気にしていない時には
よく出会うけど
求めると出会えない本
っていうのがあって
まさにこれもそんな1冊でした。
読みたいと思ってから
書店を3店巡って
ようやく入手しました。
何故にこうも書店になかったのか。
ここでひとつの仮説を立ててみます。
昨今の執事ブーム(?)により
女性の間で春琴抄が流行しているのではないか。
というのも
この作品は究極の執事の物語ということも
できそうなのですよ。
佐助は
執事じゃなくて
手曳きであり
弟子であるんですが。
佐助と春琴の関係は
乙女のみなさんにはかなり憧れ
だったりするのではないかと
想像します。
春琴と佐助の愛は
どちらに優位性があったか。
多くの恋愛がそうであるように
この場合も一方的な力関係ではなくて
微妙なバランスで成り立っているように
思えます。
佐助にいたっては
そもそも春琴のイデアに
恋しているような。
仮に春琴自身に
しおらしくしたいという思いがあったとしても
佐助の抱く春琴のイデアを壊さないために
あくまでも厳しい関係を貫かざるを得ないような。
それにしても
文章の美しさ
格調の高さ
品のよさ。
王朝ものを
読んでいるかのようでした。
句読点をほとんど使っていない文章も
違和感がありませんし
むしろリズムに乗りやすいです。
ことばがきれい。
ぼくが初めて読んだ谷崎潤一郎さんの作品は
細雪
で実は
春琴抄
は2冊目なんですが
これまでパーフェクトですね。
どれもこれも素晴らしい。
フィニッシュの一文まで
美のみで構築されています。
唸ります。
絶賛です。
あと薀蓄というか
時代の風俗を切り取った描写が
実に興味深いです。
鶯とか雲雀とか
小鳥を趣味にする場面なんて
とてもおもしろかったです。
さらに蛇足を付け加えると
ぼくも佐助の気持ちは分からなくもなく
他人に弱さを見せまいと強がる女性に
案外惹かれます。
特に芸事に秀でた女性の
情熱的な性質には弱いたちです。
けれども
佐助のように長続きはしません。
やっぱり愛するならば素直に愛されたい。
佐助も愛されているんでしょうけど
お互いの愛し方が実にマニアックで
そういう世界観には憧れはするけれども
やっぱり無理なんですよね。
いやあ
それにしても素晴らしかった。
-春琴抄-
谷崎潤一郎