になるのが、ネーダーの戦いの歴史にある。

ネーダーの人生には、いろんなメッセージと人生の手がかりが含まれていると私は思う。

最後に、ネーダーの頑固なほどの清廉さを現すエピソードをwikipediaから参照させていただき終わりにしたいと思う。


エピソード

倹約家でしかも反商業主義者であるネーダーは、除隊後にただ一度だけ訪れた陸軍 の売店で12足もの と4ダースもの軍用ソックス を買い、40年近く使い続けていたという。


皆さんどうでしょう?

大統領には、残念ながら当選できなかったが、日本の政治家にこんな頑固なほどに清廉な人はいるだろうか。

いるわけはありません。

だから、ネーダーのエピソードや人生を見ていると、日本の政治家にはネーダーの爪の垢を煎じて飲んでいただきたいと強く思う今日この頃であります。