全国でも屈指の進学校として知られる東京の開成高校。

東京大学合格者数が26年連続全国トップの実績を誇る超名門校。

その開成高校が、勉強意外でここ数年、騒がれているのを皆さんご存知だろうか。

それも、もちろん良い事で。

その騒がれている事は、野球である。

現在、熱戦が繰り広げられている、夏の甲子園。

それを日本一の進学校である開成高校野球部が、妄想と言われてもおかしくない夢を本気で狙っている。

それは甲子園出場。

しかし、ここ数年の活躍を見るとまだまだ遠いが、その夢が妄想とは言い切れない位の勢いがあるのは確かなのである。

2005年には、東東京地区でベスト16に進出(強豪・国士舘高校に3-10で完敗)。

今年はベスト64に終わるも、決勝まで進出した強豪・修徳高校に0-1で惜敗。

名門・修徳高校に、開成高校は冷や汗を出させ、本気にさせたのである。

この快進撃を作り上げたのが、東大出身の青木秀憲監督(36歳)の指導法。

開成高校は、全員が全員、東大を目指すような学校。

だから、練習時間は自ずとほとんど取れないというのは覚悟しなければいけない。

ほぼ全員が、予備校に通うからである。

開成高校の場合は、練習にさける限度は週一日で計三時間のみ。

普通ならば、この時点で甲子園など遥か彼方で夢物語として諦めるのが普通であろう。

しかし、青木監督と部員は諦めなかった。

現在は、量より質に転換しつつある世の流れになってきたが、名門校の練習は総じて長い。

それに、開成高校はスポーツ推薦で、素質あるメンバーを集める事など出来ない。

それも、全国一の受験戦争激戦区を勝ち抜いてきた生徒なので、素質が無いばかりか、運動する時間も削ってまで修練してきた学生なので、運動に対する耐性に慣性が著しく低く、名門校との格差は普通に考えると天文学的な数値で現しても大袈裟では無い。

そこで青木監督は、考えた。

如実な弱者である開成高校が、圧倒的な強者である強豪高に勝つにはどうしたら良いか?

足りない所を補おうとすれば、やる事は多すぎる。

それならば、思い切って割り切って一つの能力を特化させて、弱点を補えるようにさせようと発想の転換をした。

一つの能力を特化させる。

それは、どの能力を特化させるべきか?

野球は、点を多く取った方が勝ち。

これは、野球に詳しくない人でも誰でも分かる当たり前すぎる常識。

ならば、点を多く取れるようにすれば良い。

単純すぎるが、一番重要な事に焦点を当てて専心する事にしたのである。

週一日週計三時間だけの合同練習を、点を取るバッティング練習に費やした。

センスも無く、運動経験の乏しい部員なので、守備もピッチングもトップを狙うには正直乏しすぎるレベル。

しかし、割り切ってそれには目を瞑(つむ)った。

そうすると、特化させた能力に引っ張られるように、弱点も粗が見えなくなってくる。

試合も、徹底的に打って打って打ちまくる試合を目指す為に、高校野球の専売特許であるバントも一切戦法には無い。

選手も、監督が自信満々にこのスタイルを信奉するので、その自信が選手の自信へともつながった。

また、その攻撃一辺倒のスタイルを追求する為に、勉学のエキスパートの能力を活かし、科学的に徹底的に研究し、それを選手全員に刷り込んでいった。

そういう能力は秀でているので、非常に覚えが早かった。

その掘り下げ度も、流石、開成高校であった。

その面では、強豪高に圧倒的に差をつけられる能力を持っている。

強豪高からすると、目から鱗のアプローチ法。

それも、能力アップと共に選手の自信アップへとつながった。

ここから学べるコーチング論は、

1、明確な目標設定を打ち出す。

2、全てを追い求めて浅く広くでは無く、割り切って一つの事を広く掘り下げて他の弱点を目立たなくさせる一点集中主義。

3、量よりも質を追い求める。

4、圧倒的な実力差も、強がりではなく明確で説得力のある目標設定と指導法で、決してあきらめさせない人心掌握術。

5、割り切る勇気。


この5点が、コーチング法として参考にするべき突出する指導法であると思います。

部活やスポーツチームはもちろん、親として、そして会社組織でも置き換えられます。

開成高校野球部の快進撃は、弱者の兵法を説いた山鹿素行(江戸時代の儒学者)の現代版のように皆に説いているようである。

来年も、開成高校野球部の快進撃から見える弱者の戦法には興味深い。